広告も位置情報連携の時代へ――2010年の位置情報サービスはどうなる

» 2010年02月01日 14時08分 公開
[山田祐介,ITmedia]

 1月8日、位置情報ゲーム「コロニーな生活☆PLUS」を運営するコロプラが、ゲームと連動した来店・販売促進サービスの提携先を33店舗に伸ばしたと発表した。月間9億4000万ページビューを稼ぎ、75万人のユーザーを抱えるコロニーな生活☆PLUS――通称「コロプラ」は、2009年の1年間でユーザー数が10倍になるほどの急成長を遂げ、提携店舗への来店・購買客数は月間で合計1万人にのぼるという。

 「位置情報の“エンタメ用途”が急速に広まったとことが、2009年の大きなトピック」――そう語るのは、位置情報と連動した広告配信サービス「アドローカル」を展開するシリウステクノロジーズの関治之氏。現在、同社のアドローカルを導入している媒体社は100を超え、先述したコロプラも導入企業の1つ。さらに、同社は位置情報サービスの研究所「シリウスラボ」を持ち、所長を務める関氏を筆頭にAPIの提供や、有志の勉強会「ジオメディアサミット」の開催などに取り組んでいる。

 事業を通じて位置情報サービスの動向を見続けてきた同社には、ナビゲーション用途にとどまらず多様化する“ジオメディア”の今、これからがどう映っているのか。関氏、さらにアドローカル事業部メディアアライアンスグループのマネージャー・三好雅士氏に聞いた。

位置情報は「便利」から「楽しい」「つながり」へ――

photo アドローカル事業部メディアアライアンスグループ マネージャーの三好氏

 同社のアドローカルは、GPSや基地局情報、地図情報などを基に、ユーザーの現在地や興味のある場所に関連した広告を表示するサービスであり、2005年にサービスインした。DeNAの「モバゲータウン」やカカクコムの「食べログ」など、位置情報を活用したメディアへの導入実績を増やしてきたが、特に2009年はこうした媒体社の広がりが加速したと三好氏は話す。

 「2009年以前は、GPSの活用は新規事業に携わる方や、業界のトレンドをウォッチしている方にとってホットな話題でした。我々も単なる意見交換の場に呼ばれることが多かったのですが、2009年に入ると状況が変わりました。位置情報を活用したコンテンツ企画が盛んになり、ジオメディアの認知度が高まってきたと感じています」(三好氏)


photo シリウスラボ 所長の関氏

 こうした国内におけるジオメディアの盛り上がりは、コロプラや、マピオンの「ケータイ国盗り合戦」といった位置情報ゲームが牽引した。ケータイのGPSを使ったゲーム自体は古くから存在するが、端末のGPSの普及率が上がったことに加え、企業が運営や宣伝に本腰を入れたことがヒットの要因と関氏は分析する。コロプラを例に挙げれば「ゲームとしての完成度がそもそも高く、移動を“楽しいこと”に変え、それを消費と結びつけたサービス」に成長したことで、熱狂的なファンを生みだしたと関氏はみる。

 位置情報ゲームは現在、ビジネスマンやOL、タクシードライバー、長距離トラックの運転手など、ITへの関心度に関わらず、幅広い層に楽しまれているという。こうした層は広告に対しても「反応率が高い」というのが関氏の感想だ。一方、ITトレンドに敏感なユーザーは「セカイカメラ」をはじめとするモバイルARのサービスに関心を示した。そしてどちらのジャンルにおいても、2010年は“ロケーション+キャンペーン”というスタイルのプロモーションが活発になると関氏は考えている。

 さらに関氏は、2010年における“ソーシャル+位置情報”のサービスに大きな関心を寄せる。位置連動型のSNSとしては「foursquare」など海外のサービスに対する注目が高まっているが、日本のケータイ業界でもmixiモバイルやモバゲータウンといったサービス内で、ロケーションを活用したソーシャルアプリが拡大すると関氏は予想する。同社はこうした状況もかんがみて、ソーシャルデータなど位置情報以外の要素も加味して広告を配信する、新たなアドローカルのプラットフォームを2010年の春夏を目処に導入する予定だという。

2010年は“広告主への認知”を広げる年

 このように媒体が出そろってきた一方で、広告の出稿主に対する認知は「まだまだこれから」と三好氏は語る。位置連動型広告は、これまでインターネットを活用してこなかったようなリアル店舗との親和性が高いだけに、こうした顧客に媒体の認知を広げていくことが2010年の課題だと三好氏は感じている。

photophoto アドローカルのGPS位置ターゲティングの仕組み(写真=左)と、配信エリアの説明(写真=右)

 アドローカルでは現在、歯科医院や学校、語学スクールなど、場所に根ざしてビジネスを展開している顧客が「電柱広告を出すような感覚」で広告を出稿しているという。検索連動型広告と同じように出稿自体に費用はかからず、クリックに対し料金が発生する仕組みだ。エリア内で“クリック単価が高い”広告が優先的に表示される。

photo GPSの情報発信は渋谷や原宿で特に頻繁に行われている

 多くの地域は1クリック30〜50円といった価格帯が平均的で、人気のスポットでは100〜200円ほどに高騰している。リアルな不動産価値と呼応する面もあり、コンシューマー、特に若者の多い渋谷や原宿といったエリアはクリック単価が上昇する傾向だ。「平均的なCTR(クリック率)が高いサービスに育ちつつあり、各方面でご好評いただけていると感じています」と、三好氏も位置マッチの広告効果に手応えを感じている。


 キーワードを入力することで広告が表示される検索連動型広告は「ユーザーの顕在ニーズに対して広告を配信し、だからこそ強みのあるサービス」(三好氏)だ。一方で位置連動型広告は、顕在化していないユーザーニーズに対して“物理的に距離が近い”というアドバンテージをもって商品を訴求できる。また位置連動型広告は、単なる広告ではなく“街の情報”としてユーザーが楽しめるコンテンツにもなるはずで、こうした魅力を生かした媒体のデザインも重要になりそうだ。

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