「AIをローカル環境で使えるようになれば、クラウドに比べて処理速度は5倍速く、コストは80%ほど削減できるだろう。2024年はAI PC元年になる」──日本HPの岡戸伸樹氏(代表取締役 社長執行役員)は、都内で開催した事業説明会でそう話した。
インテルが2023年12月に発表したクライアントPC向け「Core Ultraプロセッサ(開発コード名:Meteor Lake)」は、同社初のAIプロセッサ(NPU)を搭載している。独立したNPUを搭載することで、AI処理に関するスピードを高速かつ効率的に行えるのが特徴だ。そうした要素がPCの処理性能や省電力性の向上につながる。
インテルやPCメーカー各社はCore Ultraプロセッサ搭載モデルを「AI PC」としてブランディングしており、市場の拡大に期待を寄せている。
HPならびに日本HPも2024年の事業フォーカスエリアの1つとしてAIを掲げており、その中でAI PCに寄せる期待は大きい。岡戸氏は現在のAI処理はクラウドが主流であり、処理のレイテンシやコスト、セキュリティなどさまざまな課題が浮き彫りになっていると指摘する。ローカル環境でAI処理が行えるようになることで、そうした課題の解決につながるとして、長期的にはグローバルでAI PCの普及率が40〜50%まで伸びると予測しているという。
同社の松浦徹氏(執行役員 パーソナルシステムズ事業本部長)は、AI PCの強みはエッジによるAI機能のローカル処理としながらも、クラウドとエッジのハイブリッド活用も可能になると補足する。
その他のフォーカスエリアとしては、「柔軟性の時代」「セキュリティ」「サステナビリティ」を挙げた。柔軟性の時代とは、働く場所を問わないハイブリッドワークに関するものだ。2024年はさらに柔軟な働き方が進化していくと見通しており、セキュリティもあわせて安心、安全なPCやプリンタなどハードウェアやソリューションを提供していきたいとした。
サステナビリティに関しては、製品設計から製造、配送、利用、回収まで、ライフサイクル全体で環境負荷の削減を推進といった取り組み引き続き行っていくという。
岡戸氏は「AI PCという新しいジャンルの中でしっかりとHPブランドを築いていく」として、PC市場で買い替えを促進するカタリストになりたいと話した。
「AI PCは市場に大きなインパクトを与えるだろう。これからは企業が独自でLLM(大規模言語モデル)を作るなど、AIの需要がより高まっていくはずだ。AI活用の流れが加速する中で、エッジとクラウドをどのようにバランスさせて使っていくかは大きな経営課題になる。それがPC市場の成長ドライバーになる」(岡戸氏)
岡戸氏は代表取締役 社長執行役員に就任してから3年目を迎えた。これまでは引き継ぎや新リーダーの起用などで地固めをしてきたといい、2024年はそれらをもとに大きく飛躍していきたいと語った。
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