インタビュー
» 2014年02月21日 09時00分 UPDATE

スマホアプリの最前線:「本能的に求められるのは、“俺様”な強い男」――ボルテージ横田社長に聞く、女性向けコンテンツの作り方

1999年の創業以来、女性向けモバイルコンテンツの提供を続けるボルテージ。今なお多くの女性に支持される恋愛ドラマアプリを生み出し続ける秘けつを、代表取締役社長の横田晃洋氏に聞いた。

[村上万純,ITmedia]

 身分違いのラブストーリーを楽しめる「王子様のプロポーズ」や、最近テレビCMでも話題となっている、吉祥寺を舞台にした幼なじみとの恋を描いた「吉祥寺恋色デイズ」など、恋愛ドラマアプリを展開し、多くの女性から支持を集めているボルテージ。

 同社は1999年にiモード向けのモバイルコンテンツ配信を開始したコンテンツプロバイダーの老舗であり、現在はスマートフォン向けに女性向けコンテンツを積極的に投入している。2013年6月期の売上は90億8800万円に達し、女性向けモバイルコンテンツ事業者の雄として最前線を走り続けている。同社の代表取締役社長である横田晃洋氏に、女性の心をつかむコンテンツを作る秘けつを聞いた。

photo ボルテージ代表取締役社長の横田晃洋氏

男性向けコンテンツは激戦区、女性向けに注力

 「アート」&「ビジネス」を理念に掲げ、「恋愛と戦いのドラマ」をテーマにエンターテインメントコンテンツを制作している同社。女性向けコンテンツは1999年の創業時から、ゲームや携帯小説などを提供してきたが、当時はほかのジャンルも手がけていたという。

 一体なぜ、女性向けのモバイルコンテンツを専門に提供する道を選んだのだろうか。

 横田氏は、「ボルテージのポリシーと強み、そして市場環境が合致したこと」を理由に挙げる。男性向けゲームアプリ市場は規模こそ大きいものの、老舗の大手企業と新興企業が群雄割拠する激戦区。フィーチャーフォン時代からモバイル向けの「恋愛ドラマ」を作っていた強みを生かすため、ターゲットを女性に据えたという。

 「以前は、寝る前にちょっと恋愛小説を読んでいた、なんていう人が、代わりにうちのアプリをするようになっている」と横田氏。ゲームというより、あくまでストーリー重視の“ドラマ”を届けることを掲げる同社にとって、ライバルとなるのは、テレビドラマや映画、小説、コミックなどのあらゆるエンターテインメント系コンテンツだ。

 同社が提供するアプリは、「パーソナル」と「ソーシャル」という2タイプがあり、ともにダウンロード型でも配信を行っている。「パーソナル」は、App StoreやGoogle Playのアプリランキングにおいて、「エンターテインメント」のカテゴリーで上位を占め、その存在感を示している。一方、「ソーシャル」は、ミニゲームやアバターの要素が含まれるため、「ゲーム・シミュレーション」カテゴリーで配信している。恋愛ストーリーを楽しむという根本はどちらも一緒で、ゲーム性よりドラマ性をメインに据えている。

photophoto App Storeの「エンターテインメント」カテゴリーの「トップセールス」(2014年2月14日時点)。3位の「今宵、妖しい口づけを」、5位の「吉祥寺恋色デイズ」、6位の「眠らぬ街のシンデレラ」、9位の「誓いのキスは突然に」はボルテージのアプリだ

女性が求めるのは、守ってくれる“俺様”キャラ

 「女性たちが本質的に求めるものは、現実とギャップがあるんです」と横田氏は話す。女性ユーザーに好みの男性やどんな彼氏が欲しいかを聞くと、例外なく「優しい人」という回答が大多数を占めるのだという。しかし、アプリ内で支持を得るキャラクターはいずれも強気でちょっと強引な“俺様”キャラ。

 「物理的に力が強いというのもありますが、社会的地位が高かったり、極端に経済力がある男性に見初められ、選択されるシンデレラストーリーが魅力なんでしょうね」(横田氏)

photo 「恋人は専属SP」の一柳昴

 絆を深めれば優しい部分も見せてくれる“ツンデレ”な面もあるが、あくまでフィクションの中だからこそ受け入れられる存在でもある。逆に、物腰が柔らかかったり、甘え上手な年下キャラは「比較的人気がない」傾向だという。

“恋愛遺伝子”は、狩猟採集時代から変わらない

 なぜ、女性は俺様キャラを求めるのだろうか。「現代社会においても、私たちの“恋愛遺伝子”は狩猟採集時代から変わってないんじゃないかなと。女性は昔から、男性に強くリードされ、守られることを欲しているんだと思います」というのが横田氏の見解だ。女性の社会進出が進み、男性と対等に働く女性も増える昨今でも、その“遺伝子”は今なお残り続けているようだ。

