ソフトバンク、「LTE-A TDD」で下り1Gbpsを達成 3.5GHz対応の試作スマホも披露256QAMで高速化

» 2014年06月16日 23時31分 公開
[平賀洋一,ITmedia]

 ソフトバンクモバイルは6月16日、3.5GHz帯を使ったLTE-Advanced TDD方式による実証試験(トライアル)を報道陣に公開した。

 トライアルの概要は1月24日に公開したものと同様だが、最大1Gbps超の転送レートを達成したほか、3.5GHz帯に対応した試作スマートフォンによる速度測定も行うなど、商用化への準備が着々と進んでいる様子が見て取れた。

photophoto トライアルで使われたマイクロバス(写真=左)。屋根に16本のアンテナを設置している(写真=右)
photophoto 後部に積まれた試験用の端末側基地局(写真=左)。車体のお父さんがLTE-Advancedをアピール(写真=右)
photo トライアルについて説明するソフトバンクモバイルの矢吹氏

 同社は現在、3.4−3.6GHz帯(バンド42)で割り当てられた実験局免許を使い、LTE-Advanced TDDのトライアルを東京の銀座と池袋エリアで行っている。このほか、3.3GHz帯を使ったトライアルもお台場地区で実施中だ。

 銀座エリアでは、約500メートル四方に8カ所のマクロ基地局と1カ所のピコ基地局を設置してエリアを構築。基地局は既存の2.5GHz帯AXGP(Wireless City Plannningが運用中)と1.9GHz PHS(ウィルコム運用中)の基地局と共用しており、バックボーンは2本のダークファイバーを使ってNTT東日本の銀座局にGC接続(加入者交換局同士の相互接続)されている。

photophoto 3.5GHz帯の現状(写真=左)。銀座エリアでの基地局配置(写真=右)

 トライアルで使われている受信側の基地局(端末)は小型の冷蔵庫サイズで、電源やアンテナ、計測機器などとともにマイクロバスに搭載。無線アクセスには3.480から3.560GHzまでの80MHz幅を使い、4組のアンテナで同時通信する4×4MIMOと、20MHzずつを1キャリアに割り当てたキャリアアグリゲーションに加え、変調方式に「256QAM」を導入して高速化を図っている。

 1月に公開された段階では変調方式に「64QAM」が使われており、停車時の最大通信速度は770.161Mbpsだった。今回はより高度な256QAMにすることで、「1日1回は1GHzが超えるようになった」(担当者)という。

photophoto 256QAMの導入で高速化を図った

 ただし、バス(アンテナ)の停車位置や車体の角度、電波がビルに反射して起こす干渉が複雑に関係するため、コンスタントに1GHzが出るようになるまではまだ調整が必要とのこと。デモでは瞬間的に1Gbpsを超えたが、バスのなかでジャンプして車体を小刻みに揺らすなど「現場の知恵」を駆使する場面もあった。

photo 瞬間的にだが下り1Gbpsを突破した

 また基地局の切り替え時(ハンドオーバー)に通信速度を落とさず接続を維持する「CoMP」(Coordinated Multi Point transmission:複数基地局間協調伝送技術)を使って、下り700Mbps台の通信速度をキープしつつ、3つの基地局間を移動するデモも行われた。

photophoto YouTubeにアップされている4K動画もストレスなくストリーミングできる(写真=左)。基地局のハンドオーバーが発生する移動中でも下り700Mbps台を維持していた(写真=右)
photo 3.5GHz帯対応のAndroidスマートフォン。LTE-Advanced TDDではなくLTE通信のみをサポートしている

 最後に、ソフトバンクが今回の実証実験用に開発した世界に10台しかない試作スマートフォンが披露され、LTEでの通信速度を測定することができた(LTE-Advanced TDDではない)。このスマホはあるメーカーのAndroid端末をベースにしたもので、3.5GHz帯の送受信のみをサポートしている。

 弊誌でもおなじみの計測アプリ「RBB TODAY SPEED TEST」を使った計測では、下りの通信速度が約20Mbpsから約67Mbpsという結果になった。LTE-Advanced TDD対応ではないことに加え、上記の実証実験では端末台数が1台であるのに対し、試作スマホでは同時に接続する端末数が増えたこと、アンテナの位置もバスの屋根という見渡しの良い場所から車内に移っていることが影響している。

photophoto 日本語化はされていなかった(写真=左)。「RBB TODAY SPEED TEST」で計測(写真=右)
photo 約20Mbpsから約67Mbpsという結果に

 3.5GHz帯は周波数が高いため速度を出しやすいが、基地局との距離や角度が変わることで通信品質も大きく上下し、手や頭部など人体による減衰率も大きいという。スマホのように手に持って使う端末の場合、持つ位置やアンテナの向き、人体からの距離などで通信速度が今以上に変化するようだ。

 ソフトバンクモバイルは今後も、基地局のパラメータ調整やソフトのバージョンアップなどを繰り返して通信の安定と速度の底上げを目指し、商用サービス開始時のエリア設計や構築に役立てたいとした。

 なお、3.5GHz帯は同社のほか、NTTドコモとKDDI、イー・アクセスの3社も割り当てを希望している。ソフトバンクとイー・アクセスには資本関係があるが、「通信事業者としてはまったく別」(担当者)とのことで、今回の実証実験にイー・アクセスは関わっていないという。周波数の割り当ては2014年中に行われる想定で、その場合は各社ともTDD方式による2016年中の商用サービス開始を見込んでいる。

※初出時、試作スマ−トフォンがLTE-Advanced TDD対応と記載いたしましたが、正しくはLTEのみに対応しています

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