Intel Arcシリーズにおいて、単位GPUコアに対しては「Render Slice」という名前を与えており、ACM-G11ではこれを2基内包している。1基あたりのRender Sliceは、「Xe-Core」と呼称されるプログラマブルシェーダーのクラスタを4基内包しており、各Xe-Coreは16基のベクトル演算器「Xe Vector Engine」(XVE)と16基の推論アクセラレーター「Xe Matrix Engine」(XMX)で構成されている。
Arc A380のACM-G11は、このRender Sliceを2つ搭載したGPUダイとなる。ちなみに、Arcシリーズはレイトレーシング技術にも対応しており、これをつかさどる「Ray Tracing Unit」は、Xe-Coreにぶら下がる格好となるので、搭載ユニット数はXe-Core数と同じになる
1基のRender Slice内に、このXe-Coreを4基内包している。Xe-Core内にはプログラマブルシェーダーのクラスタであるXVE16基と、推論アクセラレーターのXMX16基が搭載されているXVEは実体としては256bitのSIMD演算器であり、32bit浮動小数点(FP32)であれば、SIMD8、すなわち1命令で8要素のFP32を同時に演算(積和算)ができることになる。
つまり、理論性能値は
Render Slice数×4 Xe-Core基×XVE 16基×SIMD8×2 FLOPS(積和算)×動作クロック(MHz)
で計算できることになる。
Arc A380(ACM-G11)は、Render Sliceが2基、動作クロックが2GHzとして公表されているので、この式に当てはめて理論性能値を求めてみると
2 Render Slice×4 Xe-Core基×XVE 16基×SIMD8×2 FLOPS(積和算)×2GHz=4.0TFLOPS
となる。
アーキテクチャが異なるため同列に比較することはできないが、参考までに4TFLOPS前後の他社製GPUをピックアップしてみると、AMD Radeon RX 6400(3.6TFLOPS)、NVIDIA GeForce GTX 1650 SUPER(4.4TFLOPS)あたりが上げられる。性能イメージ的にはこのあたりということになるだろうか。
A380が採用するグラフィックスメモリは15.5GHzのGDDR6メモリで、グラフィックスメモリバスは96bit幅、メモリ帯域は
96bit×15.5GHz÷8bit=毎秒186GB
となり、やはりAMD Radeon RX 6400(毎秒128GB)、NVIDIA GeForce GTX 1650 SUPER(毎秒192GB)の間くらいに位置してくる。
簡単なスペック評価にはなるが、Arc A380は、2022年時点の水準で見ると、Intel自身のカテゴライズ通り、「エントリークラスのGPU」という認識で良いかと思う。
この連載では、「ストリートファイターVをPCにて『フルHD×最高品質』でプレイするにあたっては、4TFLOPSくらいは超えておきたい」と提唱してきた。そして、本連載前回にて取り上げたAMDのAPU搭載のASUS JAPAN製ゲーミングノートPC「ROG Flow X13(2022)」(GV301RA)のGPU性能は約3.4TFLOPSだったが、ぎりぎりプレイが可能だった。
このことを踏まえれば、今回も"いい線"は行けそうな気はする。
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