携帯“デザイン”の役割(1/2 ページ)

» 2004年08月18日 22時37分 公開
[斎藤健二,ITmedia]

 近年、携帯電話の“デザイン”が重要になっていることは間違いない。携帯を選ぶとき、機能や価格はもちろんだが、「デザインを重視する」という声は年々大きくなっている(2003年8月5日の記事参照7月27日の記事参照)

 キャリアもデザイン重視を公言するようになってきた。「INFOBAR」で名を馳せた「au design project」を筆頭に(2003年10月6日の記事参照)、デザインへのこだわりを強くうたったドコモの900iシリーズ、そしてボーダフォンも「KOTO」を投入しデザイン重視の姿勢を見せている(4月22日の記事参照)

 有名デザイナーを起用し、デザインを主軸に打ち出す携帯がある一方で、機能だけでなくデザインにも優れた携帯電話も増えてきた。中でも、独特の魅力を持つのがカシオ計算機製の端末だ。

 同社端末のデザインについて話を聞く中で、これまでとはデザインの担う役割が異なってきていることを実感できた。キーワードは、「マスを狙わない」「携帯自体が目立ってはいけない」だ。

たくさん売れる──より、どうしても欲しい人を狙う

 「たくさん売れるというよりは、“どうしても欲しい”という人を狙う」

 カシオの携帯電話デザインに携わるデザインセンター第4デザイン室の井戸透記室長が、A5406CAのコンセプトとしてまず話したのが、この言葉だ。

 ここには、実は各端末メーカーの考え方が色濃く反映されているのではないか。

 ほかの家電製品やIT製品と違い、携帯のヒット商品は100万台を超えるのもまれではない。そんな商品作りの中では、とがったデザインではなく100万人以上に受けいられるデザインが求められてきたのも事実だ。さまざまなメーカーから「数多く売るためには、とがったデザインでは無理」だと聞かされ続けてきた。900iシリーズ発表時、ドコモは「200万人、300万人に使ってもらえる携帯のデザインは、単に奇抜なデザインではなく、微妙なバランスが重要」と話している(2003年12月22日の記事参照)

 しかしその結果、多くの端末が似たようなデザインになってしまった。

 「多くのメーカーは、たくさんの人に買ってもらいたいので、全ユーザーの8割くらいを狙う。結果、どのメーカーも同じようなものを作ってしまう」(井戸氏)

 カシオがA5406CAで狙ったのは、マスではない。「もう少し、主義主張をはっきりしたものを投入することで、思った以上の支持が得られるのではないか」(井戸氏)。

 日本の携帯電話販売台数は、月間約400万台(8月18日の記事参照)。年間で4800万台程度だ。1%のユーザーに支持されても50万台近くの台数となる。井戸氏は「10%を狙うデザインでも、携帯電話は成り立つ」と言う。

 昨今、“多くのユーザーに受け入れられる”デザインではなく、“デザインで勝負”する端末が増えてきた。そうしたメーカーに共通するのは、「欲しい人にだけ買ってもらえればいい」という割り切りだ。

 こんな割り切った端末の場合、「一部には熱狂的にウケたが、台数はでなかった」ということが多かったのだが、昨今は状況が変わりつつある。INFOBARをはじめpreminiなどがかなりの台数を販売するなか、ユーザーのセグメント構造も変わってきている。A5406CAも、ターゲットとしたユーザー数以上の販売実績を上げつつある。

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