“恵体”電話化するスマホ 2014年はコンパクトモデルに期待ITmediaスタッフが選ぶ、2013年の“注目端末&トピック”(編集部平賀編)

» 2014年01月07日 13時58分 公開
[平賀洋一,ITmedia]

 2013年に最も注目したトピックは、やはりNTTドコモの「iPhone 5s」「iPhone 5c」発売という出来事だった。そして、最も印象深かったスマートフォンもやっぱりiPhone 5s/5cの2機種だった。

photophoto 「iPhone 5s」(写真=左)と「iPhone 5c」(写真=右)

 3G対応のiPhoneが発表されて以降、日本のドコモがいつそれを販売するかは常に関心の的だったが、2013年はそれが現実のものになった。しかも同時に2機種も。iPhoneのバリエーション展開も時代の変化を感じさせることだが、同じ仕様の端末が国内3キャリアから同時に発売されたのは、業界的に歴史的な出来事だと思う。これには各社の通信規格がLTEで統一されたのも深く関係している。

 常に過渡期なモバイル業界・ガジェット業界において、iPhoneの存在感はいまだ衰えず日々増している。ドコモのiPhone発売がそれを後押しするのは間違いなく、是非はともかく、日本におけるキャリアとメーカーの関係性は2013年で決定的に変わったと言えるだろう。そしてさらに、SIMロックフリー版iPhone 5s/5cの直販も始まった。これもAppleなりの“メッセージ”なのだろう。折しも、いわいる「格安SIM」も話題になっている。PCとブロードバンド回線がそうであるように、近い将来、端末と回線を自由に組み合わせるのが当たり前になっているのかもしれない。

iPhone 5s/5cの良さはやはりそのサイズ感

 そのiPhone 5s/5cを手にして感じたことは、相変わらずその絶妙なサイズ感と使い心地の良さ。特にiPhone 5cはどことなくiPhone 3G/3GSをほうふつとさせる丸みがあるフォルムが印象的だった。片手操作にこだわるわけではないが、やはりしっかりと保持できるサイズと形状なことはスマホ選びのポイントになる。最新のiOS 7については従来バージョンからの変更点が多く、慣れが必要な印象。フラットデザインは見た目がシンプルで使いやすいと思うが、ちょっと余計かなと思うエフェクトもあり、長く使う上でどこまでなじむか気になるところだ。

photophoto iPhone 5s(写真=左)とiPhone 5c(写真=右)を手にしたところ

 一方のAndroidスマートフォン陣営では、ディスプレイの大画面化にともなうボディの肥大化が気になった。大きくなった分、各機種とも狭額縁化などでできるだけ持ちやすくしているが、iPhoneと比べると相対的に及ばない機種が多い。確かに大きなディスプレイは快適だが、5インチ以上になるとまさに手に余る。手のひらの大画面で映像コンテンツを楽しむのも悪くはないが、それもいっときのこと。持ちやすさや携行性を犠牲にしてまで訴求するポイントなのか、疑問が残る。

 また日本メーカーのスマホでは、片手操作しやすいようにAndroidをかなりカスタマイズするケースも増えた。これも国産モデルらしい工夫や気配りと言えばそうなのだが、OSをカスタマイズしなければワンハンドオペレーションが成立しないアンバランスさの裏返しでもある。

 言い尽くされていることだが、Appleはユーザーインタフェース(UI)にこだわるだけでなく、製品やサービスを一貫して使った時のユーザー体験(UX)それ自体を価値として売り物にしている。それは、販売店に展示されているiPhoneを手にした瞬間から始まっていることを再認識させされた。

隙の無い「Optimus it」、世界最軽量の「DIGNO R」

 もちろんAndroidスマホの中にも、無理なく、心地よく片手操作できると感じた製品もある。その1つがドコモの夏モデルで登場した「Optimus it L-05E」(LGエレクトロニクス製)だ。4.5インチディスプレイを搭載するボディは幅63ミリで、これ以上大きくなると持て余し気味になる。このクラスにはまさにプレミアムコンパクトな「Xperia Z1 f SO-02F」やツートップ戦略でベストセラーになった「Xperia A SO-04E」、幅59ミリとさらにコンパクトな「AQUOS PHONE si SH-07E」(シャープ製)もあるが、キャップレス防水でホームキーがセンサーキー(オンスクリーンキーではない)という隙のなさが、Optimus itの評価をわずかに高くした。

photophoto 「Optimus it L-05E」

 コンパクトさに加えて軽さも考慮すると、もうソフトバンクモバイルの夏モデル「DIGNO R 202K」を挙げずにはいられない。約94グラムという重さは世界最軽量(発表時)であり、スペック面での割り切りはあるものの基礎点が高い。無駄で華美な装飾を排し、機能美を感じさせるデザインも良い。金属やガラスを使ってプレミアム感を演出することを否定するわけではないが、このクラスのスマホでは、ツールとして気兼ねなく使えるデザインや仕上げのほうが似合っていると思う。

photo 「DIGNO R 202K」

不遇? のコンパクトクラス

 2013年の後半に登場したAndroidスマホは、基本的なスペックが底上げされ、パフォーマンスの面でどれを選んでも大きな違いがなくなった。各社のハイエンドモデル同士でも大きな差はなく、特に冬モデルではミドルレンジモデルでもクアッドコアのプロセッサーを搭載。ディスプレイもHDやフルHDが当たり前になった。その上でディスプレイやボディのサイズまで似通ってしまっては、選択肢の幅が広いようで狭まったと感じてしまう。

 発表済みの2013年冬-2014年春モデルのうち、シニア向けや子供向けを除く4インチクラスのAndroidスマホは、ドコモのXperia Z1 fと「Disney Mobile on docomo F-03F」(富士通製)、「AQUOS PHONE EX SH-02F」(シャープ製、未発売)、ソフトバンクモバイルには「AQUOS PHONE Xx mini 303SH」(シャープ製、未発売)がある。KDDI(au)はすべて5インチ以上で、現行モデルで4インチクラスのスマホはiPhone 5s/5cしかない。

 スマホの大画面化はグローバルな潮流であり、6インチクラスのディスプレイを搭載した「ファブレット」も増えてきた。身体的な面や生活様式の違いもあるので、一概には言えないが、日本ではちょうど良いサイズのiPhoneが海外ではかなり小型の部類に入るのだろう。もちろんグローバル向けにも3〜4インチクラスのAndroidモデルはあるが、新興国向けやプリペイド市場向けのエントリーモデルが中心で、ハイスペックモデルがひしめき合う日本市場にはマッチしない製品が多い。

 ディスプレイサイズを大きくする理由について、各メーカーは「ユーザーのニーズだから」と説明している。ユーザーが1度大きなサイズを使ってしまうと、もう元には戻れないということだ。それは自分自身も経験したので理解できるのだが、何事も限度がある。ダウンサイジングしたいユーザーも多いと思うし、なによりラインアップの選択肢として4インチクラスのハイスペックモデル(できればフラッグシップモデル)がもっとあっても良いように思う。2014年はコンパクトモデルの台頭に期待したい。

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