今どきのGPUはゲーミングだけでなく、動画のエンコードやAIの演算処理にも活用されている。今回は、これらパフォーマンスをULの総合ベンチマークテストアプリ「Procyon」に内包されたテストでチェックしてみる。
GeForce RTX 50シリーズには第9世代NVENC(動画エンコーダー)と第6世代NVENC(動画デコーダー)が内蔵されている。GeForce RTX 5070はNVENCが1基、NVDECが1基という構成だ。5070 Tiと比べるとNVENCが1基削られただけでなく、グラフィックスメモリも4GB減らされている。
実際はどうなのか、Procyonの「Video Editing Benchmark」を使ってチェックしてみよう。このテストは「Adobe Premiere Pro」を使ってフルHD(H.264コーデック)と4K(H.265コーデック)の動画を2種類ずつ書き出す際のパフォーマンスを点数化する。負荷の大きいテストはエフェクト処理でGPUによるアクセラレーションを有効にできる。
総合スコアではなく、あえて書き出しに掛かった時間をチェックしてみると、以下の通りとなる。
NVENCが1基削減されたことは大きい……と思いきや、思ったよりも大きな差は付いていない。ただ、このテストで扱う動画はやや短めなので、長い動画を書き出そうとすると「チリが積もれば山となる」となりそうだ。
上記の比較対象のうち、3080 Ti/4070も5070と同じ「NVENC×1+NVDEC×1」という構成だ。それと比べると、GeForce RTX 50シリーズのNVENCは過去世代よりも着実にパフォーマンスが改善していることも分かる。
一言で「AI」といっても、さまざまなものがある。ProcyonではAIに関するベンチマークテストがあるが、今回は機械学習データを使って物体を検知する「コンピュータビジョン」の処理パフォーマンスを確認する「AI Computer Vision Benchmark」を実行してみよう。
ProcyonのAIベンチマークでは、テストによってはAPIや演算器(CPU/GPU/NPU)を指定して実行可能で、AI Computer Vision BenchmarkでGPUの演算能力を試す場合はAPIとして「Windows ML(Direct ML)」か「NVIDIA TensorRT」を選べる。GeForce RTXシリーズにとっては、TensorRTの方がパフォーマンスを発揮しやすいのだが、テスト実施時点ではまだGeForce RTX 50シリーズに対応していなかった(※2)。
(※2)3月3日付でGeForce RTX 50シリーズに対応するアップデートが配信された(今回は時間の都合でテストに盛り込めなかった)
そこで今回はWindows MLを使った場合の演算パフォーマンスを比較する。総合スコアは以下の通りだ。
順当に「5080>5070 Ti>5070」という結果となった。4070比では1.1〜1.25倍のパフォーマンス差が出ている。もちろん、3080 Tiよりも結果は良好だ。
今回はコンピュータビジョンのテストのみを行っているが、本製品はグラフィックスメモリが少ないため、一部の生成AIモデルがメモリ不足で動かない可能性がある。生成AIを動かす可能性のある人は、グラフィックスメモリが多いGPU(グラフィックスカード)を選ぶようにしたい。
「普段はWQHD解像度で、たまに4K解像度でもゲームがしたい」という人にとって、GeForce RTX 5070は扱いやすいGPUだ。重量タイトルではネイティブ解像度での4Kゲーミングは厳しめだが、DLSSを使う前提なら重たいゲームタイトルでも十分に遊べる。消費電力や推奨電源容量も(シリーズの中では)控え目なので、組み込めるPCも多いはずだ。
3DMarkの「Time Spy Extreme」でシステム全体の消費電力を測ってみた所、以下の通りとなった。4070と比べると消費電力は少し大きいが、性能が向上した分と考えれば一応納得はできる。
重量級のベンチマークテストとして注目されている「モンスターハンターワイルズ ベンチマーク」だが、ウルトラプリセットの4K解像度で試してみたところ、平均フレームレートは以下のようになった。
普通のTVで楽しむ分にはネイティブ解像度(超解像なし)でも何とかなりそうなように見えるが、描画するオブジェクトが多くなると若干厳しい面がある。DLSSをオンにしてプレイするとそこそこ快適にプレイできそうだ。
フレーム生成をオンにするとさらに解像度が改善する……のだが、テスト中の描画に違和感を覚える場面もある。この違和感は本タイトルに限ったことではなく、フレーム生成による補間を行うとよく見られることなので、気になる(なりそうな)人はフレーム生成をオンにした際の描画を見せてもらうといいだろう。
さて問題は価格設定だ。冒頭で触れた通り、想定販売価格は10万8800円からとなる。米国では税別で549ドル(約8万1700円)からなので、ちょっと国内価格は割高なようにも感じる。どうしても「10万円を切ったらいいのになぁ」と考えてしまう。
その点、ライバルのAMDはコストパフォーマンス(費用対効果)を重視した「Radeon RX 9000シリーズ」をぶつけてきた。実際のパフォーマンスと値付け(と供給量)次第だが、もしかするとGeForce RTX 5070/5070 TiのユーザーをRadeon RX 9070/9070 XTが“かっさらう”という展開もあり得る。
数年ぶりに、GPU回りの戦いが熱くなりそうだ。
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