インタビュー
» 2016年07月11日 06時00分 UPDATE

きっかけはお父さんの“思い”――保育園の連絡帳をクラウド化する「kidsly」開発ストーリー (1/2)

保育園と保護者をつなぎ、子どものさまざまな情報を共有できるサービスとして、保育業界で評価を高めつつあるリクルートの「kidsly(キッズリー)」。開発のきっかけは、ある父親の“罪悪感”だった。

[房野麻子,ITmedia]

 待機児童や男性の育児休暇取得率の低さ、保育士の給与の低さなど、現代の日本では子育てに関して多くの問題が指摘されており、参院選の争点の1つになるなど注目度も高い。

 今後、子育てを助けるさまざまなサービスの登場を期待したいが、リクルートマーケティングパートナーズ(RMP)が2016年3月に提供開始した「kidsly(キッズリー)」は、保育園と保護者をつなぎ、子どものさまざまな情報を共有できるサービスとして、多くの保育園、幼稚園に導入され、業界で評価を高めつつある。また、保育士の養成学校として有名な鎌倉女子大学 児童学部 児童学科の小泉裕子教授が研究にkidslyを活用するなど、アカデミックな分野からも注目されている。

 今回は、このkidslyを企画・開発したRMPの森脇潤一氏に、サービスの具体的な内容や現場の反応や開発に至った背景などをうかがった。

kidsly kidslyを開発したリクルートマーケティングパートナーズ 保育支援推進リーダー 森脇潤一氏

 なお、リクルートは「子育てしながら働きやすい世の中を、共に創る」をキーワードに、「はたらく育児」を応援する「iction!」プロジェクトを、産業界、行政・NPOなどと進めている。kidslyはプロジェクトのテーマの1つである「育児と仕事の両立によるストレスを減らす」サービスに位置付けられている。

保育士の負荷を大幅に軽減する「登降園管理」

 kidslyは、保育士と家族がやりとりする“連絡帳”をデジタル・クラウド化し、情報を共有できるようにしたコミュニケーションツールだ。保育士用と家族用に2種類のスマートフォン用アプリがあり、そのアプリを使って出欠確認の「登降園連絡」、保育士から園内の様子が届く「連絡帳」、ケガや病気などのときに保護者に知らせる「個別連絡」、写真を共有できる「写真」などの機能を使うことができる。

 保育士の負担を大幅に軽減して大好評を得ているのが、登降園連絡機能だ。家族から入力された、「登園する」「お休みする」「遅刻する」といった園児の登園状況を、保育士はスマホやタブレットの画面でひと目で確認できる。

kidslykidsly 登降園は、選ぶだけで簡単に入力できる。基本的に入力情報を引き継ぐ仕様なので、変更がなければ入力は不要。最低限の手間で済む(写真=左)。保育士は、登園、欠席、遅刻などの登園状況別に一覧で確認できる(写真=右)

 従来、保育園を休んだり遅刻したりするときには、家族から電話で連絡が入る。毎朝、その応対で人と時間を取られ、情報の共有もホワイトボードや紙、口頭で行われ、やりにくい状況があった。

 「どこの保育園も朝は大量に電話が来ます。そこに保育士が張り付いて対応しなくてはいけないけれど、当然、朝は園児の受け入れがあるので、そこに人が多い方がいい。登降園連絡機能が業務負荷の圧倒的な軽減につながっていると好評です」(森脇氏)

 保護者側も、朝の忙しいときに、つながりにくい電話をかける必要がなく、手軽かつ確実に連絡することができる。

 夕方の園児引き渡しも管理が必要な部分だ。これも従来は、何時に誰がどの園児を迎えに来るかが紙で管理されていたが、kidslyを使うと、どの園児の保護者が迎えに来るかが、デバイスの画面に時系列で一覧表示される。

kidsly お迎え時間表。どの園児は誰が何時に迎えにくるかがひと目で分かる

 「保育園では、乳児は保護者が迎えに来る直前におしめを変えて渡すことが一般的です。kidslyを見れば、17時に引き渡すなら16時半くらいにおしめを変えようという予定が立つので便利です」(森脇氏)

子どもの情報をみんなで共有できる

 一方、保護者側に喜ばれているのが連絡帳機能だ。一般的に保育園では、0〜2歳児は連絡帳を交換日記のように使い、園児の情報を保護者と細かくやりとりしている。kidslyの連絡帳には、体温、検温時間、朝の子どもの機嫌、睡眠時間、便、授乳、投薬、食べたもの、引き渡し、コメントを入力でき、一般の紙の連絡帳でやりとりする情報を網羅している。「手書きより素早く入力できる」点が好評だそうだ。

kidsly 連絡帳の入力項目は、保育園の状況によって取捨選択できる。写真やスタンプも利用できる。画面を横スライドで過去の情報を参照できる

 しかも、紙のノートは1冊しかないが、kidslyであればお母さんだけでなくお父さん、祖父母、園長など複数の関係者と簡単に共有できる(保護者側のkidslyは本人を含め4アカウントまで登録可能)。

 「大切なお子さんの成長の記録は、みんなで見ることでさらに価値が上がると考えています。もちろん、出張中のお父さんも見ることができます。連絡帳は大体夕方に更新されるので、それを楽しみにしているお父さんの話をよく聞きます」(森脇氏)

 紙の連絡帳だと、帰ってから読むことが多いが、kidslyの連絡帳は夕方に更新されるので、保護者は迎えに行く途中にチェックできる。その内容で保護者と保育士のコミュニケーションが活発になるといったメリットもあるという。また、コメントには写真を入れることもでき、保護者、保育士両者にとって、たくさんの情報を知りたいという要望に応えるものとなっている。

新機能の追加も予定

 写真メニューには、保育園側が撮った写真が掲載される。どの保育園でも、掲示板に写真がコメント付きで貼り出されるものだが、このメニューはそれを同じ役割を担っている。保育士たちにとっては、これまで手書きでやっていたことをスマホでするだけだ。この写真に対して、保護者は「いいね!」やスタンプ、コメントで反応できる。これも、アカウント登録している人全員が見ることができる。

kidsly 保育中の写真がアップされ、まとめて確認できる。写真にはいいね!やスタンプで反応できる

 また、急な発熱やケガなどの場合は、個別連絡機能で保護者に連絡が入る。保護者が仕事中ですぐに電話に出られないような状況でも、スマホに通知が届くので確実に伝えることができる。保護者がメッセージを確認するとLINEのように既読マークが付き、履歴も残るので、言った/言わないの食い違いもなくなる。

kidslykidsly 緊急時の個別連絡はkidslyを閉じていても通知が届く。保護者が確認すると既読マークが付くので、確実に伝わったかを確認できる

 また今後は、保育園から送られる連絡事項を一覧できる「掲示板」機能、保育園の行事をカレンダーで確認・管理できる「カレンダー」機能も追加される。保護者側はいつでも連絡事項や行事を確認でき、保育園側は更新が簡単にできるのがメリットだ。

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