さて……。性能は大丈夫そうだけど描いて快適かというと心配になるという、最近ではなかなかトリッキーな感じです。気を取り直して実際に描いてみます。今回はいつものイラストで工程をピックアップしてチェックするのではなく、最初からある程度時間をかけて描いてみます。
まずラフの工程では、素早くあれこれ試すためにレスポンスの良さが大事になります。CPUも良くて遅延も問題ないのでおおむね問題ありませんが、画面が滑って意図していない線になりがちなのは少し気になりました。ペンのカチカチ音と振動で気分が良い描き味と言えないのも気になりましたが、気にしていない瞬間も少なからずあったので、慣れで解決するかもしれませんね。
次は線画です。正確に滑らかな線を引くために、座標が正確なことだけでなく、画面に適切に摩擦があることが大事です。Surface Pro 9は画面が滑りやすく、やり直しになったり妥協したりしたまま進めるストロークが増えました。iPad Proのように画面の皮脂を拭き取っておけば、そこそこの摩擦が得られるといったこともありませんでした。
また、中程度の筆圧を使ってインクだまりのような抑揚をつけたりもしましたが、問題ない筆圧反応でした。この工程でバッテリー駆動時の減り方をチェックしましたが、約3.5時間で100%から空になるペースでした。個人的にはあと一息、がんばってほしいです(公称のバッテリー駆動時間は最長15.5時間です)。
最後に彩色です。この工程は筆圧でブラシの濃淡を調節するため軽い筆圧の自然さが大事で、ブラシを大きくしたり加工や調整レイヤーが増えていったりするので、性能が劣れば感触も悪くなります。今回はA4印刷ぐらいまで使えるのを目標にしたファイルですが、ACアダプター接続時だけでなく、バッテリー駆動状態でも問題ないレスポンスで作業できていました。
軽い筆圧の反応の自然さもおおむね問題ない、程度の感触でした。とはいえ良い液タブほどでもないので、軽い筆圧を重視する人は自分に合うかどうかを店頭の実機でチェックしておくのがよいと思います。
問題があったのは、やはり右クリックです。サイドボタンが上の方にあるだけでなく、平らな面の中央に出っ張りなく配置されているので、親指を動かした後に強く押す必要があります。「ボタンを押しながら画面タップで右クリック」の仕様も、液タブによくある「サイドボタン自体が右クリック」より必要な動作が多いです。
実感として操作が2テンポ遅くなるので、右クリック/右ドラッグを多用する作業スタイルの人は長時間の制作ではストレスがたまると思います。
というわけで、なんやかんやで完成しました。イラスト製作の体験の中心はペンだと思いますが、そのペンに不満が集中していました。そのせいで作業全体が快適とは言いづらくなってしまいますが、気にしないようにしていれば手の込んだイラストも最後まで描ききることはできます。
おっと……問題なかったので書き忘れそうになりましたが、画面の発熱が気になることはありませんでした。ほんのり温かくなる程度だったので、夏場でも厳しい状況にはなりづらいと思います。Windowsがこのサクサク感でこの低発熱とは、良い時代になったものですね。
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