Appleが業界でもユニークなハードウェアを提供してこれたのは、半導体設計からOSやアプリの開発、各種信号処理の手法まで、一気通貫された開発アプローチを取ってきたからに他ならない。
かつてならば「どれだけ高速なチップを搭載できるか」が重要だった。しかし、現在の進化したiPhoneは、例えばカメラ機能を例に挙げると、CMOSセンサーやレンズの設計はもちろんだが、その信号処理と、高度な処理を実現できるユニークなSoCの組み合わせが高い品位を担保している。カメラの信号処理で必要となる処理能力を見積り、それを実現するための回路設計を行い、SoCとして統合する――これらのプロセスを数年前から行った上で、製品の実装まで行えるメーカーを、筆者は他には知らない。
そしてiPhoneに搭載してきた最高クラスの高性能なコアを、AppleはMacでも使うようになった。しかし、Macであれ、iPad Proであれ、もちろんiPhoneであれ、CPUの高速化が体験の質を高める時代は随分前に終わっている。
端末の機能としては、先に例示した「カメラの改良」が分かりやすいが、今回のiPhone 15 Pro/15 Pro Maxの「Neural Engineの強化」も、iPhoneを快適に使ってもらうためのさまざまな機能の質を高める上で重要な役割を果たしている。
昨今、iPhoneに限らずスマートフォンには、さまざまなAI機能が搭載されるようになっている。競合のスマホ向けSoCメーカーも、推論プロセッサの強化に余念がないのは、AIを活用した機能をより快適に使えるようにするためだ。
iOS 17では、留守番電話が応答する際に相手がしゃべった内容をテキスト化することが可能になる。画像や動画からのテキストの抽出、音声認識などの自然言語処理などは、推論エンジンのパフォーマンスが体験の質を左右する。過去のモデルでも動作はするが、同じ機能であったとしても“よりよく”動作することが重要なのだ。
もちろん、それだけでは毎年の体感差を出すことはできないかもしれない。しかし、スマホの買い替えサイクルが長期化している中では、意味がある。同様の使いやすさ、心地よさを引き継がれ、数世代後にさらに良いものになっていれば、AndroidではなくiPhoneを選びたいと感じるだろう。
AppleがA17 ProにおいてNeural Engineの改良に最も多くのリソースを割いたのは、製品戦略において必要だったからだと思う。
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