続いて、加藤氏と相見氏にメディアアーティストの落合陽一氏を交えたトークセッションが始まった。加藤氏と友人で、加藤氏が結婚した際にはお祝いも送ったという落合氏は、「質量のないのがいいclusterで、質量のあるイベントが行われるなんて、ちょっとおもしろいですね」と話し始めてから、「所属するラボでは、モーションキャプチャーの有用性について研究している。mocopiは大掛かりな装置がいらないのでいい」と、初対面の相見氏からは開発秘話を引き出していた。
トークセッションには2つのテーマが設けられており、1つは「人類とコンピューターの未来を語る」というものだ。
2025年に開催される大阪・関西万博で、シグネチャーパビリオン「null2」(ヌルヌル・ヌルツーもしくはヌル二乗)のプロデュースをしている落合氏は、「人はみな、内側にデジタルヒューマンを持っており、オンラインで普通に生きていけるはず。Googleのトップベージにアクセスする人は非常に多いが、メタバースに行きたいと考える人は、今のところ1%にも満たない。メタバースへアクセスする層が広がるのは確実なので、どこでアクセルをかけるか、どういうコミュニティーを作るかが重要になってくると思う」と、語り、人類「と」コンピューターというより、コンピューターの中に人がいるという未来について予想していた。
メタバースが登場した当時は懐疑的だったという落合氏は「時期尚早だと思った」とその理由を振り返った。しかし、生成AIが登場してからは「プログラムを書けない人、Unityを扱えない人でも簡単に3Dデータを作れるようになった。Twitterアカウントを作ってアイコンをペタっと貼り付けるくらい簡単になった。メタバースが一般的になるためのアクセルポイントを通過したかな」という感想を述べた。
相見氏は「テクノロジーを意識している段階では、まだ“当たり前”になれていないと感じる。モーションキャプチャーや、メタバースといった名前を意識しない、当たり前に生活している空間の1つとしてメタバースが来るのをmocopiは目指している」語った。
2つめのテーマ「人類とメタバース。〜今後の人類の行方〜」について話を振られた加藤氏は、「生成AIがブームになったおかげで、クリエイティブ関連のコストを下げられるようになった。作りたいものを作れる世界を期待している」と語った。
落合氏は「人間自体には情報量があまりないと感じている。だから圧縮すると戒名に代表されるように、数文字になってしまう。そして100Byte程度以下にまで圧縮すると、個人が経験したことを除けばみんな同じようなものになるだろう。しかもAIの登場で、人間が必要だった被験者実験で、人間不要のジャンルまででてきた。リアルな人間をコピーしてclusterに入れるなど、メタバースに人間が融合される未来が来るのではないかと思う」と独自の視点を述べた。
相見氏は、「メタバースは居住空間。他の惑星に住むのは難しくても、メタバースなら特別な世界ではないので、そこに当たり前に住めるような、そんな世界を実現できたら良い」と語り、トークセッションは終了した。
なお、clusterのブースでは、自動車メーカー8社との共同プロジェクト「モビリティクラフト 爆創クラブ2023」の体験会を実施した。スマホからアクセスできる同ゲームでは、通常では出回ることのない正式なモデリングデータに基づいて作成された23車種から好きなものを選び、cluster内でクルマに乗って運転する。あちこちぶつかりながらアイテムをゲットして、クルマをカスタマイズすることが可能だ。
ゲーム終了後は、画面内に表示されたカスタムコードを記入するカードが配られる。カードに印刷してあるQRコードをスマホカメラで読み取った後に表示されるWebサイトで、前述のカスタムコードを入力すると、カスタマイズした自分だけのクルマをAR表示することができる。
現在のところ、「モビリティクラフト 爆創クラブ2023」はclusterブースでのみ遊べるので、ぜひ体験してみてほしい。
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