各キャリアの夏モデルで目立ったのが、家電ブランドの名を冠した携帯が増えた点。AQUOS、ウォークマン、EXILIM、BRAVIAなど、その数は増える一方だ。携帯電話は今後、さらなるソフトウェアの共通化が進み、“デバイスとデザインで勝負”する時代になるのも時間の問題といわれている。
こうした流れの中、“非家電系”端末メーカーはどんな方法で戦うのか──。最新モデル「N904i」を紹介するイベントで、NECの開発陣が今後の端末戦略を説明した。
NECの最新モデルN904iは、著名なデザイナーとして知られるステファノ・ジョバンノーニ氏がデザインを手がけた端末。イタリアで開催されたミラノサローネで初披露され、大きな注目を集めた(4月18日の記事参照)。
NECのモバイルターミナル事業部で事業部長を務める小島立氏は、「イタリアのスタイリッシュなデザインとNEC携帯の機能性を融合させ、ユーザーのライフスタイルをより豊かに快適にしたい」と、この端末に込めた思いを説明。この“機能とデザインの融合”が、NECのこれからの端末戦略で重要なポイントだ。
「「N903i」で操作感を向上させ、高精細な液晶(VGA)を採用。「N703iμ」は折りたたみ型のFOMAで世界最薄。NECの携帯が、少し変わってきたことを実感いただけているのではないか」(小島氏)。その変わり始めた“N”携帯の立て役者ともいえるのが、2006年7月に設立されたクリエイティブスタジオと、それを率いるチーフクリエイティブディレクターの佐藤敏明氏だ。
クリエイティブスタジオは、NECの技術とデザインの橋渡し役だと小島氏。端末デザインにとどまらず、携帯の企画開発プロセスをいかにクリエイティブな形にするかの検討から、開発後のプロモーションまで一貫してかかわっている。端末を作る上では、端末のカラーや質感、機能性、商品のブランディング、パッケージデザイン、ユーザーへのプロモーションまで、トータルでデザインし、関わるスタッフがそれを共有することが重要だという考えだ。
NECとしては、携帯の急激な進化に遅れることなく、ユーザーに驚きと感動を与える端末を開発したいと考えているものの、最近は“そこが足りない”というユーザーの声も聞くと小島氏。クリエイティブスタジオの設立は、904iやそれ以降の携帯で、こうしたイメージを払拭するのが狙いだ。
クリエイティブスタジオのチーフクリエイティブディレクターを務める佐藤氏は、NEC携帯で定評がある「人を中心としたデザイン」や「使いやすいユーザーインタフェース」を進化させながら、それをNECが長い歴史の中で作ってきた新しい技術とつなげることで、“時代の先を行く”機能性や提案力を強化したいと話す。
そこで重要視するのが“感情面への訴求”だ。「作る側が自信を持って感性を磨き、携帯の中に“感じる”“感じさせる”部分をつくる。それを“デザイン”という機能で上手に包み込んでいきたい。デザイナーだけではなく、商品企画から技術まで、NEC携帯を作るあらゆる人たちが、その人なりにこうした感覚を持って商品を作ることを目指している」(佐藤氏)。ここには、携帯をメカやデバイスとしてとらえるのではなく、生活の中にとけ込む道具として、どのような製品に仕上げるかを意識してほしいという思いがある。
“N”の携帯デザインについては、佐藤可士和氏がデザインを手がけた「N702iD」の成功で、NEC社内でもデザインの重要度が再認識され、続いてN703iμで仕掛けた新しいテクノロジーとデザインがユーザーから好評を博すなど、追い風ムードだという。そして、満を持して登場したのがN904iというわけだ。
「新しい携帯の姿を考えて、さまざまなコンセプトでチャレンジしている。新しいコンセプトや新たなマーケット開拓、社内にある要素技術をどのように提案するか──。こうしたところで感情に訴える新しいコミュニケーションや、NECが生み出した折りたたみ携帯のさらなる進化など、時代の流れを先取りするデザインを開発している。この流れの中で、新しいモバイルの時代を作り込んでいきたい」(佐藤氏)。
“Nケータイ”の復権を目指すNECでは、デザイン戦略を軸に携帯事業を軌道に乗せ、ドコモに続いてソフトバンクのNEC端末についてもブランド力の強化を図る考え。そして将来的には「au向けの端末を開発することも検討したい」(小島氏)という。
また携帯の世界で家電の名を冠したブランドケータイが台頭していることもNECとして認識しており、デザイン以外にも“NECならこれ”と認知してもらえるキーワードを作ることが課題だと小島氏。「社内で一時期、“LaVieケータイ”という声も挙がっていたが、それがキーワードになるとは思っていない。ブランド戦略の課題として取り組んでいるが、まだ詳細をいえる段階ではない」(小島氏)
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