Windowsデバイスとしては珍しく、本機はディスプレイの表示モードを「sRGB」と「Vivid」から選べ、「sRGB」を選べば標準規格に近い、自然な発色になります。勝手に鮮やかに表示してしまって自分が本当はどんな色を使っているのか分からないデバイスが多い中で、この仕様は貴重ですね。
本機はCPUにベースパワー15W系のUシリーズに属するCore i7-1255U(Pコア2基/Eコア8基)を採用しています。ベンチマーク結果などは省きますが、CPU性能の面では、業務でイラスト製作するのに使えと言われても気軽にいいよと言える程度はあります。
デフォルト設定では、バッテリー駆動時にベンチマーク結果で70〜80%ぐらいまで性能が低下しますが、手元で試す限りは使用感が大きく損なわれることはありませんでした。また、設定を変えればACアダプター装着時と同様の性能を出すこともできます。
以前取り上げた富士通クライアントコンピューティング(FCCL)の「FMV LOOX」のレビューでは、ファンレス設計のために似た構成で電力設定が低め(9W)のCore i7-1250Uを採用していました。しかし、一般用途とイラスト用途で遅くてつらいと思う場面はありませんでした。
本機はそれよりも余裕がある仕様なので、当然といえば当然ですね。メモリが8GBのモデルを選んでしまわない限りは、印刷サイズや手の込んだイラストでも困ることは少ないと思います。
ここまでたどり着くのが長くなってしまいましたが、さっそくペンをチェックしていきましょう。
Surface スリム ペン 2は静電気センサー方式のペンで、サイドボタンが1つ、上側にショートカットボタンが1つあります。サイドボタンを押しながらの操作は右クリックや右ドラッグに固定で割り当てられていて、ショートカットボタンは自分で選んだアプリを割り当てて起動させることができます。
質量は約14gで重くも軽くもなく、軸が短いのでApple Pencilシリーズのように重心が上に偏って動かしづらい、というようなこともありません。ペン先もApple Pencilより少し鋭いので画面が見やすいです。
ペンの形状が平べったいのは、見た目ほど持ちづらくも動かしづらくもないですが、製作用途のような高い要求の元で長時間使うにはうれしい仕様ではないと思います。それよりも気になったのは、見た目以外の質感の低さです。ちょっと多いので箇条書きにしますね。
2番目が分かりづらいと思います。このペンは触覚フィードバックに対応していて、振動ユニットが入っています。おそらくそれが適切に制動・収束するように実装されておらず、描く時の衝撃を拾ってだらだらと震え続けてしまうのだと思います。
気にしなければ済むものが多いですが、外観の良さと使用感の悪さがかけ離れているのは確かで、別売で税込み1万5950円のペンとしてはもうちょっとどうにかならなかったのかという思いが強いです。
気を取り直して、ペン性能をチェックしていきましょう。最近だとだいたい問題ある結果にならないので、さらっと行こうと思います。
まずオン荷重は静電気センサーらしく1g以下で、良い値でした。軽い筆圧の自然さはオン荷重とは別の話なので、後の実描テストでチェックします。検知可能な最大荷重は、かなり余裕があるワコム系ペンと、かなり余裕がない海外メーカー系ペンのちょうど中間ぐらいで、筆圧が高い人でも頭打ちになる心配はほとんどしなくていいレベルでした。
遅延は、Microsoft Paintに線を引く所を120fpsで撮影する計測方法で約6フレームと、問題ありませんでした。ジッターも問題なく、以前はありがちだった、ペンの傾きで取得座標がずれる問題もありません。Apple Pencilで気になりがちな「空中筆圧」も、無くもないように見えますが、自分の手の精度では安定して再現させるのが難しいぐらいに小さく、気にならないと思います。
ただし、静電気センサー式の宿命なのか、フィルムを貼るとジッターは出やすくなります。画面を保護したりペーパーライクフィルムで描き味を改善したりしたい人は、ジッターとのトレードオフになることを覚えておくと良いでしょう。ペンを多用するならば、厚手になりがちなガラスフィルムは避ける方が良いでしょう。
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