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» 2014年12月15日 11時00分 UPDATE

佐野正弘のスマホビジネス文化論:モンスト台頭、本格ゲームの増加――大きな節目を迎えた2014年ゲームアプリ動向

スマホアプリの中でも最も大きな規模のゲームアプリ市場。2014年は新勢力「モンスト」が成長し、絶対王者「パズドラ」の座を脅かすなど、業界の勢力地図が様変わりしている。

[佐野正弘,ITmedia]

 スマートフォンアプリの中でも最も大きな市場規模を誇り、人気と注目を集めているゲームアプリ。「モンスターストライク」の台頭などさまざまざな出来事があった今年のゲームアプリ市場を振り返ると共に、市場にどのような変化が起きているのかを確認してみよう。

“絶対王者”パズドラを抜いたモンストの勢い

 近年急速に人気を高め、スマートフォンアプリだけでなく、ゲーム市場全体に対しても大きな存在感を示すようになったゲームアプリ。2013年までは、各アプリマーケットの売上ランキングで年間を通して1位を獲得し続けてきたガンホー・オンライン・エンターテイメントの「パズル&ドラゴンズ」(以下、パズドラ)を中心として、市場の急成長ぶりが大きな注目を集めてきた。だが今年1年のゲームアプリ動向を改めて振り返ってみると、これまでとは様子が大きく変化していることを実感する。

 今年のゲームアプリ市場における、最も大きな変化といえるのは、やはりミクシィの「モンスターストライク」(モンスト)の台頭と、それに伴ってパズドラが“絶対王者”ではなくなったことではないだろうか。その大きな転機となったのは、ミクシィが今年の2月28日に公募による増資を実施し、その資金を3月より実施したモンストのテレビCM展開に費やしたことにある。

 モンスト自体は2013年10月の配信開始より急速に人気を高め注目されていたものの、パズドラを脅かす存在となるには至っていなかった。だがこの大胆なテレビCM施策によってダウンロード数が急増し、一気に売上ランキングでパズドラに次ぐポジションを獲得した。しかも2014年後半には、徐々にパズドラを抜き、短期間ながらも首位を記録する機会が増加。そして現在では、パズドラから長期間首位を奪うケースが多く見られるなど、ゲームアプリの主役の座を獲得するに至っているのだ。

photo 12月10日時点のApp Storeにおけるトップセールスランキング。モンストがパズドラを抜き、トップの座を獲得していることが分かる

 一方のパズドラも、7月にライトユーザーに向け、パズルをより楽しみやすくするモードを追加した「パズドラW」の配信を開始。CMキャラクターにアイドルグループの「嵐」を起用するなどライトユーザーの獲得に力を注いできたが、急速なモンストの台頭などが影響してか、伸び悩み傾向が見られるようになってきた。実際、ガンホーの売上もここ最近減少傾向にあり、今なお高い人気を誇ってるとはいえ、市場での勢いはかつてほどではなくなりつつあるように感じる。

テレビCMから見えるアプリ間競争の激化

 2014年のゲームアプリ市場はパズドラ一強体制から、パズドラとモンストの二強体制へ移行したといっても過言ではないだろう。だが実は、売上ランキングに起きている変化はそれだけではない。実はモンスト以外にも、1日前後の短い期間であればいくつかのゲームアプリが、売上ランキングでパズドラを抜き、首位を獲得している。こうした事象も、2013年まではほとんど見られなかったものだ。

 その主因はゲーム内イベントによる一時的な課金の増大と考えられるが、ベースとなる一定の売上規模がなければ、売上首位の座を獲得するのは難しいだろう。ゆえに首位を獲得するゲームの増加は、ゲームアプリ間の争いが一層激しくなっていることを意味しており、来年には現在の二強体制から、新旧のゲームを交えた戦国時代に突入していく可能性も考えられる。

photophoto 12月3日に開催された、gloopsの新CM・新作ゲーム発表会より。同社のゲーム「スカイロック」のCMキャラクターにモデル・タレントの本田翼さんを起用するなど、プロモーションに力を入れている

 今年の競争の激しさを象徴しているのが、ゲームアプリのテレビCMの大幅な増加だ。2013年まで、大規模なテレビCMを実施するゲームアプリは一部に限られていたのだが、今年は大手から新興ベンダーまで、非常に多くの企業がゲームのテレビCMを実施している。あくまで筆者が確認した限りだが、最近の各アプリマーケットにおける売上上位50位までを見てみると、その中で過去にテレビCMを実施した実績のあるアプリが占める割合は、5分の4を占める程だ。

 テレビCMは幅広い層に訴えかけられるプロモーション手法だが、同時に非常にコストがかかる。テレビCMの増大は、ゲーム1本当たりのプロモーションに、ベンダー側がかけるコストが大幅に高まっていることを示しており、いかにゲームアプリ間の競争が激しくなっているかが理解できるのではないだろうか。

