ドコモ、2017年には最大512Mbps!?格安SIMも通信環境で選ぶ時代へSIM通

» 2016年10月12日 06時00分 公開
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 NTTドコモは9月13日、同社のネットワークに関する説明会を開催。9月7日に米国で発表されたiPhone 7/7 Plusのネットワーク対応や、同社の今後のネットワーク戦略について、説明をおこないました。

資料 さらなるネットワークの進化

 9月8日にはソフトバンクが、多数のアンテナを用いて基地局の通信容量を向上させる、次世代通信方式「5G」の要素技術の1つ「Massive MIMO」を導入することで、実行速度を向上させるネットワーク施策を打ち出しています。

三木睦丸氏

 これに対してNTTドコモでは、どのような施策をもってiPhone 7/7 Plusに向けたネットワーク強化、さらには今後のネットワーク高速化を実現しようとしているのでしょうか。

 ドコモの三木睦丸氏によると、同社では今年、3つの周波数帯を束ねて高速化するキャリアアグリゲーション(3CC CA)によって下り最大375Mbpsの通信速度を実現。さらに6月には、新しい周波数帯域である3.5GHz帯を用いた、下り最大370Mbpsのサービスを提供開始するなど、同社の高速通信サービス「PREMIUM 4G」の強化を進めてきたとしています。

資料 PREMIUM4G これまでの進化2

 エリアも今年度の第1四半期には全国1741都市のうち、1203都市にまでPREMIUM 4Gのエリアを拡大したほか、そのうち下り最大300Mbpsを超える速度を実現する都市は798にまで上るとのこと。また9月時点では、東名阪の360都市で下り最大337.5Mbpsを超える通信が可能なエリアを展開しているそうで、今後は関東であれば埼玉や千葉などの郊外にまで、そのエリアを広げていくとのことです。

資料 PREMIUM4G これまでの進化4

 またNTTドコモでは、スペック上の速度だけでなく、実効速度を向上させる取り組みも進めているとのこと。山手線や大阪環状線の利用者が多い上位6駅の調査では、平均するといずれも100Mbpsを超える速度を実現しているそうです。

資料 損端末への対応1

 そうしたPREMIUM 4Gの強化策が、iPhone 7/7 Plusでは存分に活かせることを三木氏はアピールしています。その理由は3つあり、1つ目はiPhone 7/7 Plusが3CC CAに対応したことで下り最大375Mbpsの通信速度を実現できること。2つ目に東名阪の広い範囲で下り最大337.5Mbpsの速度で通信を利用できること。そして3つ目は、iPhone 7/7 Plusがバンド21(1.5GHz帯)に対応したことで、全国の広いエリアで高速通信が利用できるようになったことです。

資料 2017年度に向けた進化2

 NTTドコモはLTEのバンド1(2GHz帯)とバンド19(800MHz帯)で広いエリアをカバーし、バンド3(1.7GHz帯)とバンド21で高速通信用に活用しています。しかしながらバンド21は日本でしか使われていない帯域であるため、これまでiPhoneなど海外製スマートフォンを中心に、多くの端末が対応していませんでした。

 加えてNTTドコモのバンド3は東名阪のみに限定されていたことから、東名阪以外の地域に住むiPhoneユーザーは、PREMIUM 4Gによる高速化の恩恵をあまり受けられなかったのです。ですが今回iPhone側がバンド21に対応したことから、iPhone 7/7 Plusであれば東名阪以外の地域のユーザーも、高速化の恩恵を受けられるようになったといえるでしょう。

 三木氏はiPhoneに関連するネットワーク対応だけでなく、今後のネットワークの進化についても説明しています。具体的には2017年3月に、下り最大500Mbpsを超えるサービスを実現するとのことです。

資料 技術解説2 MIMO拡張

 通信速度が500Mbpsを超えるサービスは、2つの異なる方法を用いることで実現するとのこと。1つは、アンテナを活用して高速化する「MIMO」という技術を拡張し、アンテナを2本ずつ同時に用いて通信する「2×2MIMO」から、アンテナをさらに増やして4本ずつ用いて通信する「4×4MIMO」によって、高速化する方法です。

資料 技術解説3 QAM拡張

 4×4MIMOを使えば、基地局と端末との距離が近い時は4つのアンテナで別々の情報を送ることで一層の高速化が可能になるほか、遠い時は4つのアンテナで同じ情報を送ることで、安定した通信を実現できるとのこと。なお、4×4MIMOは3.5GHz帯の基地局に導入される予定で、下り最大512Mbpsの通信速度が実現できるとしています。

 そしてもう1つの方法は、QAM(直交振幅変調)を拡張する方法です。言葉だけを聞くと難しく見えますが、要するに一度に運ぶことのできる情報の量を増やすことで、高速化を実現する訳です。現在の「64QAM」から「256QAM」に拡張することにより、1.33倍の高速化を見込むことができるとのこと。こちらは3CC CA対応の基地局に導入され、バンド1、バンド3、バンド19の組み合わせで、下り最大500Mbpsの通信速度が実現できるとのことです。

 いずれも基地局側の準備は既に整っており、対応する端末が登場し、基地局側のソフトウェアを更新すれば対応できるとのこと。またこうした仕組みの導入には、NTTドコモが導入している、広いエリアをカバーする基地局の中に、通信容量を確保する小規模の基地局を複数設置し、それらを集中制御する「高度化C-RAN」というNTTドコモの技術が、大きく貢献しているそうです。

 下り最大500Mbpsを超えるサービスは来年3月、都市部を中心として、東名阪の70都市から一斉に展開を進めていくとのこと。さらにその後は一層の高速化技術を導入し、5Gの導入前に下り最大1Gbpsの高速通信を実現したいと、三木氏は話しています。

 一見するとドコモユーザーに向けた発表にも見受けられますが、格安SIMを提供するMVNOの多くがドコモのネットワークを借り受けてサービスを提供しています。ドコモがネットワークの整備・進化を行うことで通信速度はもちろんですが、回線自体の強化につながるため今まで以上に快適になる可能性があります。もちろん各事業者が持つ設備の違いや、借りている帯域幅によって通信環境は変動するので、ドコモ系であればどのMVNOでも良いというものではないでしょう。格安SIMをもっと賢く使いたいと考えているのであれば、端末選びはもちろんですが、価格以外の施設整備や通信状況の改善を頻繁に行っている事業者を見つけることが今後一層重要になってくると思います。

(文:佐野正弘)

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