「HEIF」「HEVC」っておいしいの? iOS 11で変わった画像・動画形式を知る荻窪圭のiPhoneカメラ講座(2/4 ページ)

» 2017年10月27日 07時00分 公開
[荻窪圭ITmedia]

HEIFとHEVCは「次世代コーデック」

 戯れ言はさておき、HEIFとHEVCの読みや正式名を知っても「何が何だか……」って人も多いはず。次は、その正体について解説する。

 HEIFとHEVCは「MPEG」という集団が開発した新しい画像・動画コーデック(ファイルの圧縮・展開方式)である。いずれもApple独自規格ではないのだ。

 MPEGは、動画や音声に関する標準規格を主に策定している「Moving Picture Expert Group」の略称。日本語にすれば「動画の専門家集団」といったところだ。皆さんも聞いたことがあるだろう「MP3」や「MP4」の「MP」はMPEGのこと。このグループが策定した規格(の一部)なのだ。

 HEVCは、H.264の次世代に相当する動画コーデックで、国際規格上は「H.265」と呼ばれている。H.265は2013年1月に規格として策定され、2014年からハードウェアによるデコード(展開)支援に対応するスマホが登場し始め、2015年にはハードウェアによるエンコード(圧縮)支援ができるスマホも登場している。

 HEIFは、HEVCの静止画版に相当する規格で、2015年に策定された。

新形式は「圧縮効率が良い」 だからこそ対象機種に制限 

 これらの新規格を使うメリットは、ズバリ圧縮率が高いこと、つまりファイルサイズをより小さくできることにある。

 例えば、従来のJPEG規格では、本来は約35MBにもなる約1200万画素(3024×4032ピクセル)の写真が、状況にもよるが2.5MB程度にまで圧縮できる(※)。本来のファイルサイズの10分の1未満にまでできるのだ。常に圧縮せずに保存するとなると、iPhoneのストレージはあっという間に満杯になってしまう。

※1 JPEG規格は圧縮率によってファイルサイズが大きく変わる(もちろん画質も大きく変わる)。「2.5MB程度」という数値は、iPhoneにおける標準的なファイルサイズである

イメージ情報 「metapho」という写真(静止画)の情報を表示してくれるアプリで撮影データを表示。本来は約35MBにもなる写真が、JPEG圧縮によって2.5MBとなっている

 しかし、JPEG規格は1992年に「Joint Photographic Experts Group」が策定したもの。実に25年前の規格を使い続けていることになる。

 25年もあれば、プロセッサの処理能力も上がり、より複雑な計算を瞬時にこなせるようになるはず。要するに、もっと複雑でややこしい数学的な処理をして、画質を落とさずに圧縮率を上げる技術が開発されてもおかしくないのだ。

 JPEG形式よりも高効率な静止画ファイルの圧縮技術は既にいくつか開発されている。HEIFはそんな技術の1つである。先述の2.5MB程度のJPEG画像と同じ画像をHEIF形式で保存すると(※2)、1枚あたり1.4MB程度で収まる。JPEGの半分、とまではいかないけれど、ファイルサイズはグッと減っている。HEIFは偉い!

 ちなみに、HEIF形式で撮影した写真(静止画)は「HEIC」という拡張子で保存される。例えば「IMG_5562.heic」というファイル名になる。

※2 厳密には、同じ被写体・撮影条件で保存形式を変更して撮り直している

HEIF規格で撮影 先ほどの写真を被写体・撮影条件でHEIF形式で撮影すると、ファイルサイズは1.4MBになった。HEICは、HEIF形式の画像ファイルの拡張子である

 ファイルサイズがJPEG形式の6割程度になるということは、「節約できた分だけよりたくさん撮ってもOK」ってことになる。ファイルサイズが小さくなるから「高効率」というわけだ。

 ただ、先の説明からも分かるが、高効率モードでは従来より複雑でややこしい計算をするため、プロセッサにはより高い処理能力が求められる。写真や動画を1つ1つ保存するのに何秒も待たされるなんて、耐えられないでしょう。

 だからこそ、iPhoneならiPhone 7/7 Plus以降、iPadなら2代目以降の「iPad Pro(10.5型モデルと12.9型モデル)」でしか高効率フォーマットを選べないようになっているのだ。

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