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» 2007年09月18日 21時20分 UPDATE

韓国携帯事情:“019”か“010”か――韓国Rev.Aサービスを巡る電話番号論争

韓LGTのEV-DO Rev.Aサービスがスタートした。しかし、電話番号の頭に付けられる識別番号について、キャリア固有の“019”か全社共通の“010”になるかで論争が持ち上がっている。

[佐々木朋美,ITmedia]
photo LG Telecomの店頭で、テレビ電話機能を試すユーザー。画面が横回転するLG電子製のLG-LH2000(左)、スライド型のSamsung電子製SPH-W3150(右)はどちらも、200万画素カメラや音楽プレーヤーを搭載し、地上波DMBの受信も可能

 韓国では9月11日から、LG Telecom(以下、LGT)がCDMA2000 1x EV-DO Rev.A(EV-DO Rev.A)の商用サービスを開始した。EV-DO Rev.Aは、下り最大3.1Mbps/上り最大1.8Mbpsの高速通信が可能な通信規格で、パケット通信時の遅延が少ないほか、アプリケーション別に品質(QoS)制御も行える。

 2006年、2GHz帯のIMT2000事業(CDMA2000 1x EV-DV)許可を取り消されたLGTは(2006年8月の記事参照)、1.8GHz帯を利用する既存ネットワークを使ってEV-DO Rev.Aサービスを開始すると宣言していた。その開始が待たれていたが、一般的に予想されていた時期よりは早いスタートとなった。しかしそこには問題も浮上している。

 LGTのEV-DO Rev.Aサービスは、Samsung電子とLG電子による2機種の対応端末でスタートした。今のところ、EV-DO Rev.Aの速度を生かす専用サービスは発表されていない。料金についても、テレビ電話用に10秒で30ウォン(約3.6円)という新料金が設定されただけで、そのほかに変更はない。LGTは、EV-DO Rev.A専用のサービスや料金プランについては「まだ準備中」としている。

 そのため、現状でEV-DO Rev.Aを利用する場合は、既存の料金プランに加入し、テレビ電話以外は既存のサービスやコンテンツを利用するということになる。当面の対応エリアは、ソウルを始めとした全国32の主要都市で展開。その後、84都市に拡大して全国サービスを目指す。

情報通信部とLGTの葛藤

 このLGTのEV-DO Rev.Aサービスには、契約者に割り当てられる電話番号について、韓国情報通信部とLGTの間で意見の食い違いがあり、問題化している。

 というのも情報通信部が“EV-DO Rev.Aの利用者は識別番号を現行の「019」番ではなく「010」番にすべき”という方針を明らかにしたからだ。LGTはユーザーの利便性が損なわれるとして、番号の変更には反対している。ちなみに、情報通信部はあくまで方針を発表しただけで、現在EV-DO Rev.Aに加入した人は、これまでどおり“019”で始まる番号を付与されている。

 情報通信部がLGTに“EV-DO Rev.Aの識別番号を010へ”、と述べたのは「中長期的に見た場合、LGTのEV-DO Rev.Aサービスも010の『番号統合政策』に従うべき」(情報通信部)との考えからだ。韓国では2004年から、キャリアごとに異なっていた識別番号を010に統一する政策が進められている。

 識別番号を010に統合した理由は、識別番号「011」を割り当てられていたSK Telecom(以下、SKT)が、その強力なブランド“Speed011”人気を博し市場を独占したからだ。そのためどのキャリアも識別番号を010へ統一し、識別番号とブランドを分離して市場の均衡を保とうとした。また、新規事業者の参入障壁を下げるという目的もあった。

 だが、この方針は厳密には法にそぐわない面も持つ。韓国では、「情報通信事業法」に基づく「電気通信番号管理細則」において、「2GHz帯を利用するIMT2000の事業者は、識別番号を“010”にすること」と決められている。しかしこの細則には「セルラーおよびPCS事業者のEV-DOサービスでは、キャリア特有の電話番号を利用できる」という旨も書かれている。

 SKTやKTFが、それぞれ「JUNE」「fimm」と名づけてサービスしているCDMA2000 1x EV-DOも、“011”や“016”などの固有の識別番号を使用している。この規則に従えば、EV-DO Rev.AをサービスするLGTも、“019”のままでサービスを提供してもかまわないことになる。

 そのためLGTは、同社のEV-DO Rev.Aサービスに“010”を割り当てるなら、「法律を“3Gサービスでは010にする”などに変更する必要がある」と主張した。LGTの言うように条文を変更するか、あるいは新しく条項を追加するか、いずれにしても法律の内容を変える必要が生じる。

 一方でLGTは、010統一政策に条件付きで賛成する立場も見せている。その条件とは、固有の識別番号が付与されている他社(SKTやKTF)のEV-DOサービスについても、“010”へ統一するならば従うというものだ。

 これに対して情報通信部は、法律を変える姿勢を見せている。法律が変わればLGTのEV-DO Rev.A加入者は019を利用するユーザーと、010を利用するユーザーの2つに分かれるだろう。LGTとユーザーの立場からすれば、番号を010で始まるものに変えるのは不便だし、固有の019番号にこだわりたい場合もある。しかし情報通信部は主張を曲げる気配がなく、両者の対立は深まるばかりだ。

 韓国は、インターネットとその住民である“ネティズン”の影響力が強い国だ。LGTは先週から自社のWebサイトで、「EV-DO Rev.A 010統合番号設問調査」という調査を開始した。ここでは対策についての反対/賛成が投票され、支持する理由なども投稿されている。この調査で反対が大きくなれば、LGTには大きな弾みとなるだろう。

 情報通信部による法改正についての議論は、これから本格化する見通しだ。電話番号というユーザーにとって身近な話題だけに、両者の対立には高い注目が集まっている。

佐々木朋美

 プログラマーを経た後、雑誌、ネットなどでITを中心に執筆するライターに転身。現在、韓国はソウルにて活動中で、韓国に関する記事も多々。IT以外にも経済や女性誌関連記事も執筆するほか翻訳も行っている。


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