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4K/HDRに有機EL、そして「Playstation VR」――ソニーの戦略を幹部の発言から読み解くCES 2016(3/3 ページ)

» 2016年01月12日 06時00分 公開
[山本敦ITmedia]
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高画質ディスプレイとしてのVRの新しい体験創造には「チャレンジしたい」

 今回のCESでも人気を集めたVRヘッドマウントディスプレイ「Playstation VR」について、このタイミングで価格や発売日が明らかになるのではという期待もあったが、詳細に関するアナウンスは持ち越しとされ、会場には実機の展示だけが設けられた。

CESでも脚光を浴びた「PS VR」。発売日や価格の正式アナウンスはなかった

 ゲーミングデバイスとしてだけでなく、映画など360度映像コンテンツを高画質に楽しむための新しいディスプレイ機器として、ソニーがVRヘッドマウントディスプレイの魅力を訴求していくことは今後有り得るのだろうか。高木氏は過程には色んなハードルがあるとしながらも、新しいエンターテインメント空間を提供するという観点からVRの可能性を広げていくことに対しては、「むしろぜひチャレンジしてみたい」と前向きだ。

 また2012年のCESで発表した「Crystal LED Display」についても、現在も開発が続行していることをアピールしながら、「部屋全体に敷き詰めてサラウンド・ディスプレイのように楽しむというコンセプトもある。必要な形で必要な場所に投入できるよう商売として継続的に取り組んでいる」とした。もはや忘れられた存在となっていた「Crystal LED Display」をソニーがまだ捨てていないことは、意外であると同時に今後の展開がとても楽しみだ。

2012年のCESで展示された55V型「Crystal LED Display」。小型化したLED、600万個をパネル上に敷き詰め、ディスプレイとした自発光パネルだ

Xperia関連の大きな発表は2月のMWC2016か?

 今回のCESではスマートフォンの「Xperia」に関する大きなイノベーションは発表されなかった。もっとも、昨年秋のタイミングでフラグシップモデルの「Xperia Z5」シリーズを発表し、来月にはスペイン・バルセロナで開催される「Mobile World Congress」(MWC)への出展も控える中、「各カテゴリーの新製品や技術は、最も適切なタイミングで効果的にアピールしたい」と平井氏が示す戦略に沿って、CESでの発表が見送られたのであれば、これは理にかなった展開であるといえる。

 「Xperiaは日本国内や欧州市場を高く評価いただいている。今後もコモディティ化の波に飲み込まれないよう、ソニーらしい高付加価値のハイエンドモデルを開発・提供していきたい」と平井氏はコメントしている。もしかすると2月のMWCのタイミングに、Xperiaに関連する何か大きな発表があるかもしれない。

IoT・新規事業に関連する取り組みも芽吹き始めている

 今年のCESでは「IoT」(Internet of Things)(モノのインターネット)」が、これからのエレクトロニクスが発展していく方向性として明確に打ち出されたように思う。インテルやクアルコムも次世代の製品とサービスをIoTにもフォーカスしながら伸ばしていく方針を打ち出した。国内メーカーでも、パナソニックがスマートホームやカーエレクトロニクスまわりで、IoTに関連するいくつかの重要な進展をCESで発表している。

 これに対して、ソニーは今回のCESで目立ったIoT、またはウェアラブルに関連する新しい展開は示さなかった。平井氏は「ユーザーが感動できる商品を生み出せる可能性の大きなカテゴリー」としてIoTを位置付けけているようだ。今後も各事業分野で積極的に取り込んでいくことの重要性についても述べている。「ソニーのIoTへの取り組みは実際にもうスタートしている。ただ、まずは最終商品をいくつも完成させるというより、イメージセンサーなどのデバイスを他社に供給する方向で、コラボレーションにも力を入れながら関わっていきたい。実際に多くの引き合いもいただいている」と平井氏は答える。

SAPのプロジェクトによって誕生した「wena wrist」

 ソニーの社内で推進する「SAP」(Seed Acceleration Program:ソニー社内での新規事業創出プロジェクト)の取り組みから、IoTの種が実を結ぶケースも見られてきた。社内に活動の認知が広がり、社員も積極的に参加していることを平井氏はアピールしながら、「いま良い段階まで仕上がりつつある、いくつかのプロジェクトをあらためて公開できる機会もあるだろう」とコメントしている

今後もソニーはエレクトロニクスの革新に全力投球していく

 今年のCESでは、ソニーの展示が新商品のインパクトや数という観点からは物足りなく感じるという声を、現地で取材しながら聞く機会が多かった。このような評価に対して平井氏は「ソニーはエレクトロニクスに関連する広範な商品カテゴリーをカバーするブランドなので、それぞれのカテゴリーで最も効果的にアピールできる機会にしっかりと合わせて発表したい。あるいはその姿勢が、今年のソニーはやや控えめであると捉えられてしまったかもしれないが、一方では大いに話題をさらった「BMD」のようにカッティングエッジな技術を披露できたことで、ソニーがコンシューマー・エレクトロニクスにおけるイノベーションに本気度を十分に示すことができた」とし、今回のCESでは狙い通りの出展ができたと胸を張った。

ソニーブースのエントランス

 これらのソニーの種まきの成果が、具体的な商品の形を成して実を結ぶのは、どうやら今年も秋にベルリンで開催されるエレクトロニクスショー「IFA2016」のタイミング前後になりそうだ。筆者としては、新商品はそれなりに多かったものの、やはり内容的には“小粒”に感じられたオーディオの分野でも、ちょうど秋ごろのタイミングで“ウォークマン”の次世代フラグシップモデルや音楽配信サービスを取り込んだユニークな製品が登場することを期待している。もし「BMD」による4K/HDR対応のフラグシップのブラビアとともに、秋が1つのピークになるとすれば、IFAではソニーの新製品ラッシュがやってくるかもしれない。

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