ここからは、Ryzen 5 8600GとRyzen 7 8700Gの実力をベンチマークテストを通してチェックする。今回はAMDから借用したレビューキット(APU、マザーボード、メモリ)を中心に、SSDや電源ユニットなどを付け足したテスト環境で各種テストを行った。
今回は内蔵GPUの性能を比較するため、前世代のAPU「Ryzen 5 5600G」を取り付けたベアボーンPC「ASRock DeskMeet X300」と、「Core i9-13900K」を搭載する自作PCのスコアも参考値として掲載する。
まず、3Dレンダリングを通してCPUの性能をテストする「CINEBENCH R23」を実行した。結果は以下の通りだ。
単純なCPU性能“だけ”を見ると、前世代とはいえ競合の最上位モデルであるCore i9-13900Kにはかなわない。
ここで注目したいのは、Ryzen同士での比較だ。前世代のRyzen 5 5600Gと比べると、Ryzen 5 8600Gのスコアはシングルコアで1.24倍、マルチコアで1.35倍向上している。Ryzen 7 8700Gについても、マルチコアのスコアはRyzen 5 8600Gからコアが増えた分だけ順当に積み増している。
自作PCを組み立てる際に、GPUを内蔵するCPUを選ぶ理由の1つとしてコストの抑制が挙げられる。端的にいうと、グラフィックスカード(GPU)に費やす予算を減らす(あるいは削った分だけ別のパーツに回す)というニーズもあったりする。
「GPUはいらないけれど、CPUのパワーは欲しい」という場合に、Ryzen 8000Gシリーズは理想的な選択肢の1つとなりそうだ。
次に、2D/3Dアニメーション製作ツール「Blender」をベースとしたベンチマークテストアプリ「Blender Benchmark」(Windows版)を通してCPUの性能を確かめよう。
今回は「Monster」「Junkshop」「Classroom」の3つのシナリオでCPUを使ったレンダリングを実施し、1分間当たりの生成サンプル(オブジェクト)の数を比べる。結果は以下の通りだ。
スコアの傾向は、CINEBENCH R23におけるマルチコアテストと同様だ。処理効率(省電力)重視とはいえ、高効率コア(Eコア)を“追加で”搭載しているCore i9-13900Kの優位は揺るがない。
こちらもRyzen 5 5600GとRyzen 5 8600Gと比べると性能の向上具合が分かりやすく、Ryzen 5 8600GはRyzen 5 5600G比で1.3〜1.4倍のオブジェクトを生成できている。
今どき、この手のレンダリングは外部GPUを使った方が圧倒的に高速だ。2D/3DレンダリングをするためにPCを用意する場合は、可能な限り外部GPU付きを選ぶべきだろう。
とはいえ、CPUの“総合的な”演算能力を確かめるには、この手のテストがベストなのは確かではある。先代と比べて、Ryzen 8000シリーズのCPUコアは目に見える性能向上を果たしている。
次は、PCの総合的な性能をチェックできる「PCMark 10」の結果を見ていこう。総合スコアは以下の通りとなった。
先に実施したCPU“だけ”のパフォーマンスを確かめるテストとは異なり、Ryzen 8000Gシリーズの結果が良好だ。Ryzen 7 8700GはCore i9-13900Kを上回っているし、Ryzen 5 8600Gも意外と引き離されていない。というのも、PCの“総合”ベンチマークテストということもあり、PCMark 10ではGPUコアやストレージのパフォーマンスも影響するからだ。
プラットフォームが異なるため、テストを“完全に同じ”環境で実施することは困難だ。Core i9-13900Kを備えるPCはより高速なSSDを備えていたのだが、それだけではRyzen 7 8700Gをまくることはできず、Ryzen 5 8600Gに予想外の健闘を許してしまった。それはひとえにRyzen 8000GシリーズのGPU、つまりRadeon 700Mシリーズが優秀だからということである。
極端に「CPUが高性能でないといけない」という限りは、CPUコアとGPUコアの性能のバランスが取れているRyzen 8000Gシリーズを選んだ方が、普段使いでは快適となる可能性があることは覚えておきたい。
では、PCMark 10での好成績を支えたと思われるGPU(グラフィックス)の性能もチェックしていこう。
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