 それを裏付けるように、年代問わず人気のあるアプリは「王子様のプロポーズ」、総理大臣の娘であるヒロインと24時間警護する男性との恋を楽しむ「恋人は専属SP」、オークションの商品として自らが男性たちに買われてしまう「スイートルームで悪戯なキス」など、刺激的で非日常的なスリルを味わうものが多い。「ジェットコースターも、みんな乗る必要がなくても乗るじゃないですか。楽しく生きていくために、刺激やスリルは必要なんだと思います」(横田氏)

photophoto 「王子様のプロポーズ」(写真=左)。テレビCMで話題となった「吉祥寺恋色デイズ」(写真=右)

 アプリ内では複数の男性キャラクターがヒロインに近づき、ちやほやしてくれる。また、不倫をすることだってできる。そうした非日常の感覚を味わうべく、女性たちは恋愛ドラマの世界を求めているのだろう。

女性は恋愛そのものを楽しめる

photo 「基本的な恋愛の形はおおよそ同じ」と横田氏は話す

 また、女性は男性と比べて「恋愛そのものを楽しめる」のが特徴だと横田氏は言う。「男性向けゲームはどちらかと言うと物理的な愛の形を求めています。女性は、一言で言うと胸がキュンとするようなものを求めているんです」(横田氏)

 ボルテージの主なターゲット層は19〜44歳の女性。職業、居住地、生活環境などが全く異なるさまざまな女性たちを満足させるために、多様な種類のシナリオと男性キャラクターを用意している。しかし、シナリオを作る上での「恋愛の形」はどれも基本は同じものだという。

 「いわゆる、三角関係など王道的に受け入れられている要素はいくつかあります。初めて出会って、最初はあまりいい印象がないのだけど、いつの間にか恋に落ちて、付き合ってキスをして……という恋愛の過程には、そこまでバリエーションはないんです」(横田氏)。基礎となる恋愛の作法に、高層ビルのオフィスや学校の部活動などの舞台装置を肉付けしていき、それぞれの世界観を演出している。

 中でも同社が特に重視するのは、「馴れそめから付き合うまでの過程」(横田氏)だという。「キャラクターをすごく好きになって、付き合えたあとにハネムーンを楽しむことなどもできるのですが、やはり馴れそめは男女双方にとって特別な時間。最初の“恋に落ちる”というフェーズを大切にしています」(横田氏)

理性的な女性と情熱的な女性

 既述したように、ボルテージは1人で恋愛ドラマを楽しむ「パーソナル」と、ユーザー同士で競争や協力をするなどのゲーム要素を取り入れた「ソーシャル」という2軸でアプリを提供している。ユーザー数はほぼ半々で、主な年齢層も20代半ば〜後半と大差ないが、「パーソナルを選ぶのは理性的で冷静な女性、ソーシャルは情熱的な女性が選ぶことが多い」(横田氏)という。

photo 「ソーシャル」は基本プレイが無料で、アバターやアイテムに課金する

 パーソナルは単行本や小説を買うように各シナリオをダウンロード購入し、個人で楽しめる一方で、ソーシャルは基本プレイが無料で、アバターの着せ替えなども楽しみながら都度アイテム課金をしていく形式だ。パーソナルで物足りないという人はソーシャルでプレイし、ソーシャルの形が面倒だという人はパーソナルでシンプルに楽しむ。

 「両方のユーザーが根本的に恋愛に求めているものは同じです」と横田氏が説明するように、どちらか片方だけを展開する企業が多い中、選択肢を増やすことでより多くのユーザーを満足させる工夫を行っている。

海外にも根付きつつある “俺様”文化

photo 海外展開も行っている

 ボルテージは、海外向けにも恋愛アプリを提供しており、国内版を英訳したものと、外国人女性の好みに合わせてストーリーとキャラクターデザインに変更を加えたものの2種類を展開している。翻訳版は、米国だけでなくシンガポールやインドネシアなどアジア圏のユーザーにもよくプレイされているとのこと。また米国では、女性の扱いに慣れている“俺様”なキャラの人気が高いという。たとえ文化が異なっても、女性が男性に求めるものは本質的には変わらないのかもしれない。

 「日米で文化の違いがあるので、失礼じゃないアプローチの仕方などは気にしています。例えば、初対面の女性を無視する男性を、米国女性はどう思うのか……。日本で受け入れられていることでも、米国だと分からないことがあります」(横田氏)

 ただ、日本語・英語圏以外は、アプリ市場そのものが小さいため、今後の海外展開は「模索中」(横田氏)とのこと。恋愛ドラマアプリを機に、“俺様”や“ツンデレ”などの日本独特の文化が海外の女性たちにも広がっていくかもしれない。


 女性たちが恋愛ドラマを楽しむためのデバイスとして、日に日に存在感を増していくスマートフォン。隙間時間でも遊びやすいようにシナリオを細かく区切るなどの工夫はなされているが、女性が本質的に強い男性に引かれるのはいつの時代も変わらないということだった。普遍的に女性が求めるものに加えて時代のトレンドを織り込む――こうして「恋愛と戦いのドラマ」はこれからも生まれていく。

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