AMDが1月4日(米国太平洋時間)に発表したデスクトップ向け新型CPU「Ryzen 7000X3Dシリーズ」は、先行して登場したデスクトップ向けRyzen 7000Xシリーズをベースに、「3D V-Cacheテクノロジー」を適用することでL3キャッシュを大幅に増量したものだ。
シリーズの上位モデル「Ryzen 9 7900X3D」「Ryzen 9 7950X3D」について、同社は国内発売日時が3月3日11時となる旨を発表した。税込みの想定販売価格はRyzen 9 7900X3Dが9万5800円、Ryzen 9 7950X3Dが11万1800円となる。
過去にテストした「Ryzen 7 5800X3D」では、さまざまなCPU命令を駆使するようなアプリにおいてL3キャッシュ増量の効果は顕著に表れた。新しいCPUアーキテクチャに移行したRyzen 7000X3Dシリーズでも、この傾向に変わりはないのだろうか?
発売に先駆けて、シリーズの最上位製品であるRyzen 9 7950X3D(4.2GHz〜5.7GHz/16コア32スレッド)の実力をチェックしてみよう。
【訂正:3月1日17時30分】初出時、L3キャッシュの容量に一部誤りがありました。おわびすると共に、該当箇所を修正します
先述の通り、Ryzen 7000X3Dシリーズは3D V-Cacheテクノロジーを適用することでL3キャッシュを大幅に増量したことが特徴だ。今回は、その適用方法にちょっと面白いポイントがあるので簡単に紹介しよう。
本来、Ryzen 7000/Ryzen 7000XシリーズのCCX(Core Complex:CPUとL3キャッシュを搭載したダイ)は、最大で32MBのL3キャッシュを搭載している。16コア32スレッド構成のRyzen 9 7950XのCCXは2基なので、“素の”L3キャッシュ容量は64MBとなる。
Ryzen 9 7950XのL3キャッシュの容量は合計で128MBなので、3D V-Cacheによる増分は64MBということになる。「ということは、それぞれのCCXに32MBのL3キャッシュを追加したのかな?」と思いたくなるが、そうではない。64MBの追加L3キャッシュは、全て片方のCCXに実装されているというのだ。
言い換えると、今回のRyzen 7000X3Dシリーズは2基のCCXのL3キャッシュ容量に偏りがあるということになる。2基のCCXに32MBずつ増量しなかった理由について、AMDは以下の通り説明している。
端的にいうと、L3キャッシュの偏重搭載は、性能や価格のバランスを取った結果ということだ。
そうなると「どちらのCCXに処理を割り当てるのか」を判定する仕組みが重要となってくる。そこで最新の「AMD Chipset Driver」では、以下の新たな仕組みを導入している。
Ryzen 7000X3Dシリーズは、既存のSocket AM5搭載マザーボードで稼働する(※1)。ただし、そのパフォーマンスを“適切に”発揮するには最新のチップセットドライバーと、最新版の「Xbox Game Bar」を用意する必要がある(※2)。
(※1)新しいチップセットドライバーに関連する機能を適切に動作させるには、UEFI(BIOS)のアップデートが必要となる場合もあります
(※2)ゲームを起動しているかどうかを判定するために、Windows 10/11の「ゲームモード」を利用するため
AMDは、Ryzen 7000X3Dシリーズにおける消費電力当たりのパフォーマンス(俗にいう「ワッパ」)を強調している。競合の「Core i9-13900K」とCINEBENCH R23におけるマルチコアテスト実行中の消費電力を比べた場合、Ryzen 9 7950X3DはCore i9-13900Kの最大で2倍近くの効率を持っているという。3D V-Cacheのない「Ryzen 9 7950X」と比べた場合も、わずかではあるが効率は向上している。
同社は「頂点に立つ結果を残すために、電力をくうプロセッサはいらない」としており、3D V-Cacheを搭載するRyzen 7000X3Dシリーズに自信を持っているようだ。この辺は、この後のベンチマークテストで本当かどうか分かるだろう。
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