忘れられないのが東日本大震災です。当時は都内に住んでいましたが、地震の後すぐにPCと21型のCintiqなどを全部車に積んで岐阜に疎開しました。今思うと軽率な移動でヒヤヒヤですが、関東圏の不安や不便からくるギスギス感から素早く距離を置けたこと自体は役に立ちました。
そのとき不便に思ったのが巨大なタワー型ケースで、いつか小型化したいなと思ったところに高性能なミニPC「GIGABYTE BRIX」が発売されたので導入しました。今ほど排熱技術が進んでいない時代に、デスクトップPCと同じTDP 65WのCore i7を積んでいたのでかなり尖った仕様です。ベンチマークソフトを動かすとファンの風切り音もすごかったです。
昔もあったとはいえ、最近はPC分野にロマンや趣味性を感じることが多いです。SNSが発達したり、メーカーの情報発信や、ビジュアルや訴求点が華やかなパーツが増えたりしたからかもしれません。
同時に、動画制作の民主化やゲーム用途、4K(3840×2160ピクセル)、高リフレッシュレートのディスプレイなど、主に映像表現のための性能要求が爆増したのも近年の特徴だと思います。
画面表示のために一定時間に計算しなければならないピクセル数は、60Hzが120Hzになれば2倍、フルHDが4Kになれば4倍、その両方が起これば8倍になります。恐ろしい話ですね。
例に漏れず、ワコムの液タブも2017年に4K化されました。
当時は先に書いた「機材の小型化」志向が続いていて、モバイルの第10世代Core i7なら第7世代Coreデスクトップに近い感覚でPhotoshopが動くと見込んで薄型ノートPCを導入しました。USB Type-C接続を推していた前期型Cintiq Pro 16とも相性がよく、持ち運ばなくてはいけないケーブル類も激減して気分上々です。
ところが、結果的にはあまり満足できない環境でした。その時点では自分の感覚が4K液タブのインパクトを十分に消化できておらず、この組み合わせでは制作中のモッサリ感が当たり前に。WQHD(2560×1440ピクセル)に落として使うなどの工夫でしのいでいました(16型の4Kディスプレイは表示が細かすぎるので、ドットバイドットでない内部解像度でもまあまあ普通に見えてしまいます)。
PCの動作が重い? ならば我らがAMDだ。というわけで、ずっと前に「最後になるから……」とか言ってしまったのもなんのその、2017年にRyzenが出てからは確かな性能とリーズナブルに多コアを入手できることで評判を伸ばしていました。
ただ、Ryzen 4000シリーズまではクリエイティブ用途に弱点を抱えていたので、弱点がなくなった世代を待ってRyzen 7 5800Xを導入しました。
その後は、仕事用にはRyzen 7 8700Gで組んだ小型デスクトップPCにして、現在に至ります。
時代と共に移り変わる“性能”の意味 メーカーやアーキテクチャへのこだわりはもはや不要?
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