筆者の自宅では、ひかりTV for docomo専用のセットトップボックス(STB)「ドコモテレビターミナル02」と、地デジ/BS/110度CSデジタル放送に対応するネットワークチューナー「HVTR-BCTZ3」の2台がローカルネットワーク内に存在している。
いずれのSTB/チューナーもDTCP-IP対応のDLNAクライアントアプリ/デバイスからのTV視聴に対応しており、Windows PCからはソニーグローバルマニュファクチャリング&オペレーションズ製のクライアントアプリ「PC TV Plus」、またはデジオンの「DiXiM Play U」を使って視聴している。
あえて何も考えずに、筆者はSurface Pro(第11世代)にPC TV Plusをインストールした。セットアップは“ある1点”を飛ばして問題なく完了した。
セットアップでスキップされたプロセスがあることに気が付かないまま、筆者はPC TV Plusを起動した。通常、スプラッシュウィンドウは画面の“真ん中”に出るのだが、Surface Pro(第11世代)では右下に出てくる。この時点で、何となく不穏な雰囲気がする。
初回起動後は、Windowsファイアウォールの設定と、接続するDLNAサーバ(STB/チューナー)の選択画面が出る。ここは難なく突破し、接続したドコモテレビターミナル02から取得したリアルタイム番組情報もしっかりと表示された。
「お、これは大丈夫そう」と思い、放送中番組の1つをタップしてリアルタイム(という名の5〜10秒遅れ)視聴を始めることにする。ウィンドウも番組表示モードに遷移した。これは勝ったか……?
しかし、映像のバッファリングが終わったとおぼしきタイミングで「著作権保護エラーが発生している」として、再生できないまま終わってしまった。いいところまで来て、一気に落とされる――世の中は無常である。
Surface Pro(第11世代)は、Snapdragon X Eliteに統合された「Adreno(アドレノ)」というGPUを使っている。DirectX 12に対応しているし、何ならディスプレイ込みで「HDCP(High-Bandwidth Digital Content Protection)」という著作権保護技術にも対応している。表示の要件は満たしている。
では何がダメなのか。今回は、ATOKとは別の意味でCPUアーキテクチャの違いが影響しているものと思われる。
PC TV Plusは、インストール中にピクセラ製の仮想ネットワークドライバを組み込む。このドライバは、ネットワーク越しの著作権保護(DTCP-IP)を制御する役割を持っている。
Arm版Windows 11は、Intelアーキテクチャ(x86/x64)ベースのアプリをエミュレーションする機能“は”備えている。ただ、エミュレーションできるのはアプリのみで、デバイスドライバのエミュレーションまでは行えない。
アプリと一緒にIntelアーキテクチャのデバイスドライバも組み込まれる場合、ドライバのインストールはスキップ(無視)されるか、エラーが出て続行できない。だから、先ほどのインストールプロセスでは仮想ネットワークドライバの導入がなされなかったのだ。
データ伝送時の著作権保護を担保するドライバがないので、STBの映像を再生できない――そういうことである。
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