“6nmプロセス化”だけではない! AMDがモバイル向け「Ryzen 6000シリーズ」の進化を力説(3/3 ページ)

» 2022年02月18日 00時00分 公開
[井上翔ITmedia]
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「低消費電力におけるチャンピオン」

 先述の通り、モバイル向けRyzen 6000シリーズは、消費電力当たりの処理パフォーマンスとプロセッサの面積当たりの処理パフォーマンスの改善にフォーカスを当てて開発された。そのこともあって、AMDはこのAPUのことを「低消費電力におけるx86プロセッサのチャンピオン」と自称している。

 Intelの最新の第12世代Coreプロセッサ(開発コード名:Alder Lake)では、処理パフォーマンス重視の「Pコア」と、効率(省電力)重視の「Eコア」を併載することで全体のパフォーマンスを向上している。AMDはこの点に着目し、「(基本消費電力が)28Wだと競合はPコアが6基なのに対して、Ryzen 6000シリーズなら“完全なZen 3+コア”を8基使える」「(基本消費電力が)5Wだと競合はPコアがたった2基なのに対してRyzen 6000シリーズなら“完全なZen 3+コア”を8基使える」とアピールしている。

 端的にいうと、Ryzen 6000シリーズなら、同じ消費電力でより多くの“完全なパフォーマンス”を発揮できるコアを搭載できるということだが、比較対象となる28Wの「Pプロセッサ」と15Wの「Uプロセッサ」を搭載する製品はまだリリースされていない。AMDの言う通りの優位性が発揮できるかどうかは未知数な面もある。

28W 基本消費電力が28WのCPUなら、パフォーマンスコアが2基多いというアピール
15W 基本消費電力が15WのCPUでは、パフォーマンスコアが6基も多いと強調している

 モバイル向け第12世代Coreプロセッサのうち、ハイエンド向けの「Hプロセッサ」だけは既に搭載製品が市販されている。そこで、AMDは「Core i9-12800HK」(Pコア:6基12スレッド、2.5GHz〜5GHz/Eコア:8基8スレッド、1.8GHz〜3.8GHz)と「Ryzen 9 6900HS」(3.3GHz〜4.9GHz、8コア16スレッド)で消費電力当たりのパフォーマンスを比較した。

 それによると、Ryzen 9 6900HSの消費電力当たりの処理パフォーマンスはCore i9-12800HKの最大2.62倍となったという。「市場(ユーザー)はより長いバッテリー持ちとより薄い形状を好む」ことから、Ryzen 9 6900HSは「競合(Intel)が作ろうともがいている薄くて軽い形状に最適」だとしている。

ハイエンド対決 Core i9-12800HKとRyzen 9 6900HSの処理パフォーマンスの比較結果(CINEBENCH R20を利用)。消費電力当たりのパフォーマンスは、最大で2.62倍にもなるという

 ハイエンドレンジ以外のAPUは、現行の第11世代Coreプロセッサと比較が行われた。いずれも消費電力の低いRyzen 6000シリーズの方が性能が良い(同じ消費電力ならなおさら)という結果となっている。

Ryzen 7 6800Uの比較 Ryzen 7 6800U(2.7GHz〜4.7GHz、8コア16スレッド)とCore i7-1185G7(3GHz〜4.8GHz、4コア8スレッド)の比較。2Dイメージの編集ではそれほど差がないが、コア数がモノをいう処理ではRyzenの圧勝である
Ryzen 9 6900HXの比較 Ryzen 9 6900HX(3.3GHz〜4.9GHz、8コア16スレッド)とCore i9-11980HK(3.3GHz〜5GHz、8コア16スレッド)の比較。コアとスレッドの数では差がないものの、消費電力がより低いRyzenの方が処理パフォーマンスがおおむね高いということを示している
フレームレート比較 Ryzen 7 6800UとCore i7-1185G7でフレームレートの比較(1080p、特記のない限り低品質)。RDNA 2アーキテクチャのGPUが奏功して、APUでもそこそこ高いフレームレートでプレイできることが分かる
独立GPUにも勝利 AMDの超解像技術「FidelityFX Super Resolution(FSR)」を活用すれば、APUでもNVIDIAの「GeForce GTX 1650 with Max-Q Technology」にフレームレートに勝るとはいい時代になったものである。ただし、FSRはGeForce GTX 1650でも使えるので、GeForce GTX 1650で有効化した場合はどうなるのだろうか……?

先陣を切るのは「HSプロセッサ」

 モバイル向けRyzen 6000シリーズを搭載するノートPCは、以下のスケジュールで順次登場する見通しだ。

  • 2月中:HSプロセッサ(薄型ハイエンド向け)
  • 3月初旬めど:HXプロセッサ(ハイエンド向け)、Uプロセッサ(超薄型向け)
  • 3月中旬めど:PROプロセッサ(企業向け管理機能付き)
スケジュール モバイル向けRyzen 6000シリーズのロードマップ
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