AKBのようにゲームは“みんなのもの”になる――グリー田中社長のゲーム論

» 2011年09月08日 18時45分 公開
[山田祐介,ITmedia]
photo グリーの田中良和代表取締役社長

 9月8日、ゲーム開発者向けイベント「CEDEC 2011」において「世界の心をつかむスマートフォン時代のゲームとは」と題したパネルディスカッションが開催された。登壇者の1人であるグリーの田中良和代表取締役社長は、ゲームジャーナリストの新清士氏の質問に答える形で、OpenFeintの買収に対する考えやソーシャルゲームがもたらすゲーム産業の変化について語った。

――OpenFeintの買収について聞きたい(質問は新氏)

 ソーシャルゲームはコンソールゲームと違って販路がまだ流動的で、自分たち販路を作っていける。どんなに面白いゲームを作っても、ユーザーが集まらなければどうしようもない。FacebookやTwitterのすごさは「ユーザーがたくさんいる」という点につきる。プログラミングも重要だが、ユーザーを集めることが実質的な焦点。世界で最大級のユーザーがいるOpenFeintを統合し、これから中身を日本ライクにし、日本での成功を海外に輸出していく。

――OpenFeintは課金決済システムが弱いが、どうしていくのか

 課金システムやソーシャル要素は後からどんどん作っていける。重要なのは、OpenFeintを統合したことで、「全世界で何がどう違うのか」がイメージでなく数値で分かるようになったことだ。文化や流行の違いをパーセンテージでKPI化して把握できる。大きなバリューだと思う。

――海外からどんな学びがあるのか

 さまざまな海外ソーシャルゲーム企業と交流する中で、日本のソーシャルゲームは海外に比べゲームモデルが圧倒的に洗練されていると実感した。それはARPUの高さが証明している。課金システムや通信速度の違いもあるとは思うが、何よりもゲームデザインが違う。アクティビティを高めるだけでない、収益化と再投資を繰り返せるエコシステムがある。今求められているのは、これを国外に輸出することだ。

――家庭用ゲーム機のユーザーは男性が多かったが、グリーでは男女比がほぼ半々。ソーシャルゲームが登場したことで、ゲーム市場は質的な変化を迎えていると感じるが

 「超ゲーム少年」かつ「インターネットヘビーユーザー」だった自分としては、いわば「AKBは昔俺達のものだったのに今はみんなのもの」という感覚だ。AKB(AKB48)がマニアだけに愛された時代は終わってしまった。ゲームやインターネットも同じように大衆化する時代に入った。スマートフォン、モバイルは誰もが持つもの。ビジネスの上では誰もが使うことを念頭に置き、ハードルを下げることを念頭に置いてきた。

 大衆化において自分が大きいと考えるのは、データに基づいてゲームを作れるという点。「こういうものが受ける」という感覚をデータで立証できるのがソーシャルゲームの新しいところだ。ゲームを作る上で数式化できる部分は、半分以上あると考えている。こうしたアプローチが結果として裾野を広げている。

 また、何よりも「ゲーム機を買わなくていい」という点でソーシャルゲームはハードルが低い。さらに、ハードルを下げる上でソーシャルゲームは3つの革命を起こしている。1つ目は常時オンラインという点。そしてここからが重要だが、2つ目はダウンロード販売という、店に行く必要のない手軽な流通を可能にした点だ。3つ目は販売手法の革命。まとめ売りではなく、バラ売りが可能になった。ソーシャルゲームはいわば入場料のないディズニーランドであり、アトラクション単位でお金を払えば良いという手軽さがある。

――そうした変化は世界規模で起きている。インターネットでは1社が強くなりやすいが、グリーはどう勝ち抜いていくのか

 まず、自分たちのようなことをしている企業は実はまだどこにもない(※田中氏は自己紹介時に、グリーがSNS/ゲームプラットフォーム/自社開発ゲームを一手にモバイル向けに提供していることや、世界各地域に拠点を設けていることを特徴として説明していた)。


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 3年後は違うだろうが、今はまだいない。今していることを、グローバルレベルでちゃんとオペレーションしていければいい。ただ、それは簡単ではない。例えば、通信キャリアと連携するだけでも世界規模では大変なこと。調べたところ、世界には500ぐらいの通信キャリアがある。1人で回ったら500日かかる(笑)。さらにいえば、キャリアとの連携は数ある施策の一端にすぎず、日本でやっていることを世界でやろうと思えば、とてつもないリソースが必要となる。難しいがゆえに、ちゃんとできればいいと考えている。

 今起きているのはゲーム人口の拡大だ。インドでタタ・モーターズが超低価格の車を出したことが話題になったが、100万円の車は買えないが10万円だったら買えるという人が世界に何億人といるだろう。ゲームにおいても、2万円のハードが買えない人がごまんといる。ソーシャルゲームでそうした障壁がなくなれば、市場は数億人単位から数十億人単位、全く新しい次元に入る。ゲームは世界最大のエンターテインメント産業だし、これがもう一段、爆発的にヒットすれば、とんでもないことが起こるはずだ。

――家庭ゲーム産業はここ数年間横ばいか若干縮小しているが、全世界のゲームプレイ人口は増えている。スマートフォンが普及しきるまでマーケットは広がると思うが、グリーの最終的なユーザー数の目標は?

 まず、自分はゲームも大好きだが、コンピューター、インターネット産業の人間だ。この業界で今後10年に起きることは、スマートフォンが普及し、スマートフォンのコンピューターアーキテクチャが家電やゲーム、PCといったマーケットを統合していくことだ。そこにはとてつもない量産効果があり、端末の低価格化が進む。誰もが“タダみたいなコンピューター”を持つ世界が到来し、大きなパラダイムシフトが起こるだろう。

 その流れに乗る入り口として、今のスマートフォンビジネスがある。そして、ソーシャルネットワークという業態が新しいコンピューターのアーキテクチャを切り開く一歩と思っている。ユーザー数や売上という視点以上に、全く新しい人類の進化に立ち会う感覚でやっている。

――モバイルデバイスの処理能力の向上によって、作るべきゲームはどう変わっていくか?

 リッチ化は進むだろうが、ソーシャルゲームの本質はグラフィックではない。インターネットの世界ではコミュニケーションこそもっとも重要なファクターだ。そして、データマイニングによりサービスは作られる。通信回線速度やCPUの処理速度が上がることで、Webは見るものから操作するものに変わってきた。10年前と今とでは、Web閲覧者におけるクリック数は10倍ぐらい増えているだろう。クリックによりデータが取れ、データマイニングが可能になった。だからデータに基づくものづくりが可能になった。

 ソーシャルゲーム業界でも同じことが言える。世界にゲームを提供する上で、世界中のユーザーの違いを理解しながら、KPIをチューニングしてターゲットに近づき続けられるというオペレーションそのものが、最大のものづくりだと思っている。

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