冒頭で述べたように、政府は自治体DXの推進を決定している。そして、自治体がDXに取り組むにあたって必要なコストを補助する「デジタル基盤改革支援補助金」も設けた。直近の2022年度で終了してしまうものもあり、補助を受けたい自治体にとってはDX化、待ったなしという状況だ。
政府が自治体のDX化を推進する理由の1つに、住民の利便性を向上させるというものがある。役所で「面倒だな」と感じる理由には、窓口での待ち時間の長さ、あちこちとたらい回しにされる(かもしれない)こと、記入する書類の多さなどがある。
ワコムの展示していた電子サインは、このような課題を解決するものであった。
転入/転出などでは、同じような内容を何枚もの書類に書く、複数の窓口を回るという必要があるが、ワコムの電子サインを導入した市町村では、住民は液晶ペンタブレット上に電子サインを書き込むだけで良いという。
というのも、以前住んでいた自治体から発行された転出届の書類を窓口に提出すれば、役所内でスキャンし、その情報を必要部署で共有する。新しい住民票、子どもの転校に関係した書類など、転入に関係した書類をペーパーレスで発行し、その内容に間違いがないかを画面上で確認してサインする、というのが転入の流れになっているからだ。
これなら、「次は、福祉課ね」などとあちこちの部署を移動しなくても済む。もちろん、同じことを何度も書かされるストレスからも解放される。まさに、住民の利便性を向上させるソリューションだ。導入した自治体からは「紙から脱却できた」「住民をお待たせしないで済むのでありがたい」と好評を博しているという。
ドキュメントスキャナーやOCRで有名なPFUは、最新のビジネスドキュメントスキャナー「FUJITSU Image Scanner fi-8190」と、7月に発売予定のOCRソフトウェア「DynaEye 11」を展示していた。紙で提出された書類を、傾きや向きに関係なく素早く読み込み、住民による書類への手書き文字をOCRでテキスト化して、Excelなどデータベースに取り込めるシステムだ。
ペーパーレス化が叫ばれていても、なかなか紙の書類から脱却できない自治体は多い。しかし、紙で提出された書類はデジタルデータベース化するために、人手が必要になる。常に紙とにらめっこしながらExcel(または、導入済みデータベースシステム)に打ち込む人員を確保しなければいけない。
しかし、同システムを利用すれば、読み込んだ紙の書類の文字部分だけを抜き出して、瞬時にテキスト化できる。さまざまな書式の書類からテキスト化したい部分の“手書き欄”は、直感的な操作により定義可能だ。書類の種類が増えても、または刷新されたとしても、職員が自分たちで設定し直せる。
最新バージョンのDynaEye 11では、多少、枠からはみ出た文字も認識するという。また、二重線で取り消された部分はOCRの対象から外す。職員は、いちから入力する手間なく、間違いがないかをチェックするだけでいいのだ。
なお、スキャナーも含めたシステムの価格は年間で300万円未満とのこと。入力作業で忙しい自治体にこそ取り入れてほしいと感じた。
参考出展されていたオールインワン セルフ本人確認端末「Caora」についても触れておきたい。これは、窓口業務の担当者にとっても住民にとっても、時短につながるソリューションだろう。
マイナンバーカードや在留カードなどを差し込んでスキャンし、自分の顔をカメラで読み取り、本人確認が済むと、さまざまな申請書類で必要になる個人情報が自動的に入力され、手書きする箇所が大幅に減るのだ。作業が減るだけでなく、待ち時間も短くなる。また、なりすましを防止することもできる。
既に、一部の病院では導入されているとのことだが(マイナンバーカードを保険証などとして利用できるオンライン資格確認等システムに基づく)、行政機関での採用が待たれる。
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