一方、iPad Proに関してもこの先に期待できる展開が見えてきた。Appleは新しいiPad ProにもM1を搭載。搭載するシステムの冷却性能でプロセッサの性能は変化するものだが、同じくファンレス設計の薄型ボディーでM1搭載のMacBook Airのことを考えれば、かなり期待はできるはずだ。
M1を搭載することで、イメージ処理、AI処理などの能力が高まり、結果として超広角カメラを用いた被写体の自動追従機能や画質全体の改善などのアップデートはあるが、iPad Proのターゲットや設計コンセプトは変化していない。
SoCの世代が一気に2世代分上がったため、できることや信号処理の品質は大きく上がり、USB Type-CポートもThunderbolt 3・USB 4に高速化し、内蔵ストレージの容量も最大2TBに増えたものの、冷静に見れば期待通りに正常進化した製品といえる。
何しろ24インチiMacにかなり近い性能が得られると予想されるため、動画編集(M1搭載iMacの場合、Final Cut Proで4Kのビデオストリームを最大5本、8Kなら1本を1フレームも落とさず編集できるとしている)や写真現像、あるいはAI処理を用いたクリエイティブツールなどで、これまでにないMacクラスのツールが提供されることにも期待したい。
余談だが、今回のiPad Proに合わせて、Final Cut ProやLogic Proといったプロ向けアプリがiPadに対応するのではと予想していたが、見事に外れてしまった(あるいは秋のOSアップデートで対応するかもしれないが)。
しかし、新しい12.9インチiPad Proには、今後のMacにおけるアップデートを示唆する要素がある。それは11インチiPad Proにはない、1万個超ものミニLEDを用いたバックライトが特徴の「Liquid Retina XDRディスプレイ」だ。
高コントラストでHDRコンテンツを表示する2500以上の領域分割(ローカルディミング)によるバックライト制御を、M1のどのパートを用いてどのように行っているのかは興味深い。
一番注目したのは、この技術を搭載した12インチiPad Proの価格が前モデルと比較して100米ドルしか上がっていないことだ(日本円では税込み12万9800円から)。しかもiPad Proに採用できるだけの生産量を確保できるということは、恐らく今後Macでも採用が可能だろう。
一般的にパソコンに期待される性能や機能の多くは、既に発表済みのM1搭載Macで満たされるだろう。ゲーミングPCはその限りでないかもしれないが、ゲーミングPCならばMac以外を選ぶ方が費用対効果は高い。
一方でデザインや表示品質、音質、画質など一つ一つの要素ごとに品位にこだわった作り込みを評価するならば、M1搭載Macは極めて費用対効果が高い。コストパフォーマンスでMacを選ぶ場合、この後の展開を待つ必要はない。
例えば今回発表された11インチiPad ProとiPad Airを比べたとき、iPad Airの性能が低いと思うだろうか。恐らくは思わないはずだ。実際、iPad AirはiPad Proより低価格だが、性能面での不満もなければ、表示品位の面でも大きな不満はないだろう。
「M1搭載Macとは、今回の新型iPad Proに対するiPad Airのようなものだ」と言ってしまうと、少々誤解を産むだろうか。別の側面から考えると、Macの次のステップではiPad Airに対する新型iPad Proのような展開が期待できる。
より多くのプロセッサコアを搭載し、GPU性能も高く、ミニLEDによる最高クラスのHDRディスプレイを備えるMacBookやiMacが登場するという期待だ。拡張性あるいは選べるスペックの幅も広がるに違いない。
現在の16インチMacBook Pro、13インチMacBook Proの上位モデル(14インチになる可能性もあるが)、27インチiMacなどは大幅なアップデートとなるに違いない。もちろん価格は安くないだろうが、だからなんだと言うのだ。コスパ最高の製品ならば、既にM1搭載Macのラインアップがある。
一つだけ方向が見えないとしたら、それはまだ見ぬ新しいMacBook Proシリーズがどのようなデザインになるかだ。新しいiMacのデザインを踏襲した27インチiMacが登場するのは当然として、デザイン言語を刷新した新しいMacBook Proが用意されているというのは期待しすぎだろうか。
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