サービスや品質面において、先述の問題を除けばGWiFiは十分に及第点を与えられる出来です。しかし、G3000の「あるもの」が筆者にとってショックでした。それは「SIMカードスロット」です。
G3000はMicro SIMスロットを1つ備えています。GWiFiが全く使い物にならない、あるいは何らかの理由でサービスが終了してしまった場合に「SIMロックフリーのモバイルルーター」として使えると考え、筆者はG3000を購入しました。
しかし、G3000のSIMスロットは実際には使えませんでした。筆者のもくろみは外れてしまったのです。
G3000が「他社のSIMカードを挿して通信もできる」ことは、ITmedia MobileにおけるGWiFi発表時の記事でも触れられていました。
この件について、記事執筆を担当した田中聡氏に確認したところ、発表会において「動作保証はしないものの、端末としてはSIMロックフリーとなっている」という旨の説明があったようです。
G3000のSIMスロットについて、発売日時点のWebサイトには使えない旨が記載されていました。しかし、ショップではこの機種を「SIMロックフリールーター」として紹介しているケースがある上、筆者の記憶が確かなら、発売前の段階では「SIMスロットが動作しない」という情報は公開(明記)されていなかったように思います。
SIMスロットが使えないという観点でもう1つ気になるのは、総務省の「モバイルサービスの提供条件・端末に関する指針」(参考リンク)との整合性です。
現状ではG3000のSIMスロットが利用不可となっているため、ユーザーがデータ通信を利用する手段としては、BroadLineのデータプランを利用する以外の選択肢がありません。特定の通信事業者のSIMカードでのみ通信サービスを利用できる従来型の「SIMロック」とは異なりますが、利用者が通信事業者を自由に選べずGWiFiのクラウドSIMサービスのみ利用できる機種であるという意味で「クラウドSIMロック」ともいうべき縛りがかかっています。
総務省の指針では「特定の通信事業者のSIMカードでのみ動作する」という意味でのSIMロックを禁じており、大手キャリアだけではなくMVNOにもこの基準が適用されます。大手キャリアや(数こそ少ないですが)MVNOのSIMロック付き端末は、この基準に従って一定条件のもとSIMロック解除が可能です。
それに対し、G3000のように「物理SIMスロットを無効化した上で自社のクラウドSIMサービスのみ利用できる」という方式については、現状の総務省の指針に違反しないのかもしれません。しかし、当初はSIMロックフリールーターとしても利用できるという説明を販売元がしていた点や、昨今のSIMロック解除に関するルール整備と各社の対応を鑑みれば、ある意味で「ルールの穴をついた」措置ともいえます。
そう考えると、SIMスロットが無効化されていることはいちユーザとして非常に残念です。
過去の連載で紹介したように、筆者はこれまでに「GlocalMe」や「Skyroam」など様々なセカイルーターを使ってきました。国内法人が初めて手がける一般コンシューマー向けセカイルーターとして、G3000には発売前から大いに期待を寄せていました。一方で、同社としては初めて手がける端末とサービスであることや、当初予定の発売日が「品質改善」を理由に延期されたこともあり、品質やサービスの面である程度問題が発生することも「心づもり」していました。
しかし、SIMスロットの利用可否に関する情報の誤りやシステムトラブルを含めて評価すると、現時点では「安心して使える」サービスとは言いきれない状況です。
「秘めたる力は大きくも、今のところは真価が発揮できていない」のが、現時点でのGWiFi、そして対応端末のG3000です。今後のサービス品質改善に、多いに期待したいところです。
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