ゲームの質に変化、コア層がターゲットのタイトルが増加

 そしてこのテレビCMからは、もう1つ、ゲームアプリの大きな変節を見て取ることができる。

 2013年までのゲームアプリのCMは、ゲームの内容を前面に押し出すよりも、日常生活にゲームが溶け込むシーンを表し、“気軽にゲームが遊べる”ことを強調した内容のものが多かった。だが今年、各社が展開しているゲームアプリのCMを見ると、ゲームの内容を強調し、一般層よりもゲームが好きな人に向けてアピールする内容のものが、明らかに増えているのだ。ゲームに登場する女の子を前面に打ち出した「スクールガールズストライカーズ」(スクウェア・エニックス)や、MMORPGをCMでアピールした「剣と魔法のログレス いにしえの女神」(マーベラス)などは、そうした傾向を顕著に示している。

 ゲームが好きな層に向けたアピールを強めているのは、プロモーションだけではない。マーケット上で新たに配信されているゲームアプリの内容を見ていても、明らかに2013年とは異なる傾向を感じるのだ。

 1つは、IP(知的財産)を活用したタイトル、要するに“版権モノ”の増大だ。2014年のアプリマーケットで人気を獲得したゲームを振り返ると、バンダイナムコゲームスやスクウェア・エニックスといった大手のゲームメーカーが、ダウンロード・売上ランキングで高い人気を獲得する傾向が強かったと感じる。その背景には、ネイティブゲームが主流となり開発面での優位性が高まったことももちろんあるだろうが、それよりも既存のゲームやアニメ等で多くのIPを保有しており、IPをゲームにうまく活用することで、ファンを獲得し集客につなげたことが大きい。

photo 「グランブルーファンタジー」に代表される、王道タイプのRPGが人気を高めているのも最近の傾向だ(写真は「東京ゲームショウ2014」のDeNAブースより)

 そしてもう1つは、“手軽に遊べない”ゲームの人気拡大だ。スマートフォンのゲームは従来、パズルゲームやカードバトル等に代表されるように、短時間で場所を選ばずプレイできる、手軽さを重視した内容のものが人気を獲得していた。だが2014年の傾向を見ると、「白猫プロジェクト」(コロプラ)のように途中でプレイを止めにくいアクション要素を含んだゲームや、「グランブルーファンタジー」(Cygames)のように、じっくりプレイすることを前提とした“王道RPG”をうたうゲームが人気を博すなど、気軽さよりもゲーム性を求める傾向が強まってきている。

コア化の進行はプレーヤーの幅を狭める?

 これらの傾向から見えてくるのは、ゲームの供給数が急激に増えたことで、ユーザーがプレイできるゲームの数が飽和に向かっていること。それに伴ってゲームアプリの市場がライトユーザー主体からコアユーザー主体へと移り、より“狭く深い”タイトルが高い売上を獲得しやすくなるという、他のゲームプラットフォームと同じ傾向が見えてきたということだ。

 実際、ライトユーザーを主体に提供してきたベンダーが、コアユーザー向けゲームに進出するケースもいくつか見られる。最も象徴的なのがLINEで、今年も「LINE:ディズニーツムツム」などライト層向けのヒットタイトルも生み出しているが、一方で6月に20本、11月に15本のゲームを終了するなどタイトルを大幅に整理。その上で、本格的なアクションRPG「LINE レヴァナントゲート」の配信を開始するなど、コアユーザー向けタイトルの拡大に力を入れ始めている。

photophoto 10月に開催された「LINE CONFERENCE TOKYO2014」より。LINEはコアゲームユーザー向けタイトルを強化する方針を示しており、第1弾として「LINE レヴァナントゲート」の配信を開始している

 さらに今年のスマートフォン動向を見ると、「iPhone 6 Plus」や「Nexus 6」のように大画面を採用した端末が増えていることから、ゲーム内容も大画面と性能の向上を生かした、よりコンシューマーゲームに近いタイトルが増えていくと見られている。故に今後もゲームアプリのコア化という傾向は一層進行すると考えられるが、一方でその弊害として、ライトユーザーのゲーム離れと、開発コストの一層の高騰によるベンダーの淘汰が急速に加速していく可能性も高い。

 スマートフォンのゲームが、よりコンシューマーゲーム機やパソコンのゲームに近づいていくことを、歓迎する向きがあるのは事実だろう。だがその傾向が強まることは、フィーチャーフォンのソーシャルゲーム以降急拡大した、モバイルでゲームをプレイする層の幅を狭め、結果的に市場縮小へと向かう危険性もはらんでいる。今年はライトからコアへというゲームアプリの分岐点を迎えた大きな一年だったと筆者は感じているが、果たして来年以降、このまま一層のコア化が進んでいくのかどうか。慎重に見極めていきたいところだ。

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