海外に本拠を構える企業の重役が来日し、日本で基調講演を行う場合、いろいろな国のさまざまな企業の事例を紹介することが多い。もちろん「いろいろな国」には日本も含まれるのだが、日本を本拠とする企業や団体にとっては「自分ごと」として捉えきれないケースもある。
日本の企業や団体でもDXへの意識を根付かせたい――そういう意図があるのかどうかは分からないが、今回ナデラCEOは“全て”の説明において日本における事例を紹介した。
Gartner(ガートナー)の予測によると、2025年までにデジタルワークロードのうちクラウドプラットフォームで実行される比率は95%に達するという。この予測を受けて、ナデラCEOは「いかにクラウドへと『移行』するかではなく、これからはいかにクラウドを『活用』できるか」を先端性と機能性の両面から検討するべきだと語る。
Microsoftのクラウドコンピューティングサービス「Azure」は全世界に60以上のリージョン(地域)を開設し、合計で200を超えるデータセンターを運用している。リージョンのうち2つは日本国内(東日本と西日本)に設定されており、オンプレミス環境のサーバ群やエッジコンピューティング用サーバ群と統合管理できる「Azure Arc」にも対応する。
Azureの導入事例として紹介されたのはセブン銀行だ。同社は2022年3月までに社内のシステム基盤を刷新し、ATM中継システムの一部とダイレクトバンキングシステムをAzureに移行している(ATM中継システムの一部と勘定系システムは野村総合研究所のデータセンターに移行)。
これにより、セブン銀行は自社が掲げるサステナビリティー(持続可能性)の目標達成に大きく近づいたという。
これもGartnerの予測だが、2025年までにデジタルデータの10%がAI(人工知能)によって生成されるとされている。現在のAIは機械学習(マシンラーニング)ベースのものが主流で、大量のデータを深層学習(ディープラーニング)させることによって「知能」を形成している。
最近話題に上がることも多い、OpenAIが開発を進めている画像生成AI「DALL・E」は、バックエンドでAzureが活用されている。貴重講演では「Future of Tokyo Japan(日本の東京の未来)」をキーワードにして生成された「AIアート」が数点披露された。
機械学習ベースのAIは、学習に用いるデータの「量」と「質」の両方が重要である。その点、ナデラCEOはAzureをうまく活用すれば「堅固なデータプラットフォーム」「効率の良いデータベースと解析」「ガバナンス」を確保できる旨を説明した。
国内におけるMicrosoftのAI技術の活用例としては、「スマート農業」に取り組むスタートアップ企業であるAGRIST(アグリスト)が紹介された。同社は「自動収穫ロボット」や「農業AI」の研究/開発を手がけており、データの収集、解析や学習にAzureサービスを活用しているという。ナデラCEOとしては、農業従事者の高齢化や人手不足に対する課題解決につながることを期待しているようである。
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