ここからは、Shadow of the Tomb Raiderのベンチマークモードを実行し、その映像を録画してICATに読み込み、ICATの使い勝手と各種グラフィックス設定における“見栄え”の違いなどを調べてみよう。
ICATのプログラムは、NVIDIAの公式サイトからダウンロードできる。ダウンロードしたファイルがプログラム“そのもの”なので、インストールすることなく直接起動可能だ。
検証に使ったPCは、CPUにRyzen 9 5950X(3.4GHz〜4.9GHz、8コア16スレッド)、GPUにGeForce RTX 3090を搭載するハイエンド機である。そのこともあり、Shadow of the Tomb Raiderのグラフィックス設定は最高位に、解像度は4K(3840×2160ピクセル)に、最大フレームレートは60fps、垂直同期(V-SYNC)は有効に設定した。
この状態でベンチマークを取ると、どちらのGPUでもフレームレートはおおむね60fpsに貼り付いて、たまに57〜59fpsに落ち込むような状況になる。そこでレイトレーシング(RT)による影生成はオフにして、代わりにプログラマブルシェーダーベースでの影生成を有効化した。これで、重めのシーンでも60fpsの描画を維持できるようになった。
話を元に戻すと、ICATは基本的に画質の比較が“主題”のアプリケーションである。なのでフレームレートにこだわる必要もないようにも思えるが、実際に使ってみると、ICATに入力した各動画のフレームレートが揺らぐと、作業ウインドウに動画を並べて再生した際に表示フレームの“ズレ”が顕著になる。これでは同一フレームの比較がしづらいので、フレームレートをしっかりと“固定”したかったのである。
画面を録画するためのビデオキャプチャボードは、AVerMediaの「Live Gamer 4K GC573」を使った。4K/HDR/60fpsの映像やフルHD/240fpsの映像の録画にも対応するかなりハイスペックな製品だ。ただしハードウェアエンコーダーは搭載していないので、このスペックを生かすには高性能なCPUか、ハードウェアエンコーダーを内蔵するGPUが必要である。今回は、GeForce RTX 3090に内蔵されているビデオプロセッサ「NVENC」を活用している。
今回用意した4つの動画は以下の仕様のものを用意した。実際にキャプチャした動画と共に見てみよう。
DLSSやISSを有効化していない“素の”レンダリング結果である。特別な処理を追加していないので、便宜上「4Kネイティブ」と名付ける。
DLSSを品質重視の「クオリティ」モードに設定した他は、ネイティブ4Kと同じ解像度/画質設定としている。これを「ネイティブ4K×DLSS」と呼ぶこととする。
レンダリング解像度をフルHD(1920×1080ピクセル)相当にした上で、NVIDIA ISSを適用して4Kまでアップスケールしたものを用意した。この設定の呼称は「アップスケール×ISS」としておく。
アップスケール×ISSの設定に、さらにDLSSを適用する。これは「アップスケール×ISS×DLSS」としておく。
なお、今回はRadeon RX 6900 XTでも検証するつもりだった。しかし、先述の通りなぜかFCASなどを有効化できなかったため、今回は含めていない。
ICATを活用する上で重要な2つの「動作モード」についても触れておきたい。
1つは「Split Screen」モードだ。これはICATに入力した任意の動画の2つ(1ペア)選んで、作業ウインドウの左右に配置して見比べつつ、これらを同時再生するモードだ。中央のスライダーを左右に動かすことで左右にある動画の表示割合を調整できる。
今回の実験のように、全く同一展開を録画して見比べている場合は、うまく微調整すれば「完全に付合した1枚絵」を生成できるはずだ。
もう1つは「Side By Side」モードだ。このモードでは、最大4つの動画を横に並べて同時かつ同期して再生できる。ICATに入力した最大4つの動画を一度に見比べて、その画質の違いを見極める際に便利である。
この表示モードでは、動画の全域を一度に表示できなくなることが多くなる。ただし、画面をドラッグしながらマウスを動かせば、1人称シューティング(FPS)ゲームの視界制御のような感覚で、表示範囲を縦横無尽に位置調整できることがメリットである。調整位置は、ICATに入力された全ての動画で連動するので、全動画の同一箇所を見比べる際にはとても役に立つ。
いずれのモードでも、タイムライン近くにある「1:1」「Fit」ボタンを押すと作業ウインドウに表示されている動画の拡大率が変化する。その名前の通り、「1:1」ボタンを押すと動画が等倍表示となり、「Fit」ボタンを押すと作業ウインドウが縦に等分割され、ICATに読み込んだ全ての動画が横並びに配置される。
ICATで読み込んだ動画は、作業ウインドウ下部にあるタイムライン上でサムネイル表示される。再生を始めると、再生時間軸に対応した箇所に再生マーカーが出現して左から右へと移動していく。映像編集ソフトではよくあるユーザーインタフェースである。
各動画(ファイル)のタイムラインの左端にはコマ送りボタンが用意されている。特定の動画のみフレーム単位で再生を遅らせたり進めたりしたい場合は、このボタンを活用することで進行具合を微調整できる。
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