“6nmプロセス化”だけではない! AMDがモバイル向け「Ryzen 6000シリーズ」の進化を力説(1/3 ページ)

» 2022年02月18日 00時00分 公開
[井上翔ITmedia]

 既報の通り、AMDは1月4日、新型のAPU(GPU統合型CPU)「Ryzen 6000 Series Mobile Processor(モバイル向けRyzen 6000シリーズ)」を発表した。搭載製品は2月から順次発売される予定だ。

 搭載製品の本格展開を前に、AMDはモバイル向けRyzen 6000シリーズの説明会を2回に渡って開催した。この記事では、説明会の内容をもとに同プロセッサの概要を解説する。

【訂正:11時10分】初出時、CCXのL3キャッシュ容量の単位を誤っていました。おわびして訂正いたします

モバイル向けRyzen 6000シリーズはどんなプロセッサ?

 モバイル向けRyzen 6000シリーズは、6nmプロセスの「Zen 3+アーキテクチャ」のCPUコアと、同じく6nmプロセス化された「RDNA 2アーキテクチャ」のGPUコアを統合したAPUである。

 そう聞くと「今まで7nmプロセスで作っていた各種コアを6nmプロセスにしただけなのかな?」と思ってしまいそうだが、プロセスの微細化以外にも幾つかの改良を施しているという。

概要 モバイル向けRyzen 6000シリーズの主な特徴。これは既に発表(公開)済みの情報でもある

6nmプロセスの採用を含む「5層の改良」を実施

 モバイル向けRyzen 6000シリーズの設計に当たって、AMDは消費電力当たりの処理パフォーマンスプロセッサの面積当たりの処理パフォーマンスの2点を強く意識したようだ。高い処理パフォーマンスを実現するために、AMDは「プロセス」「コアアーキテクチャ(マイクロアーキテクチャ)」「SoC」「ソフトウェア」「プラットフォーム」の5層に渡って消費電力の最適化を施したという。

 1層目の「プロセス」は、先述の通り6nmプロセスを採用したことを指している。先代と比べてわずか1nmの微細化ではあるが、それだけでも消費電力の改善にそれなりの効果を持つようだ。

構造図 モバイル向けRyzen 6000シリーズの概略図。開発コード名は「Rembrandt(レンブラント)」である。先代の概略図と見比べると、変更点がある程度分かると思う
改善 消費電力/面積当たりのパフォーマンスを改善するために、大きく5層の改善を施しているという

50超の機能追加/改良を施した「Zen 3+アーキテクチャ」

 2層目の「コアアーキテクチャ」は、Zen 3+アーキテクチャのことを指している。その名の通り、Zen 3+アーキテクチャはZen 3アーキテクチャをベースに6nmプロセス化した……だけではないという。

 CCX(※1)の構造はZen 3アーキテクチャと同様で、最大8基のCPUコアで16MBのL3キャッシュを共有している。その上で、CPPC2(※2)の制御をスレッド単位で行えるようにするなどCCXに対して50を超える新機能の搭載や機能改良を施すことで消費電力の抑制とパフォーマンスの改善の両方を実現したという。

(※1)Core Complex:CPUコアとCPUキャッシュを統合したモジュール
(※2)OSが備えるスケジューラーの1つで、CPUコアに処理を割り振る役割を持っている

Zen 3+の改善点 Zen 3+アーキテクチャで追加/改善された主な要素(その1)
Zen 3+の改善点 Zen 3+アーキテクチャで追加/改善された主な要素(その2)

APUの各要素で細かい電力制御を可能に

 3層目の「SoC」は、APU(SoC)全体に渡る電力管理体制の最適化を指している。

 モバイル向けRyzen 6000シリーズでは、APUの電力管理をCPUコア(1基単位)、GPUコア、ディスプレイコントローラー、Infinity Bridge/ワイヤレス管理コントローラー、USB/サウスブリッジコントローラー……といった機能別に細かく分けて行うようになっている。これにより、各機能の非アクティブ時における消費電力をより抑制できるという。

省電力 CCXを含むAPU全体で電力制御の仕組みを改良している。CCXやGPUコアなどにはスリープからの復帰を高速化する支援機能をハードウェアベースで装備したという
省電力 アイドル時や動画の再生時など、APUの大部分をより深いスリープ状態に入れる制御を入れるようになったようだ。CPUとGPUのメモリ帯域の分配もバランス良く行えるという

ソフトウェアウェアレベルでも改善を実施

 4層目の「ソフトウェア」は、デバイスドライバとファームウェア(UEFI)の改善を指す。

 具体的には「電源管理フレームワーク(PMF)」を一新し、電源設定で「Balanced(バランス)」プロファイルを適用している場合でも、システムが処理している作業の内容に応じて動的に「Silent(静音性重視)」や「Performance(処理性能重視)」に切り替えるようになった。

 「静かな場所で使うから」「処理性能が求められるから」といったように、シーンに応じて手動で電源設定を切り替える必要がなくなることが大きなメリットだという。

PMF一新 PMFを一新し、電源設定で「Balanced」を選択すると動的にパフォーマンス設定を切り替えるようになった。切り替えに当たっては、システムにおける「入力」と「出力」の両方における処理状況を考慮するようだ(グラフはイメージ)

プラットフォーム全体での電力効率アップ

 5層目の「プラットフォーム」は、APU以外のデバイスと協調することによるシステム全体の省電力化のことを指している。

 デバイスと連携することによる省電力化の主な内容は以下の通りで、多くは内蔵ディスプレイに関連するものとなっている。

  • 消費電力が1W未満のディスプレイパネルのサポート
  • 「FreeSync PSR-SU」のサポート
    • 画面表示のうち、動き(変化)のない部分の更新を行わないことで消費電力を抑制
  • 「PSR-SU Rate Control」のサポート
    • 全画面表示している動画のフレームレートを抑制することで消費電力も抑制
  • eDPにおけるDSC(映像ストリーム圧縮)とFEC(前方誤り訂正)への対応
    • eDP(内蔵ディスプレイ用DisplayPort)において映像伝送レーンを削減することで消費電力を削減
  • 内蔵有機ELディスプレイにおける「Vari-Bright」のサポート
    • 表示内容のカラーパラメーターを調整することで、一定の輝度を保ちつつ消費電力を抑制
プラットフォーム 他デバイス(主に内蔵ディスプレイ)との連携でも、省電力化につなげている
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