―― プリンティング事業における取り組みについて教えてください。コロナ禍でデジタル印刷に対するニーズには変化がありますか。
岡戸氏 「HP Indigo」シリーズを中心としたデジタル印刷分野は、コロナの影響によって、パーソナライゼーションが1つの鍵になってきました。画一的なコンテンツを大量印刷するという使い方から、必要なときに必要なだけ、必要な人に向けて印刷して、コミュニケーションを強化するというニーズが浸透したといえます。
また、サステナブルに対する関心も一気に高まっています。こういった変化に、デジタル印刷は不可欠となっています。
当社は、2022年11月24日から開催された印刷産業の総合展である「IGAS2022」に最大級のブースで出展しました。「脱炭素社会を担うサステナブルなパートナーへ」をテーマに、再生可能な用紙での印刷など、多数の活用事例やサンプル展示を行い、脱炭素社会に向けた印刷業界への提案を行いました。
また、最新のHP Indigo デジタル印刷機のデモンストレーションを実施し、HP独自の「HP PrintOS」を活用することで、社会に優しい印刷はどういうものかになるのかといった方向性を示しました。さらに複合現実の技術を活用し、効率性、生産性を高めることができるデジタル印刷機向け次世代サポート「HP xR Services」も体験できるようにしました。
印刷物の価値を向上させること、環境への適用を図ることを両立することが当社の強みとなります。これまでは、アナログからデジタルへ移行することで生まれるメリットを前面に打ち出してきましたが、それとともにサステナビリティーにおける当社のデジタル印刷のメリットを、もう1つの訴求点として強く打ち出していくことになります。
例えば大量印刷をすれば、それに伴って廃棄する印刷物も増加します。廃棄物を減らすにはどうするのか、廃棄をする場合にも再生可能な素材をどれだけ増やすか、そして、当社のデジタル印刷機そのものが環境にやさしいということも訴求していきます。
脱炭素社会への取り組みは、印刷業界にとって大きなテーマです。IGASのブース作りにも軽量素材や再生可能な素材を活用し、人の移動が極力少なくて済むような設計も行いました。
さらに、炭素クレジットを使用して、脱炭素社会にデジタル印刷のビジネスにコミットしていく姿勢もお見せしました。これからも、今の時代背景を捉えて、日本HPのデジタル印刷機のサステナブルへの取り組みをしっかりと伝えていきたいと考えています。
2022年春、東京都大田区平和島に「HP 東京グラフィックスエクスペリエンスセンター」をリニューアル移転しましたが、この拠点では、最新技術を紹介するだけでなく、脱炭素化の取り組みについても、しっかりとお伝えしたいと思っています。
―― 3Dプリンタ事業は、日本においても事例がいくつか出てきましたね。
岡戸氏 日本における3Dプリンタ事業は堅調に推移しています。従来は試作用途での使い方が中心でしたが、トヨタ自動車や日産自動車といった大手自動車メーカーにおいては、実際に使用する部品において、3Dプリンタを活用する動きが進みました。これによって、保守部品の在庫を長期間保有する必要がなくなり、ヘリテージカー向けに、オンデマンドで保守部品のモノ作りができるようになりました。
3Dプリンタの市場が広がってきたことを感じます。2023年に、日本において力を入れたいと考えているのは、樹脂の量産化の提案です。これによって、自動車や一般消費財、ヘルスケア、工業分野など、いろいろな業界に活用を広げていきたいですね。特に、2022年11月下旬に発表した「HP Jet Fusion 5400」シリーズは、高品質なホワイトパーツが造形できる、HP初の「Jet Fusion 3Dプリンタ」であり、より幅広い業界での採用が期待されます。
日本では2023年前半に発表する予定で、日本における3Dプリンタ事業の拡大に向けて重要な製品になります。
―― 海外では、金属部品を量産する「HP Metal Jet」の販売を開始しています。日本での投入時期はどうなりますか。
岡戸氏 日本では、2023年後半に市場投入する予定です。新たな市場ですから、じっくりとあわてずに提案をしていきたいですね。
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