iPhone 15 Proの新体験をもたらす「A17 Proチップ」から将来の「M3チップ(仮)」を想像する本田雅一のクロスオーバーデジタル(2/4 ページ)

» 2023年09月14日 18時00分 公開
[本田雅一ITmedia]

Neural Engineはスループット2倍に GPUはレイトレーシングに対応

 A17 ProのNeural Engineは、コア数こそ16基でA16 Bionicと同じだ。しかし、設計を一新したことで、スループット(実効処理速度)は最大2倍となった。GPUも、コアの設計を一新した上で、その数を5基から6基に増加させている。

Neural Engine Neural Engineはコア数こそ16基と据え置かれているが、設計を見直すことで処理速度が最大2倍となった

 GPUは「最大20%のパフォーマンス向上」とされているが、これは単純にコアが増えた分と考えてよいだろう。ただし、省電力制御を改良したことで、ゲームを動かした際の体感パフォーマンスの向上はより大きいという。限られたiPhoneの実装スペースの中で、GPUコアを強化できたのは、プロセスの微細化の恩恵といえる。

 加えて、新しいGPUコアはハードウェアベースのレイトレーシング(RT)処理に対応している。従来のソフトウェアベースのRT処理と比べて、ハードウェアベースの処理は最大4倍のフレームレート改善につながるという。グラフィックスの品質やリアリティーの大きな向上により、ゲーム専用機並みの高品位な映像を実現できるようになった。

GPU GPUは5コアから6コア構成となり、その分だけパフォーマンスが増している。ただし、新設計とすることで電力効率が向上し、体感性能が改善したという
レイトレーシング GPUでのレイトレーシング処理に対応することで、レイトレーシング処理のパフォーマンスが最大で4倍に向上したという

 一方で、CPUは高性能コア(Pコア)が「最大10%の性能向上」、高効率コア(Eコア)が「最大4倍の電力効率」という表現をしている。動作クロックが分からないので単純比較はできないが、今回は性能よりも効率の改善を狙ったアップデートが施されたと思われる。

 トランジスタの増分は、主に「GPUコアの改良と増加」「Neural Engineの一新」「USB 3.2 Gen 2(※1)への対応を含むインタフェース改良」に割り当てられ、全体の省電力化を図っているとみられる。中でも注目されるのは、Neural Engineの一新だ。

(※1)Appleは「USB 3」と呼称しているが、伝送速度が最大10Gbpsであることから本来は「USB 3.2 Gen 2」と呼ぶべきところである

 半導体の仕様決めにおいて、Appleは明確に意思を持ってリソースを割り当てる。今回、Neural Engineをリニューアルし、スループットを“2倍”に引き上げたということは、ここ数年で進めてきた推論エンジンを用いた端末体験の向上を、引き続き進めていく意思を示したといえるだろう。

 iPhone 15 Proシリーズでいえば、ポートレート機能の改善やペットの認識など、新しいカメラ機能に活用されているはずだが、さらに先のiOSで実現しようとしている新しいアイデアがあるのかもしれない。

35TOPS 新しいNeural Engineの処理回数は、最大で秒間35兆回(35TOPS)となる

 ただ、Appleは自社の半導体のパフォーマンスを上げること“だけ”に注力しているわけではない。

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