インタビュー
» 2009年10月27日 15時53分 公開

「使ってもらえる」UIが生産性を向上する――iPhone法人利用のメリットとは(前編)(2/2 ページ)

[日高彰,ITmedia]
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 この点について中野氏は「モバイル機器の導入によって生産性向上を実現するためには、ユーザーに使ってもらえなければ意味がありません。そのときにiPhoneのユーザーインタフェースは大きな優位性になると考えています。例えば、同じ10通のメールに目を通すのにかかる時間を、従来の携帯電話でWebメールを使ったときとiPhoneのネイティブのメール機能を使ったときとで比べると、iPhoneのほうが圧倒的に速い」と話す。

 携帯電話で会社のメールを見られるようにするシステムの多くは、携帯メールへの転送やWebメールによってそれを実現している。しかし、従来の携帯電話への転送は文字数や添付ファイルの容量が限られているし、Webメールは目的のメールを表示するまでに時間がかかる。そうしたサービスは、“日常的にその仕組みを使ってメールを読むため”というよりも、“外出中にメールを確認しなければいけない事態が発生したときに備えて”導入するという意味合いが強いだろう。

 これがiPhoneなら、ホーム画面の「メール」アイコンに触れるだけで素早くメールのリストにアクセスでき、未読が大量にたまっていても次々と流し読みしていくことが可能だ。“携帯でメールを見る”という目的は同じながら、達成までの時間が短いため、外出中の緊急時に限らず、出勤途中や移動中、会議のメンバーがそろうまでの時間、あるいは社内でエレベーターを待っているときなど、コマ切れの時間にも積極的にメールチェックをする気になるというわけだ。

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 「最初は慣れないタッチ操作に戸惑われることもあるようですが、とっかかりの部分を越えると『iPhoneのほうが圧倒的に使いやすい』というお声をいただくことが多い」(杉田氏)ほか、従来の携帯電話に比べて単純に操作するのが楽しいので、ついつい手持ちぶさたに取り出して使ってしまうといった現象も起きているという。会社から強制されて渋々使うのではなく、使いやすさからユーザーが自主的に利用し、結果として業務の効率が上がるという正の連鎖が発生していることになる。

 非効率な帰社の削減や、コマ切れ時間の有効活用によって、具体的にどれだけの生産性向上効果が得られるかは企業によってまちまちだが、ソフトバンクモバイル社内で調査したところ、平均して1日あたり約50分の労働時間削減効果があったという。iPhoneは通常、端末代と通信料で1台あたり月7000〜8000円程度の費用を要するが、本当に従業員1人あたりの残業代を月に16時間程度減らせるとすれば、導入コストを十分ペイして余りあるということになる。

 また、このようにサーバと連携する高度な使い方に限らず、PC用サイトが見やすいので商談直前に相手企業の最新情報を調べられるとか、マップ機能が優れているので外出前に地図をプリントアウトする手間がなくなるといった、純粋に大画面の高機能携帯電話としても好評を得られているようだ。

管理・セキュリティ機能の相次ぐ追加で法人導入の環境が整う

 iPhoneによって社外から利用できる情報が格段に増えるということは、一方でそれだけ情報漏えいのリスクが高まることを意味する。特に情報の管理が厳しい研究開発部門などでは、カメラを搭載した携帯機器の使用が禁止されていることが多く、iPhoneを使いたくてもセキュリティポリシー上使えないケースがある。あるいは、そもそも就業時間中にYouTubeの視聴やゲームなどをされたら、生産性が向上するどころか大きく下がってしまうと考える管理者もいるだろう。

 しかし、企業がiPhoneを導入に二の足を踏む原因となっていたこのような問題は、OSのバージョンアップによって着実に解決されつつある。

 2008年7月のiPhone 3G発売に合わせてリリースされたiPhone OS 2.0では、リモートワイプ、Cisco IPSec VPN、電子証明書による認証といった機能が追加された。これらのサポートによって、社外からより安全に社内の情報にアクセス可能となったほか、外出中にiPhoneを紛失してしまったような場合も、遠隔操作でデータを消去できるようになった。

 また、管理者が構成ユーティリティを利用してプロファイルを作成すれば、社内の多数のiPhoneに対してネットワーク設定やパスワードポリシーなどをまとめて配布できるようになったのも大きい。業務用に特別な設定を行わなければならない携帯電話を数十台、数百台といった規模で導入する場合、従来は一台一台手作業で設定を行うか、販売代理店などが提供するキッティングサービスを利用する必要があり、手間や費用がかかった。それがiPhoneならば、プロファイルを社内のWebサーバーなどに置いておき、ユーザーが初回利用時にSafariを立ち上げてプロファイルにアクセスするだけで設定が完了する、といった展開が可能になる。

 また、iPhone OS 3.0にあわせて登場した新バージョンの構成ユーティリティでは、Safari、YouTube、アプリのインストール、カメラといった個別の機能のオン/オフもプロファイルで管理可能となった。(従来も機能制限自体はできたが、iPhone本体の設定画面で操作する必要があった)。ユーザーによるプロファイル削除は禁止できるので、従業員が本来の目的外にiPhoneを使用するのを防ぐことが可能だ。

 さらに、iPhone 3GSはハードウェアによる暗号化機能を搭載しており、端末内のデータを常に暗号化した状態にしておくことが可能だ。「ノートPCやUSBメモリーなど、社外に持ち出す記録媒体のデータは必ず暗号化する」といったポリシーを設けている企業の場合、iPhone 3Gでは条件をクリアすることができなかったが、iPhone 3GSならそのようなポリシーにも整合する。

 PCに近い振る舞いを実現するiPhoneゆえに、導入にあたってはノートPC並みの厳しいセキュリティレベルを求められるが、バージョンアップを重ねながらそれに応えてきた形だ。金融業界など特に厳しいポリシーで情報システムを運用している企業に対しては、System Centerのような管理ソリューションが用意されているWindows Mobile端末に分があることもあるが、それ以外の多くの企業に対しては、iPhone OS 3.0とiPhone 3GSの登場で「より提案しやすくなったのを実感している」(中野氏)という。

後編に続く

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