モンハンワイルズも案外快適? 現時点での最新エントリーGPU「GeForce RTX 5070」の実力をチェック!先行レビュー(3/3 ページ)

» 2025年03月04日 23時00分 公開
[井上翔ITmedia]
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動画のエンコードやAIのパフォーマンスもチェック!

 今どきのGPUはゲーミングだけでなく、動画のエンコードやAIの演算処理にも活用されている。今回は、これらパフォーマンスをULの総合ベンチマークテストアプリ「Procyon」に内包されたテストでチェックしてみる。

Procyon Video Editing Benchmark

 GeForce RTX 50シリーズには第9世代NVENC(動画エンコーダー)と第6世代NVENC(動画デコーダー)が内蔵されている。GeForce RTX 5070はNVENCが1基、NVDECが1基という構成だ。5070 Tiと比べるとNVENCが1基削られただけでなく、グラフィックスメモリも4GB減らされている。

 実際はどうなのか、Procyonの「Video Editing Benchmark」を使ってチェックしてみよう。このテストは「Adobe Premiere Pro」を使ってフルHD(H.264コーデック)と4K(H.265コーデック)の動画を2種類ずつ書き出す際のパフォーマンスを点数化する。負荷の大きいテストはエフェクト処理でGPUによるアクセラレーションを有効にできる。

 総合スコアではなく、あえて書き出しに掛かった時間をチェックしてみると、以下の通りとなる。

  • GeForce RTX 5070
    • フルHD/その1(GPUアクセラレーション):17.9秒
    • フルHD/その2:15.9秒
    • 4K/その1(GPUアクセラレーション):53.9秒
    • 4K/その2:46.3秒
  • GeForce RTX 5070 Ti
    • フルHD/その1(GPUアクセラレーション):15.6秒
    • フルHD/その2:14.7秒
    • 4K/その1(GPUアクセラレーション):49.6秒
    • 4K/その2:41.1秒
  • GeForce RTX 5080
    • フルHD/その1(GPUアクセラレーション):14.7秒
    • フルHD/その2:13.7秒
    • 4K/その1(GPUアクセラレーション):49.6秒
    • 4K/その2:42.7秒
  • GeForce RTX 4080
    • フルHD/その1(GPUアクセラレーション):17.7秒
    • フルHD/その2:15.7秒
    • 4K/その1(GPUアクセラレーション):54.5秒
    • 4K/その2:47.6秒
  • GeForce RTX 4070
    • フルHD/その1(GPUアクセラレーション):23.7秒
    • フルHD/その2:19.7秒
    • 4K/その1(GPUアクセラレーション):63.8秒
    • 4K/その2:53.7秒
  • GeForce RTX 3080 Ti
    • フルHD/その1(GPUアクセラレーション):17.7秒
    • フルHD/その2:16.3秒
    • 4K/その1(GPUアクセラレーション):55.4秒
    • 4K/その2:47.6秒

 NVENCが1基削減されたことは大きい……と思いきや、思ったよりも大きな差は付いていない。ただ、このテストで扱う動画はやや短めなので、長い動画を書き出そうとすると「チリが積もれば山となる」となりそうだ。

 上記の比較対象のうち、3080 Ti/4070も5070と同じ「NVENC×1+NVDEC×1」という構成だ。それと比べると、GeForce RTX 50シリーズのNVENCは過去世代よりも着実にパフォーマンスが改善していることも分かる。

Procyon Video Editing Benchmark Procyon Video Editing Benchmarkの書き出し時間

Procyon Computer Vision Benchmark(Windows ML)

 一言で「AI」といっても、さまざまなものがある。ProcyonではAIに関するベンチマークテストがあるが、今回は機械学習データを使って物体を検知する「コンピュータビジョン」の処理パフォーマンスを確認する「AI Computer Vision Benchmark」を実行してみよう。

 ProcyonのAIベンチマークでは、テストによってはAPIや演算器(CPU/GPU/NPU)を指定して実行可能で、AI Computer Vision BenchmarkでGPUの演算能力を試す場合はAPIとして「Windows ML(Direct ML)」か「NVIDIA TensorRT」を選べる。GeForce RTXシリーズにとっては、TensorRTの方がパフォーマンスを発揮しやすいのだが、テスト実施時点ではまだGeForce RTX 50シリーズに対応していなかった(※2)。

(※2)3月3日付でGeForce RTX 50シリーズに対応するアップデートが配信された(今回は時間の都合でテストに盛り込めなかった)

