「最新機能を持つモバイル端末を日常的に活用し、モバイルネット社会を体感できる環境を提供することが重要だと考えた」――。青山学院大学で社会情報学部長を務める魚住清彦氏は、学部の学生と教員550人に「iPhone 3G」を配布すると決めたいきさつを、こう説明する。
そこにあるのは、携帯電話の普及がコミュニケーションのあり方を大きく変えたように、モバイルインターネットマシンとして多彩な機能を備えるiPhone 3Gが、ライフスタイルやコミュニケーションにさらなる変化をもたらすのではないかという仮説だ。
青山学院大学の伊藤定良学長は、同じ学部に在籍する500人超の学生がPhone 3Gを日常的に使うのは、「大学の中に1つのモバイル社会を実現すること」だと説明。1つのコミュニティの中でiPhone 3Gがどのように使われるのかを検証するとともに、これからのモバイルインターネット社会を担う人材を育成するのが、iPhone一括導入の狙いだと話す。
社会情報学部は、文理の枠を超えた知識と基礎力を身につけ、社会や組織の問題を発見し解決できる人材育成を目指すことをコンセプトに、2008年に開設された新しい学部。「数理的素養」「コミュニケーション能力」「論理的思考」「情報の高度な活用」の4つの力をバランスよく育てるためのカリキュラムが組まれており、魚住氏はiPhone 3Gが「目指す4つの力を習得するために役立つのでは」と期待を寄せる。
iPhone 3Gの活用環境について大学側が用意するのは、大学標準のメールシステムやグループウェアとの連携による授業の資料・教材の配布、iPhoneアプリを利用した出席管理、ミニテスト、授業の動画配信など。6月から試験運用を始め、後期が始まる9月からの正式運用を目指すという。
社会情報学部ではグループワークを多用する授業も多く、夜間の一定時間を除いて定額で音声通話を利用できるiPhoneの存在が「学生同士のコミュニケーションの活性化につながるのではないか」と、魚住氏。同学部はまた、ゼミや研究活動を通じて地域社会に貢献することを目指しており、iPhoneをキャンパスがある相模原市の活性化にも役立てたい考えだ。
ソフトバンクテレコムの代表取締役副社長を務める宮内謙氏は「iPhoneは、これからのモバイルインターネットの原型を示していると思う」と話し、UIやコンテンツ配信の仕組みでモバイル市場に革命を起こしたiPhoneが、どんな教育効果をもたらすのかに期待を寄せる。「これ(iPhone 3Gの一括導入)はまさに、モバイルインターネット教育革命だと思っている」(宮内氏)
モバイルPCやWindows Mobile端末、Androidケータイも検討したが……
学部への一括導入を検討する中では、モバイルPCやWindows Mobile端末、Android端末など、さまざまなデバイスが候補に挙がったという。
まず、学生が利用するにあたってのなじみのよさや、社会における今後のトレンドを考えたときに、「スマートフォン型の教育をしておくことのほうが重要」という判断から、候補がスマートフォンに絞られ、検討時にAndroid端末がまだリリースされていなかったことから、候補から外れた。
そして「全世界での広がり具合や、App Storeを通じたビジネスチャンスなどを考慮した結果、iPhone 3Gの採用を決めた」と、青山学院大学 社会情報学部 社会情報学科 准教授の宮治裕氏は説明する。「社会情報学部は社会を重視しているので、そういった意味での広がりも考えて、iPhoneの導入を決めた」(宮治氏)
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