先代の「Ryzen 5000シリーズ」、先々代の「Ryzen 4000シリーズ」のGPUコアは、7nmプロセス化されたGCN(Graphics Core Next)アーキテクチャを採用していた。
プロセスの微細化による消費電力は実現したものの、AMDのGPUアーキテクチャとしては“3世代前”である。競合であるIntelが第11世代CoreプロセッサでGPUコア「Xe-LPアーキテクチャ」に移行して以来、GPUの性能面での優位性は薄れる傾向にあった。
そのことを踏まえてか、モバイル向けRyzen 6000シリーズは、GPUコアのアーキテクチャを現行最新の「RDNA 2」に変更した。2世代飛びである。GPUのブランドとしては「Radeon 600Mシリーズ」を名乗り、Ryzen 5はGPUコアが6基の「Radeon 660M」を、Ryzen 7/9はGPUコアが12基の「Radeon 680M」を搭載している。
RDNA 2アーキテクチャのGPUコアは、リアルタイムレイトレーシング(RT)処理に対応している。そのため、モバイル向けRyzen 6000シリーズは世界初のRTに対応するGPUを統合したCPUとなる。いわゆる「AAAタイトル」も、フルHD(1920×1080ピクセル)であればパワフルにプレイできるという。
デスクトップ向けでは「Ryzen 3000シリーズ」からCPU直結のPCI Express 4.0バスを搭載した一方で、モバイル向けを含むRyzenシリーズのAPUにはなかなかPCI Express 4.0バスが搭載されなかった。
それに対して、Intelでは第11世代Coreプロセッサでデスクトップ向け(開発コード名:Rocket Lake)、モバイル向け(開発コード名:Tiger Lake)共にCPU直結のPCI Express 4.0バスを搭載した。IntelのCPUはGPU統合型が基本なので、AMDはGPU統合型CPUにおいてある意味で“古くさい”状況が否めなくなっていた。
そのこともあってか、モバイル向けRyzen 6000シリーズは、APUとしては初となるCPU直結のPCI Express 4.0バスを合計20レーン搭載している。レーンの内訳は以下の通りだ。
加えて、モバイル向けRyzen 6000シリーズはRyzen初となるUSB4ポートにも対応している。これにより外付けのGPUボックスや超高速ストレージなども利用できるようになるが、USB4ポートを搭載するかどうか、搭載するとしてどのような機能に対応するかはシステム次第となる。
メインメモリはDDR5-4800規格またはLPDDR5-6400規格のいずれかに対応する。外部映像出力はHDMI 2.1規格に加えてDisplayPort 2.0規格にも対応できるようになっている。
さらに、モバイル向けRyzen 6000シリーズは「x86プロセッサとしては初めて」となるハードウェアベースのオーディオノイズキャンセリングに対応している。
第11世代以降のCoreプロセッサを搭載するノートPCでは、機械学習処理を高速に行うAPIを活用したノイズキャンセリング機能を実装している機種が増えている。モバイル向けRyzen 6000シリーズのノイズキャンセリングも機械学習処理を使うことは同様なのだが、ノイズキャンセリングの処理に“特化”しているため、AMDによると「競合の(IntelのAPIを活用した)ソリューションよりも効率的」だという。
ただし、このオーディオノイズキャンセリング機能も、対応するかどうかはシステム次第となる。
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