既報の通り、KDDIと米SpaceX(Space Exploration Technologies)が業務提携し、au/UQ mobile/povoブランドのスマートフォン回線において、2024年内をめどにSpaceXのデータ通信用人工衛星「Starlink(スターリンク)」との“直接通信”サービスを開始する。まずSMS(ショートメッセージ)の送受信から対応し、2025年には通常のデータ通信や音声通話のサービスも開始する予定だという。
8月30日に行われた発表会において、KDDIは衛星との直接通信で使えるSMSについて、「家族や友人との連絡手段」という個人的コミュニケーションの他、「緊急通報」といった使い方を挙げている。山岳地帯や洋上など、地上の携帯電話ネットワークではカバーが難しい場所でも、衛星通信ならカバーしやすいことを生かした使い道といえる。
さて、「携帯電話と通信衛星の直接通信」といえば、AppleのiPhoneが、一部の国/地域において衛星経由の緊急通報に対応している。こちらは「iPhone 14」「iPhone 14 Pro」シリーズ以降で利用可能で、日本で販売されている本体も、サービスの提供国/地域に持ち込めば使える。本件に関する考察は、過去にこの連載「海で使うIT」でも行った。
iPhoneの衛星緊急通報は日本では利用できないため、KDDIとSpaceXの取り組みが“日本初の”スマホと衛星との直接通信サービスになる可能性もある……のだが、提供開始までまだ時間があるせいか、サービスについて不明瞭な点が多々ある。今回は、本サービスを衛星通信を使った緊急通報手段として見た場合の疑問点や期待すべきポイントをチェックしていこう。
au/UQ mobile/povoスマートフォンにおける衛星通信は、2024年内にSMSからスタートする予定である。しかし先述の通り、提供開始までまだ時間があるせいか、サービスについて詳細が明らかになっていないことも多い。現時点で判明している情報の範囲において、考えうる主な懸案事項は以下の通りだ。
(※1)国際緊急対応連携センター「IERCC(International Emergency Response Coordination Center)」など
(※2)領海外での通信の可否が重要な理由は後述する
上記の懸案ポイントについて、KDDI広報部にまとめて質問した。その返答は、基本的に「詳細については、準備が整い次第改めてご案内させていただきます」とのことだった。
なお、発表会で衛星通信の使い方として言及のあった「緊急時にも活用」は、「緊急時におけるSMSでの家族/知人への連絡」はもちろん、音声通話が可能となったフェーズでは「緊急通報特番への音声発信」も想定しているという。ここでいう「緊急通報特番」は、総務省が「電気通信番号計画」で定めている110番/118番/119番のことを指す。
KDDIが想定している通りに機能を実装できた場合、auスマホ×Starlinkの緊急通報は、従来の衛星通信を用いる緊急通報よりもアドバンテージを得られる可能性がある。
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