 そこで今回はWindows MLを使った場合の演算パフォーマンスを比較する。総合スコアは以下の通りだ。

  • GeForce RTX 5070
    • INT(整数演算):468ポイント
    • Float16(半精度浮動小数点数演算):1803ポイント
    • Float32(単精度浮動小数点数演算):980ポイント
  • GeForce RTX 5070 Ti
    • INT(整数演算):577ポイント
    • Float16(半精度浮動小数点数演算):1977ポイント
    • Float32(単精度浮動小数点数演算):1176ポイント
  • GeForce RTX 5080
    • INT(整数演算):634ポイント
    • Float16(半精度浮動小数点数演算):2164ポイント
    • Float32(単精度浮動小数点数演算):1267ポイント
  • GeForce RTX 4080
    • INT(整数演算):539ポイント
    • Float16(半精度浮動小数点数演算):1786ポイント
    • Float32(単精度浮動小数点数演算):1116ポイント
  • GeForce RTX 4070
    • INT(整数演算):416ポイント
    • Float16(半精度浮動小数点数演算):1434ポイント
    • Float32(単精度浮動小数点数演算):883ポイント
  • GeForce RTX 3080 Ti
    • INT(整数演算):415ポイント
    • Float16(半精度浮動小数点数演算):1501ポイント
    • Float32(単精度浮動小数点数演算):912ポイント

 順当に「5080>5070 Ti>5070」という結果となった。4070比では1.1〜1.25倍のパフォーマンス差が出ている。もちろん、3080 Tiよりも結果は良好だ。

 今回はコンピュータビジョンのテストのみを行っているが、本製品はグラフィックスメモリが少ないため、一部の生成AIモデルがメモリ不足で動かない可能性がある。生成AIを動かす可能性のある人は、グラフィックスメモリが多いGPU(グラフィックスカード)を選ぶようにしたい。

Procyon Computer Vision Benchmark(Windows ML) Procyon Computer Vision Benchmark(Windows ML)のスコア

思ったよりも健闘していたパフォーマンス 懸念は「メモリの少なさ」

 「普段はWQHD解像度で、たまに4K解像度でもゲームがしたい」という人にとって、GeForce RTX 5070は扱いやすいGPUだ。重量タイトルではネイティブ解像度での4Kゲーミングは厳しめだが、DLSSを使う前提なら重たいゲームタイトルでも十分に遊べる。消費電力や推奨電源容量も(シリーズの中では)控え目なので、組み込めるPCも多いはずだ。

 3DMarkの「Time Spy Extreme」でシステム全体の消費電力を測ってみた所、以下の通りとなった。4070と比べると消費電力は少し大きいが、性能が向上した分と考えれば一応納得はできる。

  • GeForce RTX 5070:アイドル時45W/ピーク時419W
  • GeForce RTX 5070 Ti:アイドル時57W/ピーク時521W
  • GeForce RTX 5080:アイドル時57W/ピーク時589W
  • GeForce RTX 4080:アイドル時59W/ピーク時494W
  • GeForce RTX 4070:アイドル時48W/ピーク時354W
  • GeForce RTX 3080 Ti:アイドル時62W/ピーク時567W
消費電力 消費電力の比較

 重量級のベンチマークテストとして注目されている「モンスターハンターワイルズ ベンチマーク」だが、ウルトラプリセットの4K解像度で試してみたところ、平均フレームレートは以下のようになった。

  • ネイティブ解像度:45.28fps
  • DLSSオン/フレーム生成オフ:61.79fps
  • DLSSオン/フレーム生成オン:79.69fps

 普通のTVで楽しむ分にはネイティブ解像度(超解像なし)でも何とかなりそうなように見えるが、描画するオブジェクトが多くなると若干厳しい面がある。DLSSをオンにしてプレイするとそこそこ快適にプレイできそうだ。

 フレーム生成をオンにするとさらに解像度が改善する……のだが、テスト中の描画に違和感を覚える場面もある。この違和感は本タイトルに限ったことではなく、フレーム生成による補間を行うとよく見られることなので、気になる(なりそうな)人はフレーム生成をオンにした際の描画を見せてもらうといいだろう。

フレーム生成なし DLSSオン/フレーム生成オフで試した結果。フレーム補間なしでも平均60fps出るので、補間による描画の違和感が気になる場合はこの設定でプレイするといいと思う
ネイティブ解像度 ネイティブ解像度でも45.28fpsは出る

 さて問題は価格設定だ。冒頭で触れた通り、想定販売価格は10万8800円からとなる。米国では税別で549ドル(約8万1700円)からなので、ちょっと国内価格は割高なようにも感じる。どうしても「10万円を切ったらいいのになぁ」と考えてしまう。

 その点、ライバルのAMDはコストパフォーマンス(費用対効果)を重視したRadeon RX 9000シリーズ」をぶつけてきた。実際のパフォーマンスと値付け(と供給量)次第だが、もしかするとGeForce RTX 5070/5070 TiのユーザーをRadeon RX 9070/9070 XTが“かっさらう”という展開もあり得る。

 数年ぶりに、GPU回りの戦いが熱くなりそうだ。

機材協力:エヌビディア合同会社/インテル株式会社

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