さて復路である。復路は新大阪駅から東京行き「のぞみ242号」に乗ることにした。というのも、この列車はN700S系を利用して運行されるからである。
のぞみ242号は、新大阪駅を17時15分に発車する。夕方の早い時間(しかも土曜日)に東京に向かうからか、それとも新型コロナウイルスのせいなのか、S Work車両はガラガラで、往路の半分(10人)程度しか乗っていない。「京都や名古屋で乗ってくるのかな?」と思ったが、名古屋を過ぎてもそれほど乗客は増えなかった。
そして時間が時間なせいか、S Work車両であるにも関わらず、ノートPCを出して仕事をしているのは筆者だけのようだった。他の乗客は、マンガを読んだりビールを飲んだりしてゆったりと過ごしている。
N700S系では、普通車でも全ての座席にコンセントが用意されている。そのため、窓側の席を確保できなくても電源に困ることはない。
そしてN700S系で運行されるのぞみ号では、先述の通りS Work車両における追加サービスを受けられる。マウスとACアダプターは手持ちのものがあるので、今回は簡易ついたてを借りてみることにした。
調べてみたところ、この簡易ついたてはクツワ製の簡易ついたて付きPCバッグ「パーソナルスポット」のようだ。「乗客が少ないのについたているの?」と思うかもしれないが、混雑した車内で使う場合、画面フィルターがないノートPCのプライバシーを向上する意味ではありがたい配慮である。
次は、S Wi-Fi for Bizを試してみよう。S Work車両の座席ポケットには「新Wi-Fiサービスのご案内」というシートが用意されている。これを見ながら設定すればすぐに使えるようになる。メールアドレスやFacebook、Twitterで利用登録するのはShinkansen Free Wi-Fiと同様だ。Wi-Fiに接続したら、Webブラウザを立ち上げて登録することになる。
S Wi-Fi for Bizに接続した後、先ほどと同じようにGoogleのスピードテストを実効してみた。JR東海は「S Wi-Fi for Bizは従来の約2倍の通信容量」としているが、車両走行中はダウンロード速度は7〜10Mbpsをうろうろする状態となる。ただし、名古屋駅に到着する直前に測定した所、5回平均でダウンロードが13.1Mbps、アップロードが7.1Mbpsという結果だった。
数値で見ると、Shinkansen Free Wi-Fiよりも確かに速いようなのだが、体感的にはあまり差を感じなかった。ただし、30分ごとの再認証によるストレスから解放されるのはとても大きなメリットである。往路と違って、気分はとても良かった。
余談だが、新幹線の中で仕事をしてみて改めて思ったのは意外と揺れるということだ。テキストを打ち込む程度であれば全く問題ないのだが、マウスを使った操作はかなりキツい。仕事柄、撮影した画像の加工をするためにレタッチソフトをよく使うのだが、マウス操作でトリミングの位置指定をしていると「がん!」と突然揺れてしまい、カーソルを固定するのが難しい。
タッチパッド派(あるいはTrackPoint派)の人には気にならないポイントかもしれないが、マウスを使う場合は、特に細かい作業が難しいことは心にとめておこう。
往路、復路とS Work車両を乗って仕事をしてみたのだが、人目を気にせず仕事ができる車両はやはりよいものである。普通の車両ではキーボードを打つのは気が引けるが、S Work車両なら気兼ねする必要もない上、移動の間における“仕事スペース”として活用できるのはうれしい。N700S系が充当される列車なら、接続後の再認証に煩わされないS Wi-Fi for Bizも使えるので、さらに快適だ。
ただし、N700S系はまだ配備が進んでいない。現在、JR東海はN700S系を使ってN700系の初期型の置き換えを進めており、2023年度内に40編成まで拡大するというが、現在ものぞみ号の大半はN700系で運行されている。N700S系の本数がまだ少ないことは残念である。
なお、JR東海はN700系とN700S系の一部について、この春から7号車に「ビジネスブース」を設置する試行を行う。このブースは現在「喫煙ルーム」として運用されている区画を改装して設置されるとのことで、打ち合わせにも利用できるという。長時間の移動中を仕事に使えるとなれば、無駄な時間を過ごさなくてもよくなる。
東海道・山陽新幹線を利用して移動する機会の多い人は、ぜひS Work車両を利用してみてほしい。
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