このようなデプロイメントにまつわる問題を解決する方法の1つが、情シス(管理者)が“手を触れずに”従業員用のPCをセットアップできる「ゼロタッチキッティング」だ。
ゼロタッチキッティングにおいて、情シス側のすべき作業は以下の通りである。
「4番目の手順は情シスが自らやらないといけないのでは?」と思うかもしれないが、PCの在庫をメーカー(あるいは販売代理店)に託すか都度購入に切り替えれば、配送にまつわる作業がなくなり、完全な“ゼロタッチ”が実現する。
1台1台にポリシーを設定して、アプリをインストールして、箱に詰めて送って……という地獄のような繰り返しから解放されるだけでも、情シスにとってはかなりの負担軽減となる。ネットワークやストレージの管理/保守をインターネット経由で行える仕組みも導入すれば、情シスもハイブリッドワークに移行しやすくなる。
一方、PCを使う側の従業員(エンドユーザー)は、新しいPCが届いたら以下の作業を行うことになる。
アプリやポリシー設定のダウンロードに時間が掛かる点や、それに必要なインターネット回線が必要となることを除けば、従業員側におけるデメリットはほとんどない。むしろ、新しいPCを早く使い始められるという点で満足度は高まるだろう。
ここまで聞くと「ゼロタッチキッティングって大企業向けの機能なんでしょ?」と思う人もいるかもしれない。確かに、かつては大企業(従業員の多い組織)を想定したものだったが、最近は中小企業やSOHOでも利用できるゼロタッチキッティングソリューションもある。
例えば、Windows PCを使っている企業/組織ならMicrosoftのサブスクリプションサービス「Microsoft 365 Business Premium」を契約すると、Windows 10/11におけるゼロタッチデプロイメント「Windows Autopilot」を利用できる。1ユーザー当たりのライセンス料金は税別で月額2390円(※1)と、Standardプランより割高だが、エンドポイントセキュリティ機能も標準で付帯することも考えると比較的手頃でもある。
(※1)年額契約(税別2万8680円)の場合の1カ月当たりの金額。月額契約では税別2870円(年額換算で3万4440円)となるので、できる限り年額契約とした方が経費の節減につながる
業務用システムがWindowsに依存しないのであれば、Chrome OSを搭載するPC「Chromebook」「Chromebox」と、Googleのサブスクリプションサービス「Google Workspace」を組み合わせて使うという選択肢もある。
この組み合わせはゼロタッチキッティングが非常に簡単に行える上、高いセキュリティを確保しやすいというメリットがある。業務用システムがSaaSやブラウザのみで完結するのであれば、最小構成なら1ユーザー当たり税別月額680円から利用できるので、企業や組織の“おサイフ”にも優しい。
なお、この組み合わせによるメリットを最大化したい場合は、Google Workspaceに加えて「Chrome Enterprise Upgrade」を利用することをお勧めしたい。ライセンスは「年間」と「永久」の2種類があり、単体で購入する場合はパートナー企業を通す必要がある。
なお、法人向けのChromebook/Chromeboxには、Chrome Enterprise Upgrade永久ライセンスが標準付帯するモデルもある。Chrome Enterprise Upgradeの導入を前提に機材を選定する場合は、ライセンス付きのChromebook/Chromeboxを選ぶのも“アリ”だろう。
ハイブリッドワークを実現する上で、まずデプロイメントのやりやすさを検討することが重要であることは理解していただけたと思う。次回は、Microsoft 365 Business Premiumを利用する場合と、Google Workspaceを利用する場合の2つに分けて、ハイブリッドワーク時代のビジネスPCの選び方について詳しく紹介していく。
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