ARで「人間に回帰する」――宇宙開発委員会 池上氏と牧野弁護士AR Commonsイベントリポート

» 2010年04月16日 11時01分 公開
[山田祐介,ITmedia]

 ARの推進団体であるAR Commonsが開催した討論会「つるつるの未来とでこぼこの現実」では、宇宙開発委員会・委員長の池上徹彦氏と牧野二郎弁護士が“日本のイノベーション”という、ARに限らない広いテーマで意見を交わした。その内容は別記事に書いたが、対談中には“ARと地方”に関する興味深いやりとりもあったので紹介する。


photo 池上徹彦氏

池上氏 私は地方に戻りたいと思う人が多い国ほど発展すると思っていんです。日本では、みんな東京に集まってしまう。北欧では、みんな自分の故郷に住みたいが金がないということで、大学と産業が一緒になって、海外市場を視野にベンチャーを始めるというケースがある。

牧野氏 地方を盛り上げるという点では、私はARに大きな可能性があると思っています。NHKの大河ドラマなどで地方が取り上げられると、その地域の産業が活性化しますよね。東京中心主義の中で埋もれがちですが、各地に豊かな歴史や文化がある。こうした魅力にARは強くフォーカスを当てられると考えています。端末をかざすと、その場所の歴史や、他の歴史とのつながりが分かったり、といった具合です。

池上氏 確かにそうですね。しかもARはその場所に行かなければ使えませんからね。


photo 牧野二郎氏

牧野氏 そうなんです。そして、その場所に訪れれば、動画が流れたりといった具合に、さまざまな情報が重ね合わされる。それによって、子供たちが見事に自分の街の歴史を理解できるのではないかと想像しています。自分の親が住んできた土地に誇りを持つことにもつながるかもしれない。非常に面白いと思ってます。

 私たちはインターネットによって、例えばアメリカの最高裁の判例が1週間後に日本でも閲覧できるといったグローバルブレインの世界を体験したのですが、今後はそうした知の集積が平面から立体になり、時間軸を自由にコントロールできるようになると想像しています。その上で、ARは時間軸をコントロールするよいツールになり得る。皇居に行くと、ARで江戸城が現れて、建造から炎上する場面まで見ることができるわけです。

池上氏 私はARは「人間に回帰する」ということなのだと感じています。新しいルネサンスなのかもしれません。足で歩いて、体を動かして体験するという生身の人間の感覚に、もう一度戻っている。バーチャルリアリティーもよいのですが、その手前があってもいいのだと思います。


 岐阜県では、日本のARサービスの代表格である「セカイカメラ」のエアタグ(セカイカメラで閲覧できるコンテンツ)を県内全市町村で合計3711件配置し、観光客向けのイベントなどに活用しはじめている。こうした“リアルロケーションとITの連携サービス”はARに限らず、「コロニーな生活☆PLUS」や「ケータイ国盗り合戦」といった位置情報ゲーム、「ランブリン」や「Google Buzz」といったソーシャルサービスなどでも実現しており、池上氏のいう「人間に回帰」するITサービスは今後も広がりをみせていくはずだ。

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