連載
» 2017年12月12日 06時00分 公開

鈴木淳也のモバイル決済業界地図:複雑化している国内の「モバイル決済サービス」を総整理する (1/3)

国内外のモバイル決済トレンドを解説する連載がスタート。一言で「モバイル決済」といっても、さまざまなサービスが存在する。第1回では「国内の決済サービス総括」と題して、複雑化している電子マネーや各種決済サービスを整理していく。

[鈴木淳也(Junya Suzuki),ITmedia]

 日本国内では2004年に「おサイフケータイ」が開始されて以降、10年以上にわたってサービスが提供され、「携帯電話を使って決済を行う」という行為が比較的広く認知されている。

 一方で、この「モバイル決済」という仕組みが世界的に認知されたのは意外と最近の話だ。2010年ごろになり、携帯電話メーカー各社からNFC(Near Field Communication)技術に対応した端末が発表されるようになると、欧州や米国でこの技術を利用したモバイル決済サービスが出現するようになった。だがどれも長続きはせず、本格的な普及は2014年10月の米国で開始した「Apple Pay」を待つことになる。

モバイル決済 日本では2016年から導入されている「Apple Pay」

 Apple PayがNFCなどの「非接触技術」を使ったモバイル決済の中心であることは間違いないが、一方で中国の「Alipay(支付宝)」や「WeChat Pay(微信支付)」のQRコード決済のように、わずか3年程度で中国全土に瞬く間に広がったモバイル決済サービスもある。

 日本はといえば、2000年前後に非接触方式の決済サービスが開始され、おサイフケータイ開始から考えても10年以上の歴史があるにもかかわらず、現在なおモバイル決済が広く国民生活に浸透しているかというと疑問に感じる部分がある。

 全国規模で広がらない理由はいくつか考えられるが、1つには現金以外の決済手段が多く存在し、必ずしも全ての小売店で利用できないケースがあるほか、欧米やアジア圏では決済の要となっているクレジットカードやデビットカードが利用できない店舗があり、ユーザー側もまた積極的にこれらカード決済を行っていないという事情がある。

 連載の第1回では、「国内の決済サービス総括」と題して、複雑化している電子マネーや各種決済サービスを整理していく。

日本国内で利用可能な非接触決済サービス

 13.56MHzの近距離無線による暗号化通信技術としては、海外で主流のType-A/B(ISO 14443)のほか、Type-F(FeliCa)が標準技術として存在している。このうち、日本で現在普及しているのはほぼFeliCaベースのものであり、Type-A/Bを使った非接触クレジットカード決済サービス(EMV Contactless)を利用できる場所はほとんどない。

 ただ、2018年前半をめどにローソンやマクドナルドなど大手チェーン各社が対応を表明しているなど、今後利用可能な環境が広まっていくことが予想される。このあたりはあらためてフォローしていきたい。

 下記は、現在国内で利用されている主要なFeliCaベースのサービスだ。スターバックスのポイントカードなどは除外しているが、どれもおサイフケータイ向けのアプリが提供されており、携帯電話やスマートフォンに導入して店舗決済が可能だ。

FeliCa技術ベースのサービス

  • 電子マネー(バリュー型、PiTaPaを除く)
    1. 楽天Edy(楽天Edy)
    2. nanaco(セブンアイ)
    3. WAON(イオン)
    4. 交通系ICカード(JR東日本のSuicaなど)
  • クレジットカード
    1. iD(NTTドコモ+三井住友カード)
    2. QUICPay(JCB)

 電子マネー型のサービスには「残高」という概念があり、カード内に記録した額面以上の決済は行えない。もし残高が減った場合には「チャージ」を介して残高を増やす必要がある。残高が一定額を下回った場合に自動的にチャージを行う「オートチャージ」機能が用意されている場合もあり、この機能を有効化することでチャージ忘れによる残高不足を防ぐことが可能だ。

モバイル決済 チャージした分だけを利用できる電子マネー。画像は「楽天Edy」

 クレジットカード型にはカード内部には残高の概念がなく、決済額がカード発行会社側で記録され、毎月請求される「ポストペイ」方式となっている。そのため、1回あたりの決済限度額以内であり、かつ信用枠を超えない範囲であればチャージの心配なく利用できる。

 一方で、最近ではこのクレジットカード決済の仕組みを使って「プリペイド」「デビット」のようなサービスが提供されることがある。カード内部に残高こそ記録されないものの、使い勝手としては電子マネーのそれに近い。NTTドコモの「dカードプリペイド」やKDDIの「au WALLET」などが典型だが、これらはおサイフケータイまたはApple Payに登録することでiDやQUICPayとして利用が可能になる。その場合、振る舞いとしてはプリペイドやデビットカードとなり、残高の枠を超えた決済は行えず、キャリア決済などを介した都度チャージが必要となる。

モバイル決済 電子マネーのように使える「dカードプリペイド」と「au WALLET」

 このクレジットカード方式で難しいのは、既存のクレジットカード加盟店によっては「オフライン決済方式」を採用しており、リアルタイムでの残高参照が行えないこと。オフラインのメリットは専用回線を引く必要がないなど設備投資が少なくて済む点だが、一方でデビットやプリペイドのような残高を逐次参照する仕組みが利用できない。

 例えばQUICPayでは1回あたりの決済限度額が2万円と低めの設定になっているほか、クレジットカードは信用枠の範囲であれば買い物ができるため、この性質を利用して決済を優先して通してしまうということが可能なためだ。そのため、QUICPayではデビットやプリペイド方式もサポート可能で1回あたりの決済限度額を大幅に引き上げた「QUICPay+」という規格を用意し、これに対応した加盟店にステッカーを配布して活用を促している。

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