デバイス開発力を武器に、感動を与える端末を開発したい――シャープの大畠氏:ワイヤレスジャパン2009 キーパーソンインタビュー(2/2 ページ)

» 2009年07月01日 00時10分 公開
[神尾寿,ITmedia]
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ITmedia カメラ機能への注力は今期のトレンドですが、シャープがひと味違うのは、“デバイスから垂直統合で開発する”というところにありそうです。

大畠氏 ええ。同じデバイスからの垂直統合の流れでは、時代の要請でもあるエコロジー分野に注力した「ソーラーハイブリッド」もあります。こちらもソーラーパネルの開発・製造で高い実績を持つ、シャープならではの携帯電話への取り組みといえます。

Photo 太陽光充電に対応するソーラーパネルケータイは2モデルを投入。左はauの「SOLAR PHONE SH002」、右はソフトバンクモバイルの「SOLAR HYBRID 936SH」

 これは過去を振り返っていただいても分かるのですが、こうしたデバイス、要素技術の分野で高い競争力を持つことが、シャープの優位性になっています。例えば、カラー液晶の搭載やカメラの内蔵で他社に先行できたのも、デバイス分野での高い開発力があればこそです。他社よりも一歩先を行くことができる。これがシャープの競争力にとって重要といえるでしょう。

ITmedia しかし、デバイスからの垂直統合ですと、汎用性やコスト競争力の点では不利になりませんか。特にハイエンド市場は逆風が強く吹いているセグメントでもあります。

大畠氏 むろん、そうした一面はあります。特徴ある独自デバイスの採用は特徴商品の開発では優位性となりますが、そこに過度に注力しすぎればコストとのバランスを崩してしまう。また、ハイエンド市場が縮小傾向にあるのも、おっしゃるとおりです。

 しかし、市場全体が「安いモノ」に流れる中でも、お客様に感動を与えられるだけの(高性能・高品質な)「よいモノ」を出していかないと、お客様の携帯電話への関心そのものが今以上に失われてしまいます。実際、(シャープの)夏モデルとして投入しました1000万画素カメラを搭載したハイエンドモデルはお客様の評判もよく、販売面でも手応えを感じています。

 一方で、ミドルクラスでの競争力向上にも今後は力を入れていきます。ここはシャープが不得意な分野でしたが、例えば“ミドルクラスの商品であっても800万画素カメラを搭載する”といったように性能の底上げをします。また、防水やデザイン性など、お客様のスタイルにあった要素や機能も取り入れていきます。

Photo 夏モデルはミッドレンジモデルにも800万画素カメラを搭載した。左からソフトバンクモバイルの「THE PREMIUM WATERPROOF 935SH」「mirumo 934SH」、ドコモの「SH-05A」

ITmedia ミドルクラスでは性能や機能以上に「価格」も重要です。さらにローエンドでは、どれだけコストの安いモデルを投入できるかが重要になります。

大畠氏 それは理解しています。実際、我々シャープはローエンド市場向けのラインアップが弱く、そこは課題であると見ています。

 独自性や先進性と、コストの部分はバランス感をもって考えていく必要があります。私が通信システム事業本部長に就任した際に、「グローバルな視点でコスト力を強化、ユーザーの目線で新商品を創出」というスローガンを掲げました。独自性のあるデバイスを特徴商品に採用しながら、それ以外の部分ではNokiaやSamsungに負けないコストパフォーマンスも実現しなければならない。

ITmedia 重要なのはメリハリといいますか、商品セグメントごとの特徴性とコストとのバランスといえそうですね。

iPhone型モデルを好む層がどれだけ拡大するか

Photo

ITmedia 昨今のエポックメイキングな事例として、Appleの「iPhone OS戦略」があります。これまでの携帯電話にとってバージョンアップは“不具合の修正”にとどまっていましたが、AppleはOSのバージョンアップで新機能の提供まで積極的に行い、ハードウェアを買い換えなくても“ソフトウェアで進化していく”というアプローチを打ち出している。このようなAppleの戦略をどのように見ていますか。

大畠氏 画期的ですよね。AppleのiPhoneのように「ソフトウェア中心で進化していく」という流れは、今後明らかに出てくるでしょう。そういう意味では、(携帯電話ビジネスに)2つの潮流が生まれ始めているのかもしれません。

 しかし、ここで忘れてはならないのは、従来型のハードウェアとソフトウェアが一体的に進化していく形にも、多くのお客様のニーズがあるということです。iPhoneのようなソフトウェア中心で進化するという世界観を好む人が、現時点で(携帯電話ユーザー)全体の10〜20%くらいはいるのかどうか。一方で、全体の80%くらいのお客様は「電話機としての進化」を求めているわけです。我々が今後注視していかなければならないのは、この(iPhone型モデルを好む)10%くらいのユーザー層が、どこまで拡大するかという点でしょう。

ITmedia 2008年から今年にかけて、携帯電話業界は大きな転換期に入っています。そのような中で、未来から振り返ったとき、2009年はどのような位置づけとなるのでしょうか。

大畠氏 いろいろな意味で、2009年はターニングポイントになるでしょう。

 1つは販売方式の変化による市場環境の激変に、メーカーがどれだけ適応できるのか。それが試される1年になります。V字回復に向けて打った施策が奏功するかどうかが重要になるでしょう。

 また、2010年に向けては、(LTEなど)新たなインフラ環境への適応を進めなければなりません。端末も、その時代に向けて進化していく必要があります。

 2009年は確かに厳しい年になるでしょうが、メーカーは歯を食いしばって2010年以降の成長に向けて準備をしていかなければなりません。

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