ネットで知った商品、購入はリアル店舗で――KDDIが米企業がO2O事業の実証実験

» 2011年10月14日 15時59分 公開
[佐々木千之,ITmedia]

 KDDIは10月13日、米RetailigenceとOnline to Offline(O2O)プラットフォーム構築で業務提携し、10月下旬から良品計画やリビングスタイルなど7社と連携した実証実験を開始すると発表した。O2OはWebサイトやスマートフォンアプリなどオンライン情報にアクセスした消費者に、実店舗への誘導や商品購入を促し収益につなげるビジネスモデルを指す。

 Retailigenceが開発したO2Oプラットフォームは、小売店舗が持つ商品情報(商品、価格、在庫など)を統合し、スマートフォンアプリやオンライン広告、オンラインカタログ、Webサイト、SNSなどのアプリケーション事業者に対して無償提供する仕組み。米国では8万の実店舗と700万の商品情報をこのプラットフォームに載せているという。

 小売店側はこのプラットフォームを利用することで、自社の商品情報をアプリケーション事業者に効率よく提供できるようになり、アプリケーション事業者のサービスを通じて幅広いユーザー層の開拓が期待できる。O2Oプラットフォームからはアプリケーションのユーザー動向を得ることができ、それをプロモーション活動に生かすなどの顧客誘導につなげられる。

 他方、アプリケーション事業者はO2Oプラットフォームからの商品情報を利用することでアプリに付加価値をつけられる。消費者・顧客はSNSやWebをはじめとした多くのアプリケーションを通じて商品情報へアクセスでき、実店舗とアプリケーション事業者との連携によりポイント獲得や商品割引などの特典が期待できるとしている。

 今回の実証実験でKDDIは、このO2Oプラットフォームをデバイスからネットワーク、アプリケーションまでを一元的に提供する「KDDI MULTI CLOUD」コンセプトを生かした流通業界向けクラウド基盤上に構築する。Retailigenceは商品情報と顧客を結びつけるWebツールを提供する。実証実験では参加各社の専用アプリケーションを連携させた実験を行う予定で、KDDIとRetailigence両社は実験結果に基づいた新機能など、O2Oプラットフォームの商用化検討を進めていくという。

Photo Retailigenceのジェレミー・ガイガーCEO(左)とKDDI サービス企画本部の小林昌宏氏(右)

 記者発表会で説明したRetailigenceのジェレミー・ガイガーCEOによれば、米消費者はモバイルアプリケーションで店舗や商品を探す傾向が強まっており、小売店舗の売り上げの40%は消費者がオンラインで探しオフライン(実店舗)で購入したものという。KDDIサービス企画本部の小林昌宏氏によると、この傾向は日本ではさらに顕著で、実店舗での購入にあたって半分以上の消費者はオンライン情報を確認しているという。オンライン情報を確認した消費者のうち9割超は友人・知人の推薦や評価などを参考にしており、7割は商品のレビューページを見ているという消費行動調査結果も紹介した。

 KDDIでは、ネットで商品情報を得た消費者を、効率よく快適に実店舗へと誘導するビジネスを、プラットフォームとして提供できるのではないかと考えていたが、Retailigenceを知り、コンタクトしたことが今回の業務提携につながったという。

 「このプラットフォームが完璧だとは考えていないが、机上で議論しても前に進まない。まず2つの実証実験プロジェクトを実施することで、新しい消費スタイルを日本の新しい社会基盤としてどこまで構築できるか知見を持ちたいと考えた」「(KDDIは)垂直にビジネスをしていることで消費者の行動履歴を得やすい立場にある。その活用方法についてはこれまで悩んできたが、その一部をこのようなビジネスに使ってもらい、流通や店舗で販売されている方や消費者に快適な新しい消費というものを提供できればいい」(小林氏)

Photo 小林氏が示した将来の展開。決済手段も提供して消費行動のエコシステムを構築したい考えだ

 実証実験に参加する企業は、ブランド・小売店側が良品計画、ファミリーマート、センプレデザイン、アスプルンド、インサイト・プラスの5社で、アプリケーション側がリビングスタイル、medibaの2社の計7社。

 実証実験は2つあり、まず1つは良品計画が行うもので、medibaが開発するスマートフォン用キャンペーンサイトにアクセスして最寄りのファミリーマート店舗を検索したときにクーポンIDを表示し、それをファミマ店舗の「Famiポート」端末に入力すると無印良品7種が10%引きで購入できるクーポン券と引き換えられる。東京都ほか関東甲信8県のファミリーマート全店で10月18日から24日まで実施する。

Photo 良品計画の実証実験,良品計画の実証実験内容。10月18日から24日まで実施する

 もう1つはリビングスタイルが実施するもので、Android端末向けに家具の商品カタログ・AR シミュレータ機能を搭載した専用アプリを利用し、対象家具ブランド店舗で購入すると、ポイントの付与や割引が受けられる。年度内にはインサイト・プラスが提供するショッピングSNS「Shopping+」で対象ブランドのインテリア製品を検索可能にする予定。実施店舗は対象ブランド(当初はSEMPRE、TIMELESSCOMFORT、212KITCHEN。期間内に順次追加予定)全店舗で、期間は10月31日から来年5月31日まで。

Photo リビングスタイルの実証実験。対象ブランドは当初3つだが順次追加予定

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