2011年は「大変化の年」!? 携帯3キャリアのスマートフォン戦略を読み解く(中編)神尾寿のMobile+Views(1/2 ページ)

» 2010年11月24日 10時00分 公開
[神尾寿,ITmedia]

 わずか5分――。

 KDDIは今回の冬春商戦ラインアップの発表会で、たった5分しかフィーチャーフォン(従来型のケータイ)の説明に時間を割かなかった。

 端末数が少なかったわけではない。KDDIは冬春商戦に向けて14機種のフィーチャーフォンを用意しており、CDMA2000 1X EV-DOマルチキャリア方式の通信をサポートしたWIN HIGH SPEED対応端末や、auの看板商品ともいえるG'zOneシリーズの最新モデル「G'zOne TYPE-X」、デザイン重視のiidaブランドには「X-RAY」と「G11」が投入された。フィーチャーフォンのラインアップがけっして手薄だったわけではない。今回の冬春商戦において、3キャリアでもっとも独自性と魅力のあるフィーチャーフォンのラインアップを用意していた。auケータイの集大成ともいえる内容だった。

 それでも、たったの5分しかフィーチャーフォンのために時間を割かなかったのである。

 KDDIが「本気のau」(KDDI 代表取締役執行役員専務 田中孝司氏)として打ち出してきたのが、同社のスマートフォンラインアップであるIS seriesだ。田中専務はこれまでのKDDIがスマートフォン分野への取り組みで遅れていたことを認めた上で、「スマートフォンでの遅れを取り戻す」と明言した。

 KDDIのスマートフォン戦略はどのようなものか。そして、ソフトバンクモバイルやドコモに対する出遅れを取り戻し、独自の地歩を確立できるのか。中編ではそれを見ていきたい。

“iPhone不在”に真剣に取り組んだKDDI

Photo KDDI 代表取締役執行役員専務の田中孝司氏

 「これまでのスマートフォンには、ケータイの機能を備えたものがない」(田中専務)

 今回の冬春商戦向けスマートフォンにおいて、KDDIがこだわったのがまさに“ここ”だ。

 周知のとおり同社は、スマートフォンへの取り組みで出遅れた。その理由の1つは、KDDIの旧経営陣がiPhoneの国内市場での影響力を過小評価し、「スマートフォンは時期尚早」(KDDI 代表取締役社長兼会長の小野寺正氏)と変化のスピードを見誤ったからだ。KDDIは“ケータイらしい”端末やサービスで一時業界をリードし、その後、苦労して独自プラットフォーム「KCP」「KCP+」を立ち上げるなどしたため、フィーチャーフォンに過度に肩入れしていたことは否めない。またMNP(番号ポータビリティ)導入前後から目先の営業数字にもとらわれすぎた。経営陣を中心に、モバイル業界全体の“潮目を読む眼”が曇っていたのだ。

 しかし、KDDIのスマートフォン投入が遅れた理由は、それだけではなかった。彼らはスマートフォンに対する初期判断が誤っていたことは自覚した上で、「iPhoneの二番煎じ」となるようなスマートフォンばかりを調達し、主軸に据えても意味がないと考えた。そこであえて時間をかけて、Androidの拡張性の高さを背景に、“スマートフォンらしさとケータイらしさの融合”に取り組んだ。また、auらしい先進性と使いやすさの両立にも挑戦した。これがIS seriesなのである。

 KDDIがIS seriesで目指しているのは、一部のハイエンドユーザーではなく、多くの人に使ってもらえるスマートフォンを用意することだ。1台持ち、すなわち“普通のケータイユーザーが機種変更できるスマートフォン”を作るべく、あえて時間がかかる道を選んだのである。しかし、なぜKDDIは時間と金のかかるAndroidスマートフォンの作り込みにこだわったのだろうか。

 その答えは、KDDIにiPhoneがなかったからである。iPhoneはとても優れたコンシューマー向け製品であるだけでなく、独自の世界観と、コンテンツやサービスのエコシステムを確立している。しかもその完成度は高く、その総合力が“普通のケータイユーザー”をも惹きつけている。KDDIは、標準的なAndroidを搭載しただけの端末ラインアップでは、スマートフォン好きのハイエンドユーザーや一部のガジェットマニア以外は満足させられないと考えた。そこで日本の一般ユーザーにも使いやすいAndroidスマートフォンを自らデザインする必要があったのである。

 今回のIS series全体を見渡すと、スマートフォン分野で当初出遅れたKDDIが、真剣に“日本市場とiPhone”を研究したことが分かる。iPhoneがメインストリーム(主流市場)に急速に浸透していることを認めた上で、自らのAndroid端末もそこで勝負できるように腐心しているのだ。今回のISシリーズは、フィーチャーフォンにこだわりすぎた過去への反省と、スマートフォンを一般市場に普及させようという「auの本気」を感じる内容になっている。

Photo 日本の一般ユーザーにも使いやすいAndroidスマートフォンを自らデザインする必要があったKDDIは、“普通のケータイユーザーが機種変更できるスマートフォン”を作るべく、ケータイの機能を持つスマートフォンを手がけた

個々の性能や先進性より、総合的な心地よさに注目

 さて、それではIS series各機を見てみよう。

Photo IS seriesはシャープ製、富士通東芝モバイルコミュニケーションズ製、Pantech製の4機種

 冬春商戦のIS seriesは、一足先に発表されたシャープ製の「IS03」に加えて、富士通東芝モバイルコミュニケーションズ製の「REGZA Phone IS04」、シャープ製の「IS05」、Pantech製の「SIRIUSα IS06」の4機種で構成される。前述のとおりIS seriesは、iPhoneと同じく、一般ユーザー層にもきちんと受け入れられるスマートフォンを目指し、KDDIも企画や開発に積極的に関わっている。これにより他キャリア向けのAndroidスマートフォンにはない商品力を備えている。とりわけIS03・IS04・IS05の3機種は、KDDIが日本市場向けにデザインし、独自性を打ち出したものだ。

 では、そのIS seriesの独自性とは何か。それは個々の性能・機能や際だった先進性よりも、「ユーザー体験」を重視していることだ。誤解を恐れずにいえば、今回のIS seriesには他キャリア向けのスマートフォンを圧倒するような高性能・多機能モデルは存在しない。単純なスペックで比較したら、ドコモの「GALAXY S」やソフトバンクモバイルの「GALAPAGOS 003SH」「Desire HD」を大きく上回るモデルは、今回のIS seriesの中には「ない」と言ってもいいだろう。しかし、Ocean Observationsと共同開発したUI(ユーザーインタフェース)や、モリサワフォントによる美しい日本語環境は、実際に触るととても心地よい。Android搭載スマートフォンにありがちな、キビキビしているが「機械的で不自然な感じ」はほとんどない。機械としての性能ではなく、体感的な気持ちよさ、道具としての完成度を求めているのだ。理性ではなく、感性でそのよさが伝わってくるのである。

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