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捨てたのは“赤ポッチ”だけじゃない? レノボの新フラグシップ「ThinkPad X9 14 Gen 1 Aura Edition」の実像に迫る(5/5 ページ)

» 2025年05月08日 12時00分 公開
[鈴木雅暢ITmedia]
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ローカルAIアプリによる最新のAI体験

 先述の通り、ThinkPad X9 14 Gen 1 Aura EditionはCopilot+ PCに準拠しており、Microsoftが「Windows 11」において提供している最新のローカルAIアプリを利用できる。

 先述のWindows Studioエフェクトにおける追加機能はもちろんだが、他にもスケッチやテキスト情報から画像を生成する「コクリエイター」、再生動画にリアルタイムに翻訳字幕を付けてくれる「ライブキャプション」(現状では字幕は英語のみ)、ファイル/画像/テキストなどPC上で見たものや操作したものを過去にさかのぼって探し出せる「リコール」(プレビュー版)を利用可能だ。

Copilot+ PC Copilot+ PCに準拠している本製品では、追加機能を利用できる

ビジネスを効率化するインテリジェントな機能を実装

 本製品にプリインストールされているユーティリティーアプリ「Lenovo Commertial Vantage」では、デバイスの各種設定が可能だ。マイクやスピーカーのノイズキャンセリングや入力設定(Fnキーの設定など)、バッテリー寿命を延ばすための充電設定などが含まれる。

 このCommertial Vantageでは、踏み込んだインテリジェントな機能を「スマート・モード」として実装している。カメラを活用したのぞき見検出(プライバシーアラート/プライバシーガード)の他、集中力を乱す原因であるSNSへのアクセスを制限したり、カメラに映った姿勢の乱れなどを指摘してアラートを出したりする機能など、さまざま便利な機能が用意されている。

Commertial Vantage ThinkPadではおなじみの「Lenovo Commertial Vantage」もプリインストールされている
マイク マイク設定では、用途に最適なノイズキャンセリング方法が選べる
スマート・モード スマート・モードは、機能の種類別に「シールド」「アテンション」「ウェルネス」などの項目に分かれている
「シールド」の設定画面。カメラでのぞき見を検知し、画面をぼかしたりアラートを発したりする機能が用意されている

パフォーマンスは良好 静粛性も高め

 ここからは、本製品のベンチマークテストの結果を掲載する。特に言及がない限り、Windows 11の電源設定は「最適なパフォーマンス」で計測している。今回は、Core Ultra 7 258V(メモリ32GB)を搭載するASUS JAPAN製の「Vivobook S 14(S5406SA)」を比較対象として用意している。

機材 ベンチマークテストで利用した機材

 CPUコアのパワーがダイレクトに反映される「CINEBENCH 2024」(最低実行時間10分)のスコアを見ると、CPUスコア(マルチスレッド性能)が548ポイント、CPU(シングルコア)が113ポイントだった。Core Ultra 7 258Vを搭載する比較対象に比べると、それぞれ約83%、約93%のスコアだ。

R23 CINEBENCH R23の結果
2024 CINEBENCH 2024の結果
Geekbench Geekbench 6の結果

 一方、PCの総合ベンチマークテスト「PCMark 10」では、Microsoft Officeを利用するApplicationsテストにおいて比較対象の約92%だったが、通常テスト(PCMark 10)のスコアでは、比較対象を上回った。総じて優秀な結果といえるだろう。

PCM10 PCMark 10(通常テスト)の結果
PCM10 PCMark 10 Applicationsの結果

 バッテリー駆動時間は、PCMark 10のバッテリーベンチマークの「Modern Office Battery Life」シナリオでチェックした。ディスプレイの輝度は最大、Windows 11の電源設定は「バランス」、30%以下で省電力モードへ移行する設定で、バッテリー残量100%から残り3%まで12時間37分駆動した。

 輝度の高い有機ELディスプレイを搭載していることを考えると、十分健闘しているといえる。

バッテリー バッテリー駆動時間は、有機ELディスプレイを搭載している割には良好な結果といえる

 動作音だが、ピーク時は「内蔵GPUのモバイルノートPC」としては標準的だ。ゲームやクリエイティブ作業をするとそれなりにしっかりとした音がするが、アイドル時や低負荷時は無音だ。オフィスアプリ利用時も、意識しなければ分からない程度の静かさで利用できる。

 発熱もうまく処理できており、手がよく触れるパームレストに不快な熱が伝わってくることはなかった。

3DMark 3DMarkのスコア比較
FF14 FINAL FANTASY XIV:黄金のレガシーベンチマークのスコア(ノートPC標準/1920×1200ピクセル/フルスクリーン)
サーモ FINAL FANTASY XIV:黄金のレガシーベンチマークの終了直前でFLIR ONEで撮影したサーモグラフィ(室温24.5度)。パームレストは体温前後の温度を保っている

TrackPoint以外にもある“割り切り”をどう考えるか?

 ThinkPad X9 14 Gen 1 Aura Editionは、「TrackPoint非搭載」ということに注目が集まりがちだ。しかし、それ以外の面も細かく見ていくと、ビジネスノートPCとしてはかなり“割り切っている”製品だということも分かる。

 省いているものはセキュリティロックスロットだけではない。USB Standard-A端子や、カメラの物理的なシャッターといったビジネスノートPCの“定番装備”もない。キーボードは従来のThinkPadの打ち心地こそ保っているものの、無視できない仕様変更が複数行われている。画面は非光沢ながらも鮮やかな有機ELディスプレイ“一択”で、液晶ディスプレイのオプションはない。

 ビジネスノートPC(あるいは今までのThinkPad)の常識にとらわれず新しい選択肢を提供したい――その意欲は理解できるが、ここまで割り切るならば、軽さなり見た目なりでもう1つインパクトが欲しかったというのが正直なところだ。

 ただ、今回レビューした構成の直販価格は18万4470円と、スペックやハードウェアの作りを考えるとコストパフォーマンスは悪くない。上記の割り切りが気にならないなら、検討する価値は十分にある。

 なお、ThinkPad X9シリーズには15.3型の「ThinkPad X9 15 Gen 1 Aura Edition」もある。重量が約1.4kgでテンキーレスのキーボードを搭載するなど、ThinkPadシリーズとしては新鮮な仕様だ。このX9シリーズは、15型モデルのほうが本命なのかもしれない。

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