今回、ASRock製グラフィックスカード「Arc A580 Challenger 8GB OC」を先行してレビューする機会を得た。
本カードはASRockのグラフィックスカードのエントリーライン「Challenger」シリーズに属している。ファンやバックプレートのデザインは、同シリーズの他GPUを搭載するグラフィックスカードと大きく変わらない。
ファンは2連構成で、厚さは2スロットだ。ただし、ファン部分がブラケットから少しだけはみ出るので、厚さ方向に2.25スロット分の余裕が必要となる。GPU補助電源は、メーカー仕様通りに「8ピン×2」という構成となっている。
「GPU-Z」でArc A580 Challenger 8GB OCの情報を確認。今回のテストではβドライバーを利用したため、Digital Signature(デジタル署名)が「Beta」となっているここからは、アプリを用いたベンチマークテストを進めていく。テストでは、Intel製のPCキット「Intel NUC 13 Extreme Kit」(開発コード名:Raptor Canyon)の最上位モデル(NUC13RNGi9)を使った。主なスペックは以下の通りだ。
今回は、手持ちのグラフィックスカードの中からASRock製の「Radeon RX 6500 XT Phantom Gaming D 4GB OC」と各種スコアを比較する。このカードはAMDのGPU「Radeon RX 6500 XT(4GB)」を搭載しており、日本における実売価格は2万5000円前後だ。Arc A580の想定スペックを勘案すると、本来は1つ上の「Radeon RX 6600」を用意すべきなのだが、手持ちにないためこのようになった。
グラフィックスドライバーは、Arc A580がβ版の「バージョン31.0.101.4830」を、Radeon RX 6500 XT(4GBモデル、以下同)が正規版の「Adlenarine バージョン23.9.3」を使っている。
なお、両グラフィックスカードはPCI Expressバスにおける「Resizable BAR」(AMDでいう「Smart Access Memory」)に対応しているため、有効な状態で計測している。ただし、Arc A580は16レーンをフルに使うのに対して、Radeon RX 6500 XTは4レーンとなるため、理論上の最大伝送速度に4倍の差が生じることは注意したい。
今回、比較対象として用意した「Radeon RX 6500 XT Phantom Gaming D 4GB OC」をGPU-Zで確認する。Arc A580とは異なり、PCI Express 4.0 x4接続であることと、グラフィックスメモリの容量が4GBであることに注意が必要であるまず「3DMark」を使って、3Dグラフィックスの性能をチェックした。結果は以下の通りだ。
発売当初のドルベース価格で比べると、179ドルのArc A580が199ドルのRadeon RX 6500 XTを“圧倒”している。また、DirectX 11ベースの「Fire Strikeシリーズ」と、DirectX 12ベースの「Time Spyシリーズ」のスコアを見てみると、かつてレビューした「GeForce RTX 3060 Ti(12GB)」と案外よい勝負をしている。
スコアだけを見ると、フルHD解像度(1920×1080ピクセル)でゲームを快適に楽しみたいという人にとって、Arc A580は案外よい選択肢になりそうだ。
続けて、実際のゲームをベースとするベンチマークテストアプリを実行してみよう。
まず、スクウェア・エニックスの「ファイナルファンタジーXIV: 暁月のフィナーレ ベンチマーク(FF14ベンチマーク)」を試す。このテストは負荷としては軽〜中程度で、少し古めのグラフィックスカード(GPU)でも問題なく動作する。
今回はフルHD解像度とWQHD解像度(2560×1440ピクセル)のフルスクリーンモードにおいて「標準画質(デスクトップ)」「高品質(デスクトップ)」「最高品質」の3パターンでスコアを計測した。結果は以下の通りだ。
ご覧の通り、Arc A580はWQHDの最高品質以外の全てにおいて、最上級の「非常に快適」評価を獲得した。Radeon RX 6500 XTとのスコア差は、品質が高いほど、そして解像度が高いほど顕著になる傾向にある。これはバス幅の差(16レーン対4レーン)と、グラフィックスメモリの容量差(8GB対4GB)が大きく影響しているものと思われる。
次に、同じくスクウェア・エニックスの「FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION ベンチマーク(FF15ベンチマーク)」を試す。こちらはFF14ベンチマークよりも負荷が重く、GPU(とCPU)の性能差がより明確にスコアへと反映されやすいとされる。
今回はフルHD解像度とWQHD解像度のフルスクリーンモードにおいて「標準画質」と「高画質」の2パターンでスコアを計測した。結果は以下の通りだ。
スコアの傾向自体はFF14ベンチマークと同様だが、Arc A580でも最上位評価「非常に快適」に届かなかった。ただし、テストの進行を目視した限りはスムーズに進行していたので、実際にプレイする際には、そこまで気にならないだろう。
重量級のタイトルでは、GPU(やCPU)への最適化がパフォーマンスを左右することがある。FF15(とFF14)はNVIDIA製GPUに最適化されているため、他社製GPUではスコアが出にくいとされている。Arc Graphicsシリーズへの最適化が進めばスコアが上向く可能性もあるが、どのようなプラットフォームに最適化するかはゲーム開発者の方針次第である。
もう少し頑張ってほしかったと思わなくもないが、Arc A580はカジュアルなゲームプレイに必要十分な性能を備えているようだ。
次は、最近リリースされた格闘ゲームと、ビデオ編集ツールでの動画の書き出しにおけるパフォーマンスをチェックしてみよう。
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