「変化は怖がるものではなく、前向きに捉えるもの」――HPが考えるイノベーションとこれからの世界HP INNOVATION SUMMIT 2020(1/2 ページ)

» 2020年10月16日 15時45分 公開
[作倉瑞歩ITmedia]

 HPは2020年10月14日に「HP INNOVATION SUMMIT 2020」をオンライン開催し、パートナーや業界の専門家を招いて今後の世界情勢やテクノロジーの進化についてのカンファレンスを実施した。

 冒頭で「Acceleration of Change」(変化の加速)と題して、米HPの社長兼CEO エンリケ・ロレス氏が、新型コロナウイルスにより世界中で加速する組織や個人のデジタルトランスフォーメーションについて考察した。

HP INNOVATION SUMMIT 2020

新たなテクノロジーの可能性を求めることが重要

HP INNOVATION SUMMIT 2020 米HP 社長兼CEO エンリケ・ロレス氏

 2020年の世界情勢と言えば、新型コロナウイルスの流行に尽きるだろう。「コロナのパンデミックは生活のあらゆる局面において、かつてない速度で変化を起こしている。仕事の仕方がそもそも変わってきた。今我々が生きている世界では変革の加速が訪れている。新しい時代の到来だ」とロレス氏。

 実際のところ、新型コロナウイルスの影響で、仕事をオフィスでなく自宅で行っている人が増えたが、「これは1年前には想像できなかったこと。95%の人が自宅で仕事をしようとするのは無理だと言われたが、今ではこのようになった」(ロレス氏)。ではオフィスの役割はどう変わっていくのだろうか。ロレス氏は「会社に来てデスクに座って仕事をする場所ではなく、コラボレーションをする場所」と語る。

 そしてこれからのHPについて、ロレス氏は「企業としては株主に価値を提供する。また収益性と社会に対するインパクトのバランスを取るというのが企業の使命」であると語り、同社のメンバーに求められるものとして「一番重要なスキルは、変化を受け入れられる能力だ。変化は怖がるものではなく、前向きに捉えるもの。より良くしていきたいというマーケットの需要に応えるのも重要だ。今後どのような方向に行くのか、お客さまのニーズも大事になる。セキュリティに手を広げなければいけない。テクノロジーの可能性を極限まで広げてもらえるようなスキルが必要だ」と語った。

HP INNOVATION SUMMIT 2020 米国やヨーロッパだけでなく、アジアの中小企業もCOVID-19後の成長を維持するために、人々の働き方を革新し、デジタル技術のスキル獲得に投資することの重要性を認識しているという(「HPAsia SMB Report 2020」より)

3Dプリンタが変える世界

 続いては「Disrupting Industrial」(業界を変革)をテーマに、HPのアレクサンドル・ラミエール氏、日産自動車 総合研究所先端材料・プロセス研究所エキスパートリーダーの南部俊和氏、IDCのストファー・ホームズ氏、SOLIZE Productsの代表取締役社長である田中瑞樹氏が登場してディスカッションが行われた。

 まずラミエール氏は、HPが3Dプリンタでマスクや呼吸器の一部など、400万点の医療部品を作成したことを紹介。この取り組みについては今後も継続していくとのことだが、「これからはデジタルマニュファクチャリングが製造に欠かせない重要な役割を果たす。3Dプリンタの技術の限界を払しょくしていく」と語る。

HP INNOVATION SUMMIT 2020 HPのアレクサンドル・ラミエール氏

 南部氏は自動車工業における3Dプリンタの技術について、フレキシブルでアジャイルな製造を可能にするとし、「(3Dプリンタを使えば)多くの製品を低コストで作れる。3Dプリンタを使うと少量生産が大量に低コストでできる。これは大きな変革をもたらす」と語る。

 「複雑な製品はコストが上がるが、3Dプリンタは複雑なパーツでもローコストで作れる。これは大きなメリットで、将来自動車は電子化されるし、かつてないほど軽量化される。3Dプリンタは大きな貢献を果たすだろう」(南部氏)

HP INNOVATION SUMMIT 2020 日産自動車 南部俊和氏

 ホームズ氏は製造に3Dプリンタが入ってきているが、それ以外にもデザインにおけるテクノロジーも重要だとしながら、「材料技術と組み合わせるとエコシステムがどう進化するか楽しみだ。業界的にも非常に大きな創造的破壊がある」と語る。

 またシンガポールで政府がさまざまな産業を一堂に会したプロジェクトが行われたことを紹介しつつ、「エンジニアがお客さまに対してデジタル製造の応用や適用のアドバイスをしている。この素晴らしい力によってイノベーションが進んでいく」と語った。

HP INNOVATION SUMMIT 2020 IDCのストファー・ホームズ氏

 また田中氏は、SOLIZE Productsとして医療機関にフェイスシールドを無料で寄付したことを紹介し、その際にはエンジニアがキーパーソンにヒアリングをして情報を集め、フレームをカスタマイズしたそうだ。データを可変的に反映させることで、急速に提供できたという。他にも小さなアイカメラを作っている会社を支援しているとのことで、それを使えばスマートフォンに接続して眼科検診もできるようになるそうだ。

 「デジタルデータを活用する中で試行錯誤も早くできる。支援する時間が革命的に進化した。さまざまな製造業において進化が可能となる」(田中氏)

HP INNOVATION SUMMIT 2020 HPは3Dプリントでフェイスシールドを作って新型コロナウイルス対策を支援したり、パーツや医療機器の製造を支援する「HP Digital Manufacturing Network」を形成したりしてアナログからデジタルへの移行を促している

 これに加えて3Dプリンタで金型を作るということではなく、自動車産業の価値を上げることが重要だとしながら「金型を使った後で擬似的な製造プロセスに応用するのが大事。3Dプリンタと既存の技術を組み合わせる、エンジニアの枠組みを作って育成してきた。現在はサンプルの製造分野で進展し、枠組みを強化して最終製品まで高めている。グループ企業の力を使って製造サービスだけでなく、マニュファクチャリングのアドバイスをしてエンジニアのスキルを高めていく」と語った。

HP INNOVATION SUMMIT 2020 SOLIZE Products代表取締役社長 田中瑞樹氏
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