GPUを一般的な演算で使うケースでは、Metalや「OpenCL」を通した演算処理のスループット(実効速度)が重要になってくる。推論処理の演算の一部は「Neural Engine」へ逃がせるとはいえ、GPU“単体”の演算テストは、GPUコアのアーキテクチャ変化を推察する手助けにはなる。
今回、Geekbench 6において、GPUの各種演算処理におけるスループットを計測する「Compute」テストを実行してみると、先のグラフィックステストとは打って変わって、M2チップとの比較でわずか3.5%しかスコアが向上しなかった。
このことは悪いニュースなのかといえば、そう思わない。M3チップは、MacBook Airのようなファンレスのシステムでの利用も想定した、電力効率重視のチップである。演算スループットの向上が小幅なのに、前述したようなグラフィックス処理のスループットが大幅に向上したのは、まさにハードウェアベースのアクセラレーターと、動的なメモリ割り振り機能の恩恵だ。GPUアーキテクチャの変更が効いているのだろう。
より高い効率で処理しているからこそ、こうした一見して矛盾する結果が出ている――そういうことだ。Media Engineは「動画回りの処理効率改善」で搭載したと合わせて考えれば、このようなアプローチは“賢い”。
今回はコンシューマー機のiMacということで深掘りはしていないが、Maxonの「Cinebench 2024」のGPUレンダリングテストを行うと、M2チップの2倍以上に伸びていた。これはまさにメッシュシェーディングとレイトレーシングのハードウェアアクセラレーターが搭載された成果だ。
同じアーキテクチャのGPUコアをより多く備えるM3 ProチップやM3 Maxチップでは、さらに高いパフォーマンスを期待できる。
M3チップのCPUパフォーマンスは、ピーク性能でM2 Proチップと同等に達している。Eコアのパフォーマンスと省電力性両面での改良により、M1チップと同等の処理能力を半分の消費電力で実行できる。エントリークラスからミドルクラスのデスクトップ機はもちろん、ノート型であれば高性能モデルまでを、その省電力性と共にカバーする。恐らく、Appleはしばらくの間、M2チップとM3チップを併存させるのではないだろうか。
これだけ高性能ならば、Thuderbolt 4のチャネル数が2倍、高精細の外部ディスプレイを2枚使いたいといったニーズも出てくるだろう。しかし、そうした使い方にはProチップがある。「どうしてもパワフルな一体型がいい」というニーズが高まれば、もしかするとProチップ(あるいはMaxチップ)搭載のiMacが復活する未来もあるかもしれない。
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