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» 2009年11月09日 12時30分 UPDATE

最強フレームワーカーへの道:残り物には福がある――あなたも見つけられる「空席ビジネス」

最近話題になっている「試食会.jp」「一休.com」のように、機会損失をお金に換えるビジネスというのは、不況下でウケるだけでなく本質的に「エコ」でもあると思う。捨てるものを拾ってビジネスにする――。残り物には「本当に」福があるのだ。

[永田豊志,Business Media 誠]
st_nokorimono01.jpg 高級店の空席を通常料金の5〜8割引で提供する「試食会.jp」。利用者の満足度は非常に高く、なおかつ店の空席はほとんど予約で埋まるという理想的なWin-Winモデルになっている

 最近話題になっていた「試食会.jp」を利用してみた。高級店の空席を通常料金の5〜8割引で提供するサービスである。実際に、登録して使ってみたが、確かに6割引の料金で高級鉄板焼き店のディナーを楽しむことができた。客にとっては、ものすごいコストパフォーマンスである。

 このビジネスモデルは、空席を赤字が出ない程度の価格で提供し、さらにドリンクなどで利益を得るというもの。一般的に飲食店の原材料費は3割以下に設定されているだろうから、本当に「ギリギリ」であることには間違いない。サービスを提供するリゾルブは定額9800円×1人あたり500円の仲介手数料をもらう仕組みだ。

 空席をマネタイズすると聞いて「一休.com」を思い出す人もいるだろう。一休.comも高級旅館やホテルの空室(在庫)を3〜6割引で提供し、宿泊施設からマージンをもらうビジネスモデルだ。当初、空室だらけの新宿のホテルを見て、社長が思いついたという。以来、うなぎのぼりに売り上げ、利益ともに伸びている。

 この2つのビジネスモデルに共通しているのは「空室」「空席」という機会損失をお金に換えたところだ。従業員の人件費や設備費は一定だし、材料もすでに大量購入している状況においては、こうしたサービスを利用して無駄をなくすことで、本来生じていた損失を回避することができる。つまり、利益に直結するということだ。

 景気のいい時期では、どうしても集客効果や派手なプロモーションに目が行きがちだ。しかし現在のような不況下では、少しでも無駄をなくし、現在のリソースを有効活用して利益を生み出す工夫がウケるのだろう。

 かくいう私の会社も業務としては表向きはWebマーケティング支援会社ということになるのだが、もう少し詳細に説明すると「サイトの離脱を防止して、機会損失となっている途中離脱ユーザーを最後(問い合わせや商品購入)までひっぱり上げる」というサービスを行っている。広告やPRで来訪者を増やすのではなく、今ある来訪者のうち、買わなかった人に買ってもらうようにするビジネスである。これは業種こそ異なるが、試食会.jpや一休.comのように機会損失をお金に換えるビジネスと近い。実際、昨年来の景気後退期にあっても、利用企業は増え続けている、

 多くのWebサイトでは大金を使って集客しても60〜90%は途中で離脱してしまう。予算が厳しい不況下では、さらに広告出稿で集客を増やすよりも離脱を低減したほうが効果は高い。うちの会社では5〜15%程度のカイゼン効果が出ているが、これと同等の効果を広告で補おうとすると多大な投資が必要だ。

 こうした機会損失をお金に換えるビジネスというのは、不況下でウケるだけでなく本質的に「エコ」でもあると思う。

 エコといえば、3Rがよく知られている。これはテレビCMでもやっていたので、知っている人も多いと思うが「リデュース(ごみ自体を減らす)」「リユース(捨てずに何度も使う)」「リサイクル(ごみを資源として再利用)」の3つのRを示すものだ。

 3Rはもちろんどれも大事なことであるが、一番、地球環境に良いのは「リデュース」だ。つまり、ごみの量自体を減らすということだ。実際、リサイクルなどにはばく大なコストがかかる上、環境負担も大きい。環境のことを真剣に考えるなら、無駄なものを買わずに、使うだけ使って、なるべくごみを出さない姿勢が一番大事だ。

 前述の試食会.jpや一休.comも、放っておけば食材は腐り、捨てるしかなくなる。従業員も客が少なければヤル気がわいてこないし、経費ばかりが出ていく。こんなもったいないことはない。

 Webサイトも同様だ。放っていれば利用者はどんどん離脱していく。さすがにリアルビジネスではないので、ごみは出ないが、顧客企業が離脱カイゼンによって在庫の廃棄などが減れば、回り回って無駄なゴミを減らすことになるのではないだろうか。

 捨てるものを拾ってビジネスにする――。まさに残り物には「本当に」福があるということ。ぜひ、読者のみなさんも周囲を見回して、捨てられるものを拾うビジネスアイデアを見つけてみてほしい。

著者紹介 永田豊志(ながた・とよし)

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 知的生産研究家、新規事業プロデューサー。ショーケース・ティービー取締役COO。

 リクルートで新規事業開発を担当し、グループ会社のメディアファクトリーでは漫画やアニメ関連のコンテンツビジネスを立ち上げる。その後、デジタル業界に興味を持ち、デスクトップパブリッシングやコンピュータグラフィックスの専門誌創刊や、CGキャラクターの版権管理ビジネスなどを構築。2005年より企業のeマーケティング改善事業に特化した新会社、ショーケース・ティービーを共同設立。現在は、取締役最高執行責任者として新しいWebサービスの開発や経営に携わっている。

 近著に『知的生産力が劇的に高まる最強フレームワーク100』『革新的なアイデアがザクザク生まれる発想フレームワーク55』(いずれもソフトバンククリエイティブ刊)がある。

連絡先: nagata@showcase-tv.com

Webサイト: www.showcase-tv.com


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