比較的最近リリースされたゲームをベースとするベンチマークテストとして、カプコンの「STREET FIGHTER 6 ベンチマークツール(スト6ベンチマーク)」を試してみよう。
こちらはウィンドウ表示モードで、フルHD描画の「NORMAL(標準画質)」「HIGH(高画質)」「HIGHEST(最高画質)」の3モードで計測している。総合スコアの結果は以下の通りだ。
このベンチマークテストでは、GPUのスペックに応じてフレームレートの上限が自動設定されるようになっているが(※1)、3つのテストにおいてArc A580は「最大60fps」に、Radeon RX 6500 XTは「最大30fps」に設定された。恐らく、バスの伝送速度の差が影響したのだろう。
Radeon RX 6500 XTについては、HIGH設定までは描画で気になるカク付きは見られなかった。ただし、フレームレートがArc A580の半分に制限されているため、そもそもの描画がカク付いて見えるのは仕方がない。HIGHEST設定では、描画負荷が大きいであろう場面において、テスト内のフレームレートカウンターが20fpsを下回るシーンも見受けられた。
一方、Arc A580は全品質で100点満点だったことは、率直にいって予想外である。HIGHEST設定でも、アプリ内のフレームレートカウンターではおおむね60fpsに“貼り付く”状態だった。もしかすると、スト6を存分に楽しむにはベストなGPUの1つなのかもしれない。
(※1)FIGHTING GROUND(ファイティンググラウンド)は最大60fps、BATTLE HUB(バトルハブ)とWORLD TOUR(ワールドツアー)は最大120fpsまで、手動設定で変更可能
ゲーム関連のベンチマークテストはこの辺にして、ここで動画のエンコード(圧縮)に関するテストを実施してみたい。
今回は、ULが提供するベンチマークテストソリューション「Procyon Benchmark Suite」に収録されている「Procyon Video Editing Benchmark」を利用して、動画の書き出しプロセスにかかった時間を計測した。
このテストは「Adobe Premiere Pro」を使ってフルHD(H.264形式)/4K(H.265形式)の動画を書き出しを行うが、一般的なベンチマークテストと比べると計測に時間が掛かる。別の記事でも触れた通り、かなりハイスペックなGPUとCPUを組み合わせないと、1時間以内に全テストを終えるのは厳しいレベルだ。
果たして、どのくらいの時間で処理を終えられたのだろうか。結果は以下の通りである。
Arc A580はH.264/H.265対応のハードウェアエンコーダーを積んでいるのに対して、Radeon RX 6500 XTは非搭載である(※2)。そのため、Arc A580の方が圧倒的に有利かと思われたが、処理負荷の大きいプロジェクト2の所要時間では、思ったよりも差がでなかった。
とはいえ、「ちりも積もれば山となる」という通り、エンコーダーの存在による出力スピードの差は、エンコードする動画が長くなれば長くなるほど大きく付く。YouTubeなどにアップロードする動画の書き出し、あるいは負荷の大きくないゲームでリアルタイム配信を行う際は、内蔵エンコーダーが役立ちそうだ。
(※2)H.264/H.265形式のハードウェアデコーダーは搭載している
Intel Arc A Graphicsシリーズにおいて“穴”となっていたミドルレンジ層を埋めるべく、まもなく登場するIntel Arc A580は、価格の割にはよい性能といえる。少なくとも「ゲームはフルHDで楽しめれば十分」というユーザーにとって有力な選択肢の1つとなりそうだ。
ただ、ちょっと気を付けなければならないことがある。それは消費電力だ。Arc A580を搭載するグラフィックスカードの想定消費電力は185Wとなっており、「8ピン×2」のGPU補助電源が必要となる。Intelがライバルと想定しているRadeon RX 6600 XTが160W、GeForce RTX 3050が130W(共に定格値)で、GPU補助電源を「8ピン×1」としていることを考えると、消費電力当たりのパフォーマンス(いわゆる「ワッパ」)の面では若干不利であることは否めない。参考に、3DMarkのTime Spyテストを実行中のピーク時のシステム消費電力をワットメーカーで計測した際の値は以下の通りだった。
ともあれ、フルHD解像度でのゲーミングを想定したミドルレンジGPUに新たな選択肢が生まれたことは、歓迎すべきことである。予算重視でそこそこ動くグラフィックスカードを探している人は、ぜひ注目してみてほしい。
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